(写真提供=SPORTS KOREA)ヤン・ヒョンジョン

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このオフ、FAの資格を取得し、DeNAなど日本の球団も獲得に乗り出していた韓国プロ野球を代表する左腕投手ヤン・ヒョンジョンが、1年契約、契約金7億5000万ウォン(約7500万円)、年俸15億ウォンの計22億5000万ウォンでKIAに残留することが決まった。

金額と1年契約であることはやや意外であったが、もともと今年海外に出ることはないとは思っていた。

投手難が深刻になっている韓国プロ野球

ヤン・ヒョンジョンは今年10勝12敗で、防御率は3.68。この防御率は全体で5位、韓国人投手の中では2位になる。しかも2年前は16勝、去年は15勝と、3年連続で2桁勝利を挙げている。

また先発投手の合格基準である6回以上投げて自責点3以内に抑えるQS(クォリティスタート)は22回で全体のトップ。この3年間、韓国人投手の中では最も多く記録しており、安定感では群を抜いている。

現在韓国のプロ野球は、極端な打高投低の状況にある。

韓国プロ野球は10チームあるが、規定打席に達している打者で、3割打者は40人。日本では、セ・リーグが9人、パ・リーグが6人なので、その多さは半端でない。

その一方で、防御率2点台はニパート(斗山)だけで、3点台も6人しかおらず、そのうち韓国人はヤン・ヒョンジョンを含め3人だけだ。セ・リーグでは2点台が5人、3点台も6人、パ・リーグでは2点台、3点台とも5人ずついる。

近年、チーム数が8チームから10チームに急激に増やしたこともあり、選手層の薄い韓国では、投手難が深刻になっている。

そのため、投手の報酬はどうしても高くなる。このオフのFAで最も注目されたサムスンのチェ・ヒョンウは、4年契約の契約金40億ウォン、年俸15億ウォン、計100億ウォンでKIAに移籍した。チェは今年打率、打点、安打数で1位という、韓国プロ野球を代表する強打者だ。

韓国人選手たちが海外進出に際して懸念すること

一方FAで注目投手の1人であったサムスンのチャ・ウチャンは4年契約、総額95億ウォンでLGに移籍した。

チャ・ウチャンには元の所属のサムスンが4年契約、総額100億ウォンを提示したというから、95億ウォンという数字に疑念が持たれている。

それはともかく、チャ・ウチャンは今年12勝6敗だが、防御率は4.73である。韓国を代表する左腕の1人であることは確かだが、それほど目立った存在ではない。しかし強打者のチェ・ヒョンウとほぼ同じ条件でFA移籍を果たしている。

海外に移籍するとなると、外国での生活に適応するために、意外と経費がかかる。そのため、外国のチームの提示額が、国内のチームの提示額より少し多いくらいでは、割に合わないことがある。

なぜ日本進出を躊躇したのか

しかもヤン・ヒョンジョンの場合、韓国であれば絶対的なエースでも、海外に出ればローテーション入りが保証されているわけではない。したがって、ヤンがKIAに残留することは予想できた。

問題は、なぜ1年契約かということだ。

韓国メディアの報道によれば、再度FA資格を得るのは4年後だが、1年で海外を含めた移籍の自由が保証されているという。

KIAは今年5位で、もう少し打線の援護などがあれば、ヤン・ヒョンジョンはもっと勝ち星を挙げられたという。その点来年はFAで崔炯宇を獲得するなど、戦力は上がっている。KIAで優勝、あるいは、もう少し良い成績を残したうえで、海外進出を考えるということのようだ。

さらに来年はWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)もあるので、海外のスカウトにアピールする機会も増える。いずれにしても、梁の海外進出は来年の成績をみてということになる。

(参考記事:現役メジャーリーガー4名選出も、過去と代わり映えしない第4回WBCの韓国代表メンバー発表に)

日本と韓国を天秤にかけていた?

ただ気になることが2つある。まず韓国プロ野球出身の先発投手で、日本のプロ野球で成功した人はほとんどいないということだ。

中日の宣銅烈(ソン・ドンヨル)も、ヤクルトの林昌勇(イム・チャンヨン=現KIA)も、阪神の呉昇桓(オ・スンファン=現カージナルス)もいずれも抑えであった。

メジャーでは、胗賢振(リュ・ヒョンジン=ドジャース)が2013、14年に14勝を挙げている。けれどもそのリュ・ヒョンジンもここ1,2年は肩、肘の故障に苦しんでいる。

ヤン・ヒョンジョンは最速が150キロを超え、スライダー、カーブ、チェンジアップなど多彩な変化球を駆使するが、四死球が79と多いのが気になる。

また宣銅烈が中日に入った1996年頃、韓国のプロスポーツでは年俸1億ウォンの選手は、宣銅烈やサッカーのホン・ミョンボなど、ほんの一握りのスター選手に限られていた。

金銭的には日本と韓国のプロ野球は、明らかな開きがあったが、今はそれほどでもなくなった。そのため条件面などで日本と韓国を天秤にかける選手も出てきた。

実力の面でも日本と韓国で差が縮まったとはいえ、海外でプレーするのは容易でない。エージェントの交渉戦術ということもあるのだろうが、日本であれ、アメリカであれ、海外に出る選手は、その意志をはっきり示すべきだ。

ヤン・ヒョンジョンはやや掴みどころがない感じの選手であるがあるが、1年後もし海外進出を希望するのであれば、その意志の強さが成功のカギになるのではないか。

(文=大島 裕史)