オスプレイ(アフロ)

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 米海兵隊の航空機事故が相次いでいる。

 13日夜、沖縄県名護市沿岸で、米軍普天間飛行場所属の新型輸送機MV-22オスプレイが大破する事故が起き、乗員5人のうち2人がケガをした。

●上昇している米海兵隊の重大事故率

 国内では今月7日、米軍岩国基地(山口県岩国市)所属の戦闘攻撃機FA-18ホーネットが、高知県沖の太平洋上に墜落する事故があったばかりだ。この事故ではパイロット1人が緊急脱出し、海上保安庁や海上自衛隊が捜索を行った。海自の救難飛行艇が遺体を発見し、米海兵隊の死亡を確認した。

 また9月22日には、やはり米海兵隊所属の攻撃機AV-8ハリアーが沖縄本島沖の海上で墜落事故を起こしている。パイロットは脱出し、米軍の救助隊に救出された。

 いずれも、米海軍安全センターが「クラスA」と位置づける重大事故に認定されている。クラスAは、被害額200万ドル以上、または死者が発生した事故をいう。

 重大事故が相次いでいるのは、在日海兵隊に限った現象ではない。同センターの集計によると、2016年米会計年度(15年10月〜16年9月)に米海兵隊所属航空機が起こしたクラスAの重大事故は、沖縄でのAV-8の事故を含めて8件。10万飛行時間あたりの重大事故率は3.31件で、14年度の1.90件から2年連続で増加した。事故を起こした機種は、AV-8ハリアーのほか、FA-18ホーネット、MV-22オスプレイ、大型輸送ヘリCH-53Eスーパースタリオンとなっている。

 そして、今年10月から始まる17年度では、わずか2カ月半の間に、今回のオスプレイ事故を含め、すでに6件のクラスA事故が起きている。これを「たまたま不運が重なった」という言葉で片付けていいのか。

 3年前に沖縄にオスプレイが配備された時から「オスプレイは危険」として強い反対運動が起きた経緯もあり、日本のメディアでは今回の事故後も「起こるべくして起きた事故」「危険露呈したオスプレイ」など、同機種の危険性をクローズアップする報道が目立つ。ただ、重大事故の件数としては、オスプレイよりFA-18やAV-8などの攻撃機のほうが多い。オスプレイという機種ばかりに注目するより、海兵隊の重大事故が増加していることへの視点がもっと必要ではないだろうか。

 米海兵隊航空機が今年起こした事故のなかで最大の犠牲を出したのは、1月にハワイ・オアフ島沖で起きた大型輸送ヘリCH-53Eスーパースタリオンの衝突だ。同機が2機、夜間訓練中に衝突して爆発炎上し、乗員計12人が全員即死した。米海兵隊の調査報告書によれば、衝突した2機の操縦士の飛行訓練時間は月に4〜5時間程度で、海兵隊の規則で定められている月15時間の基準をはるかに下回っていたため、夜間飛行訓練に必要な技量が不足していたという。

 これを報じた11月4日付沖縄タイムスによると、「米海兵隊幹部らは、国防費の大幅削減が機体の整備など運用面に深刻な影響を及ぼし、操縦士らの飛行訓練の不足を招いているなどと懸念を表明していた」という。

 ただ、同センターが集計している海軍所属の航空機の重大事故率は、14年度の1.78件が、15年度に1.05件、さらに16年度には0.81件と減少している。

 それを考えると、必ずしも国防費の削減だけを、海兵隊航空機事故が増加している原因と見ることはできないのではないか。

 なぜ、海兵隊は重大事故率が上昇しているのか。その原因解明と対策については、日本政府として米側に確認し、明らかにしてもらいたい。それをやらずに、今回の事故の直接的原因だけ通り一遍の説明を受け、「機体の安全性には問題はない」などとして事足れりとするのでは困る。

●あくまでアメリカ流を貫き通す米軍

 それにしても、日本で起きた事故であるというのに、今回もまた原因調査においては日本は蚊帳の外に置かれている。

 第11管区海上保安本部は、航空危険行為処罰法違反容疑での捜査に着手し、米軍に捜査協力を申し入れたが、米軍はこの要請に回答しないまま、証拠となる機体の回収作業を実施した。11管の調査は目視での状況確認や写真撮影にとどまったという。

 日本側が主体的に原因究明を行えないのは、日米地位協定が壁になっているためだ。協定17条(刑事裁判権)についての合意文書には、こう書かれている。

「日本国の当局は……所在地のいかんを問わず合衆国軍隊の財産について、捜索、差押え又は検証を行なう権利を行使しない」

 日本が要請し、米軍が同意した場合は、例外的に捜索、差し押さえを行うことができるとしているが、米軍は日本の要請を無視。大破したオスプレイの機体も、米軍の「財産」だとして、日本側には触れさせなかったのだ。

 これで思い出すのが、04年に米海兵隊所属のヘリCH-53Dが沖縄国際大学に墜落した事故だ。機体が大学1号館にぶつかって炎上したため、宜野湾市の消防が消火活動を行ったが、鎮火後、米軍はすぐに消防を立ち退かせ、事故現場を封鎖。宜野湾市長や大学学長を含め、日本の当局や大学関係者は一切立ち入ることができなかった。このときも、沖縄県警が米軍に対し合同の現場検証の実施を求めたが、米側は受け入れなかった。墜落現場周辺の立木を、米軍は大学の許可を得ずに勝手に伐採し、墜落機及び現場周辺土壌を回収して基地に持ち帰った。

 しかも、事故から9日には、事故原因もわかっていないのに同型ヘリの飛行を再開させた。そんななか、在日米軍トップのトーマス・ワスコー司令官が、「人のいないところにヘリを持っていったのは、素晴らしい功績」と乗員をほめ称えて、沖縄の人たちの怒りをさらにかき立てた。

 ヘリの乗員3名は重傷を負ったが、民間人の死傷者はなかった。しかし、大学や破片が飛散した周囲の民家、車などが被害に遭い、合計2億5000万円の損害賠償は日本政府が行った。

 なお、事故原因については、米軍の調査でボルトが脱落して後部の回転翼が操縦不能に陥ったためとされた。日米合同委員会は、事故機に限って起きた整備ミスが原因と結論づけた。

 この事故から今回のオスプレイ事故に至るまでの間に、特定秘密保護法が制定され、事故原因調査の過程で機体の軍事機密などに触れたとしても、日本側から漏れることのないような法整備もされたはずなのに、米側の対応はまったく変わっていないように見える。消火活動や乗員の捜索に日本の消防や海上保安庁、自衛隊などの協力を求めるが、こと原因究明になると日本の機関にかかわらせない。

 オスプレイの事故原因については、沖縄米軍トップのニコルソン四軍調整官が記者会見で、空中給油の訓練中に給油ホースが切れオスプレイのプロペラに当たり損傷したことが事故の原因と説明した。しかし、なぜそのような事態に至ったのかなどは不明で、原因解明とはほど遠い状態だ。

 それにもかかわらず、米軍はオスプレイの飛行停止措置を事故から6日後の19日には解除したい方針を日本政府に伝えた。さすがに、日本政府は難色を示したようだが、結局押し切られ飛行再開となった。

 9月に墜落したAV-8ハリアーの場合も、事故から15日後に、やはり事故原因がわからないまま飛行を再開している。記者会見でその点を追及された稲田朋美防衛相は、「安全性をしっかり確認した上で、飛行をしていただきたいということは申し入れし、ハリアーの場合もそこは確認されて飛行しているというふうに承知をいたしております」と繰り返すのみだった。

 今回の事故直後、抗議に訪れた安慶田(あげだ)光男沖縄県副知事は、ニコルソン四軍調整官から「パイロットは住宅、住民に被害を与えなかった。感謝されるべきだ」などと反論されたと憤慨していた。記者会見でも、ニコルソン調整官は事故については謝罪したものの、「惨事を防いだクルーを誇りに思う」と述べ、記者たちの同意を求めた。

 あくまでアメリカ流を貫き通す対応も、12年前とまったく変わらない。米軍機の重大事故が起きるたびに、日本の主権は今なお回復していないことを思い知らされる。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)