コーヒー1杯に12ドル スタバが挑む高級チェーン、業界改革なるか

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先日退任が発表されたスターバックスのハワード・シュルツ最高経営責任者(CEO)は今後、1杯12ドル(約1,400円)の高級コーヒーを提供する新規チェーンの立ち上げに取り組む予定だ。

「スターバックス・リザーブ・ロースタリー」初の店舗は2年前、シアトルにオープンした。「コーヒーのシュライン(聖堂)」を自称する同店ではその場で焙煎された豆を使用し、全米から集められた選りすぐりのバリスタが入れるコーヒーが提供されている。サイフォン式コーヒーの値段は12オンス(約355ミリリットル)のカップ1杯で12ドルだ。

スターバックスは今後、このロースタリー(焙煎所)店舗を20〜30店に拡大し、さらに店内焙煎を行わない「スターバックス・リザーブ」ブランドの店舗を1,000か所で展開する計画だ。

このコンセプトについて考える時、筆者の頭に繰り返し浮かぶのは、クラフトカクテルラウンジとの共通点だ。本記事ではスタバの新たな高級チェーン計画の展望について、クラフトカクテルの世界と比較しながら考えてみる。

ブルームバーグによると、米国ではアルコール飲料の消費量が減少している一方で、高級なビールやワイン、カクテルの人気が上昇し、消費者が酒類に使う額は増加している。販売されるワインのうち48%がグラス1杯当たり10ドル以上の高級品で、カクテルになるとその価格はさらに上昇する。

コーヒーもこれと同様に、大きな変革の時期を迎えている。才能あふれるバリスタらは、これまでのラテやマキアートにバニラや塩キャラメル、パンプキンといったフレーバーを加えるメニューのみならず、フラットホワイトや水出し、窒素入りといった新たな製法でのコーヒーを提供している。そして新しいアイデアが生まれるたび、価格もその分上乗せされる。

ただ、高級コーヒー店を成功させるためには、期待と価格に見合う店内体験を提供しなければいけない。コーヒーはビールやウオッカと同じく本来は日用品であり、20年前だったら1杯に5ドルを払うなど考えられなかっただろう。

だがシュルツCEOは、スタバでの数十年のキャリアを通じ、一般のコーヒーに対する概念のみならず、人々の交流方法までをも変えた。「スターバックスは米国人に対し、コーヒーは家庭向けブランドの『フォルジャーズ』よりも野心的になり得るということを示したのだ」と、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は評している。

シュルツはこの点において、同じく野心的な挑戦を続けてきたカクテルバーの軌跡をたどっている。かつてバーテンダーと呼ばれていた職業は今、ミクソロジストと呼ばれ、スピリッツやハーブ類、プロのシェフが使うような材料を使い、20ドルもする高級カクテルを生み出している。

「スターバックス・リザーブ」ブランドの店舗を各地に展開するにあたるコストは、サイフォン式コーヒーが1杯12ドルという価格設定を反映したものになる見込みだ。一部アナリストは、スタバが今後、新店舗展開に年間1億ドル(約117億円)を投じると予想している。これをコーヒーの売り上げだけでカバーするのは難しいだろう。(既存店の売り上げで埋め合わせるのであれば別だが)

だがさらに大きな課題は、既存店と新規ブランドの差別化かもしれない。既存のスタバ店舗のメニューは現状でも十分に洗練されており、かつ複雑だ。クレディ・スイスのアナリスト、ジェイソン・ウェストはWSJ紙に対し、「さらに一段階上のプレミアム化とイノベーションを進め、エスプレッソバーを加えるのは、より大きなチャレンジとなるだろう」と語っている。

シュルツCEOは、ロースタリーでの店内体験は、オンラインショッピングに多くの時間を費やす消費者にも外出を促すものになると語っていたが、これについては疑問を抱かざるを得ない。シュルツは最近、スタバ店舗を訪れたことがあるのだろうか。筆者が推定するに、店内ではおそらく9割の客がパソコンやスマホの画面に見入っている。