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 今年も残りわずか。皆さんは今年、どんな広告・プロモーション施策が印象に残っていますか? 今回は「AdGangが選んだ一押しキャンペーン」特別編。2016年に世界各地で実施された広告・プロモーションの中から『デジタル領域のユニークなケース』を10点まとめてご紹介! 世界の広告人の大胆なアイディアと行動力のスゴさに圧倒されてみませんか。

■2016年は広告業界も「VR」

 2016年の広告業界の潮流をあえて一つ挙げるとすると……IT・テクノロジー界隈で『VR元年』といわれたように、広告・クリエイティブ業界にあってもやはり、VRを活用した体験型キャンペーンが前年に比べて数多く生まれました。

 VR(コンテンツ)の良さといえる、“臨場感”“没入感”をキーワードにして、生活者に新たなブランド体験をコーディネートし、ブランドとの関与を深めるための様々なクリエイティブ、試行錯誤が見受けられた一年でした。中には、VR体験を通じて潜在顧客層の需要を喚起し、新たなマーケットを開拓しうるチャレンジングなケースも見られ、筆者自身心躍らされました。

 さてそれでは、VRを活用したキャンペーンも含めて、今年世界をにぎわせた傑作たちを紹介していきましょう。筆者の独断と偏見で、業界人が思わず唸ってしまう(であろう)アイディアと実行力が光るケースをセレクトしました!

■眺めるだけじゃなくて入っておいで、Instagramダイレクト応答施策

 【概要】
 キャンペーン名:#comeonin
 国名:オーストラリア
 業種:エンターテインメント
 ブランド名:Sydney Opera House

 シドニーの観光名所といえば“オペラハウス”。そのユニークな外観が目に浮かぶ人も多いと思いますが、どれだけの人がその内観をイメージすることができるでしょうか。オペラハウスはオーストラリアで最もInstagramに投稿されるスポットであるといわれますが、Instagramに写真を投稿した人の内、わずか1%しか実際に建物の中に足を踏み入れていないそうです。

 そんな同館が、Instagramにオペラハウスの写真を投稿したユーザーを、“オペラハウスの中に誘い込むため”に実施したキャンペーンが「#come on in(さぁ、入って)」。ユーザーがオペラハウスの外観写真をInstagramに投稿すると、瞬時に専用のコンピュータソフトが、画像認識および位置情報を使ってそのユーザーがオペラハウスの外にいることを確認します。

 するとすぐさまオペラハウスのリアルタイム返答チームがパーソナルメッセージ動画(例:『舞台の衣装を準備しているの。実際の衣装を試着しにオペラハウスに来て!』)を撮影します。そして同ユーザーをタグ付けしてこのメッセージ動画をInstagramに投稿するという流れ。

 オペラハウスからのメッセージはバラエティーに富んでおり、「演奏風景を見に来ない?」「キャストと写真を撮らない?」「キッチンを見に来ない?」「試食してみない?」というものもありました。

 “Instagramに写真を投稿すると、即座にオペラハウスから応答がある”という本取り組みは、多くのユーザーの関心を集め、オペラハウス内に引き込むことに成功。オペラハウス内で体験した貴重な経験はInstagramに投稿され、わずか4週間で500万人以上にオペラハウス内の様子をシェアすることができたといいます。

 

■Instagramの『ヌード検閲』をチャンスに変えた
乳がんセルフチェックのクレバーなPR

 【概要】
 キャンペーン名:Censorship For Cance
 国名:イタリア
 業種:非営利団体
 団体名:ANT Foundation

 Instagramでは2014年4月より、女性のヌード写真に対する検閲を行っています。具体的には、授乳画像やヌード絵画はOK、でも乳房を露出した写真はNGとされていて、不適切と判断された写真は削除されたり、ユーザーアカウントを停止されてしまう場合もあります。

 この規制に反対する人たちは、バストトップに絵文字を付けることで検閲を回避するという苦肉の策を取っています。これに着目したのがイタリアのNGO「ANT Foundation」。乳がんの早期発見と、自分で乳房を触って異常がないかを確かめるセルフチェックの大切さをかねてより訴えている同団体は、Instagramにアカウント#touchthemを開設。

 女性たちに、“手の形の絵文字”でトップを隠したバストの写真を投稿するよう促しました。これによって普段から自分の胸を触る習慣をつけ、病気をできるだけ早い段階で見つけよう、と呼びかけたのです。

 この取り組みは、セレブや有名な写真家を含む多くの女性に支持され、爆発的に拡散。またラジオ、新聞、雑誌など様々なメディアでも紹介された結果、世界84ヶ国で3,800万件ものインプレッションを獲得することに成功しました。『検閲を逆手にとってセルフチェックを促す』というアイディアが光るデジタル施策でした。

Censorship For Cancer | Case Study from J. Walter Thompson Milan on Vimeo.

■「audiがBMWより優れている」と一目でわかる無料Wi-Fi

 【概要】
 キャンペーン名:Wi-Fi-Jack
 国名:USA
 業種:自動車
 ブランド名:Audi
(Image:audi)

 2016年ニューヨーク国際オートショーで、audiが公開した『A4』のライバル車種といえばBMWの『328i』。audiのアピールポイントを来訪者に効果的にアピールするためにaudiが取った行動、それが、“『328i』より『A4』が優れている”とのメッセージがそのまま名前になっている無料Wi-Fiです。名前の一例は下記の通り。
“328 reasons to choose A4(『A4』を選ぶ328の理由)”
“#1:A4 more horsepower than 328i(『A4』は『328i』より強馬力)”
“#2:A4 more torque than 328i(『A4』は『328i』より高トルク性能)”
“#3:A4 has Wi-Fi(『A4』にはWi-Fiがある)”
“#4: A4 has CarPlay(『A4』にはCarPlayがある)”

 同社が提供したこの無料Wi-Fiは、来場者に利便性を提供するだけでなく、アウディの訴求ポイントを端的にメッセージする役割を果たしています。Wi-Fi名は、ショー開催期間中随時変更され、常時10種類を提供していました。今やイベント来場者にとって必要不可欠とも言える無料Wi-Fiの名称に目をつけたユニークな広告戦術でした。

山田 健介(株式会社PR TIMES)[著]