19日の午後2時10分から、現在韓国の天地を揺らし続けている国政介入事件「崔順実ゲート」の張本人・崔順実被告の第1回目の裁判がソウル中央地裁にて開かれた。写真はソウルで行われた同事件関連のデモ。

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2016年12月19日の午後2時10分から、現在韓国の天地を揺らし続けている国政介入事件「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」の張本人・崔順実被告の第1回目の裁判がソウル中央地裁にて開かれた。出廷は義務ではないながらこの日崔順実はその姿を現した。国民の刺すような視線よりも、法廷での発言を重視したのであろう。

ドイツから帰国し検察に初出頭した10月31日には「死に値する罪を犯しました」と涙ながらに訴えていたのだが、この日の法廷では一貫して「罪はない」と主張、その鮮やかな変貌ぶりに国民の多くがまた驚かされ憤怒の念を新たにしたことだろう。

2016年後半は毎日、崔順実ゲートのニュースばかりだった。9月ごろから少しずつ出始めていた崔順実の話題が、10月に入ると「崔順実ゲート」に発展、事件に大統領の関与が疑われたことから10月25日、朴槿恵(パク・クネ)大統領が「対国民談話」という形で第1回目のコメントを発した。この頃から韓国のニュースには「ククチョン・ノンダン」という単語が出始めるようになる。

なんだ、このククチョン・ノンダンとは。ククチョンは分かる、「国政」だ。ノンダンはなんだ。ノンダムは「冗談」の意だが、ノンダンとは何か。辞書を見ると、「壟断」とある。おお、こんな難しい漢字だったのか。いったいこれ、日本語でどう発音するのか。すぐには分からなかったので、これも辞書を見てみた。「ろうだん」とあり、利益や権利を独占することと出ている。出展は『孟子』の「公孫丑下」。公孫丑とは孟子の弟子の名前だ。「こうそんちゅう」だそうだ。

つまり「ククチョン・ノンダン」とは「国政壟断」、国政を自分勝手に操り、利権を思うままにわがものにしてしまう、くらいの意味になるわけだ。崔順実はまさに「国政壟断」の典型的な例と言える。

日本ではこういう事件はほとんど見たことがなかった。実際にはあるのかもしれないが、少なくとも表面的には一度もこうしたニュースには出くわしたことがない。だから「壟断」なんていう言葉も一度も目にしたことがなかったのであろう。筆者の勉強不足かもしれないが、たぶん多くの日本の方もこの壟断なんて言葉は初見ではなかろうか。

国政壟断という言葉とともに面白い言葉が韓国のニュースに出てきている。「ビソン・シルセ」という単語だ。これは漢字で表記すると「秘線実勢」となる。さて意味の方はお分かりだろうか。まず「秘線」からいこう。これは、公開されている公式的な関係ではなく、裏で秘密裡に大物(大統領など)と関係を結んでいる状態のことを言う。「実勢」の方は、実力者、権力者といった意味である。つまり「秘線実勢」とは、裏でこそこそと大統領などと関係を結び巨大な権力を持つようになった者、という意味である。崔順実の実体を表している言葉なのである。

これまで3回の「対国民談話」で、魂のこもった謝罪とは言えないながらも一応謝罪している朴槿恵大統領。4回の国会聴聞会、8回の週末のチョップル・シウィ(ろうそくデモ)。今週24日の土曜はクリスマスイブとも重なり大規模デモの予定。そして1回目の裁判。特別検察の捜査も本格化している。崔順実の罪が具体的にどの程度のものになるのか。朴大統領の罪は認められるのか。今のところは誰にも分からない。案外、罪そのものは「軽い」と出るのかもしれない。しかし国民は怒っている。憤怒している。爆発している。これは事実だ。これからどのような展開になっていくのか、多くの国民も視線集中であるが、筆者もここ韓国に生きる者として目が離せない日々が続いている。

■筆者プロフィール:木口政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年〜現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。