指導を行う竹下佳江さん【写真:編集部】

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1日限定で強豪校を指導した元女子バレー日本代表の竹下佳江さん

 セッターとなって1年も経たないティーンエイジャーに、かつて五輪で銅メダルを獲得した名セッターが自らの技術を教える。高校バレーボール界のビッグイベント、春高バレーを前に行われた貴重な直接指導とは――。

 女子バレーボール界の名門として知られる長崎県の九州文化学園の体育館には、強豪校らしい引き締まった雰囲気が流れていた。実戦さながらのサーブ、レシーブ、アタックが絶え間なく続く。その中でプレーの合間を見て声をかける人物がいた。この日だけ指導を務めた竹下佳江さんだ。

 竹下さんは159センチとバレーボール選手としては小柄な体格ながら、現役時代、チームの攻撃をつかさどるセッターとして絶対的な存在感を放った。冷静に試合状況を見極める判断力とアタッカーを生かしきるトス、そしてチームのために身を投げうつレシーブ。Vリーグでは、NECレッドロケッツ、JTマーヴェラスと長年にわたって一線級で活躍。その安定感は日本代表でも多くの監督から信頼されると、2012年のロンドン五輪では自身3度目の大舞台で念願の銅メダルをつかみ取った。

 その実績は、4年前に小・中学生だった九州文化学園女子バレーボール部の部員たちも知るところだった。竹下さんは今月7日、大塚製薬が実施する「ポカリスエット エールと、ともに。ブカツ応援キャラバン」の一環で同校を訪問、指導を行った。

熱心に耳を傾けた1年生セッター「目標にしている存在でした」

 部員から緊張をほぐす方法を問われると「緊張は誰でもするものです。絶対に勝たなくてはいけないなどと、勝ちを意識しすぎると、一層そうなってしまいますよね。だからこそ、それまでの過程でどれだけの練習を積み重ねてきたか、これだけやり切ったから大丈夫と思えることが重要です」とアドバイスを送った。

 その言葉を実践すべく、トレーニングが始まった。かつて不知火女子高(現・誠修)時代に九州文化学園と対戦した経験があるという竹下さんだが、「練習を拝見したのは初めてだったので、どういう雰囲気で練習するのかと見ていました。それぞれが意図を持ってしっかりと取り組んでいるところが素晴らしいなと思いました」と全国制覇経験を持つチームの能力の高さを改めて実感したようだった。

 竹下さんの教えに対し、熱心に耳を傾けたのは1年生ながらセッターを任される島田涼夏だ。

 同校に入学した島田は「竹下さんが現役だったころはスパイカーでした。小学校の頃からスパイカーでしたけど、セッターの竹下さんが好きでした」と話し、「試合中の表情だったり、小柄な体格でしたけど、気持ちの部分で絶対に負けないというのが見える選手でしたので、憧れ、目標にしている存在でした」と目を輝かせた。

竹下さんが指導したトスのポイントとは…

 かつての名セッターから必死に何かを学び取ろうとする1年生セッターに関して、竹下さんは「彼女に関してはセッター歴が浅いので、まだどういった足の運び方でボールの下に入ればいいのかを勉強している最中のようでした」との印象を語った。そんな島田にはあるポイントを授けたという。

「私からは“こういう風にすればいいトスが上がるよ”という技術的な部分です。具体的に言うと、セッターから見るとネットは絶対に右側に来るので、そこまでの右足の使い方のコツです」

 約1時間半と限られた練習の中で丁寧な指導を受けた島田は「オーバーハンドパスをする時はボールを持ってしまいがちになってしまっていました。竹下さんから言われたアドバイスを明日からの練習に生かしていきたいなと思います」と充実した表情を浮かべた。

「(教えてもらったことを)どのように判断して、自分のものにしていくかは本人次第です」

 指導を終えた竹下さんはそう話す。来年1月に開幕する春高バレーでは自身も解説者として会場を訪れる。この日の教えを胸に飛躍を果たそうとする有望株のセッター。竹下さんもその成長を見守っている。