『この世界の片隅に』 (C) こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

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…前編「夫の不満に納得いかない!」より続く

【ついついママ目線】2016年のベスト10/後編
5位〜1位はこの作品!

老夫婦の夫婦愛に胸がジーン
●第5位:『あなた、その川を渡らないで』
98歳のおじいさんと89歳のおばあさんの老夫婦のささやかな日常を追った韓国のドキュメンタリー。ひっそり淡々と寄り添っているのではなく、花を摘んでお互いに飾ったり、雪をかけあったり…と、バカップルばりにイチャコラ! 体が弱ったときには相手をいたわって慈しむ。夫婦愛が微笑ましく、胸をあったかくしてくれる。終盤のおばあさんの「世界で一番あなたが好きよ」のつぶやきにはジーン。我が子も晩年にそうつぶやくことができるパートナーと出会えますように、とひたすら願ってしまう。

大人になりきれない父親像が健気
●第4位:『ミモザの島に消えた母』
トラウマである母の死の謎を追う主人公は大人になりきれていない等身大の男。不器用ではあるが、現実から目を背けずに対峙しようとする姿は健気で、溝のあった娘との距離も近づいていく。子どもがある程度の年齢になれば、格好悪くて弱いありのままの親の姿を見せるのも交流を深めることにつながると思う。

しなやかに生きていくことを願って…
●第3位:『この世界の片隅に』
戦争に直結した暴力ではなく、夜中の空襲警報や日々の食卓の貧しさなど、日常が戦争に侵食されるさまはリアルな疲弊感を感じさせる。それでも、しんど過ぎないのは困窮したときにも「ありゃ〜」と受け流していくヒロイン・すずのとぼけたような軽やかさにゆうきづけられるから。しかし、そんなすずでも怒り露わにし、弱音を吐く時が来る。その姿にしなやかな強さを見た。踏ん張って抗えばボッキリと折れることもあるだろうが、身を任せて萎(しお)れてしまったほうがやり過ごせることもあるだろう。自分よりも長く生きるであろう子どもには、どんな時代が来てもしなやかにしたたかに生きていってほしい。

子どもと一緒に見てほしい“問題作”
●第2位:『聲の形』
いじめというきわどいテーマを真っ向から扱い、しかも、いじめていた男の子のほうを主人公に描いている。と言っても単純に男の子に天罰が下る勧善懲悪の話ではない。主人公はいじめたために吊るし上げをくらって孤立し、罪悪感と自己嫌悪でもがき苦しんでいる。周囲の者たちもそれぞれの思惑と悩みを抱えているが、本作では誰も裁かれないし、答えが提示されるわけでもない。まず、問題に向き合うことの大切さを教えてくれる。いじめだけに限らず、集団という社会の中に身を置いて生きていくということの難しさをひしひしと感じさせ、つまずいて立ち止まりながらも前に進もうとする若者たちの姿は、大人としてしっかりと見守ってあげたいと思えてくる。真摯な気持ちで考えさせてくれる青春アニメだから、ぜひ子どもと見てみては。思わず涙がこぼれても、親も何かを感じ取っているとわかれば、子どもは心強いハズだ。

子どもにとっての本当の幸せとは?
●第1位:『聖の青春』
「東の羽生、西の村山」と並び称されるが、29歳で夭逝した天才棋士・村山聖の人生に圧倒された。「『3月のライオン』の二階堂晴信のモデルと言われる棋士だから」と興味本位に軽い気持ちで見に行ったことを恥じたほど。20kg増量して役に挑んだ松山ケンイチのまさしく渾身の演技は凄まじく、それだけ心揺さぶられた。聖は難病と闘いながら文字通り将棋に人生をかける。「ごめんね聖、丈夫な体に産んでやれなくて」という母親のセリフには慰めの言葉も見当たらない。命に関わる局面でも将棋を打つ聖を、母は止めようとして踏みとどまる。命をかけてもいいほど打ち込めるものを見つけられたなら、そんなに幸せなことはないのでは? 我が子の人生からそれを奪うことができるだろうか? 親にとっては苦渋の選択だ。我が子に生きて欲しいという当然の願いさえ、本人にとっての本当の幸せを考えて堪えなくてはいけないこともあるかもしれない。

(文:入江奈々/ライター)
入江奈々(いりえ・なな)
都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。