スーパーマリオラン「失速」でも死なない任天堂のブランド力

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公開初日から巨大なダウンロード数を叩き出したものの、「スーパーマリオラン」は任天堂に株価上昇をもたらさなかった。同社株は当日、4%の下落になり投資家らはゲームの値付けが高すぎたのではという疑念を抱いている。

SuperDataのアナリストは、スーパーマリオランの初月売上予測を当初の6,000万ドル(約70億円)から1200〜1500万ドル(約18億円)のレンジに引き下げた。このゲームは「法外に高い」とし、今後の値下げを期待したいとしている。

ゲームアナリストのパトリック・ウォーカーは「プレミアム課金のエンドレスランナー型ゲームは、売上が急減速する傾向にあり、一般的なゲームと比較すると収益性は低い」と述べている。

しかし、ここで大切なのは任天堂がコンソールゲーム機のスイッチの発売を来春に控えていることだ。「スーパーマリオランや復刻版ファミコンのNESクラシックは、スイッチの発売に向けて任天堂のブランド価値を高める効果をもたらす」とパトリックは述べている。

しかし、モバイルへの進出を加速させる任天堂にとって、スーパーマリオランは単に任天堂ブランドの認知向上のために存在するのではない。任天堂には長期的視野に立ったブランドの信頼性の確立が求められている。

任天堂にはスーパーマリオランを1200円の買い切りゲームではなく、フリーミアム型のゲームとして提供する選択肢もあった。追加アイテムを有料で販売したり、課金により死んだマリオを復活させるといったモデルだ。

モバイルゲームの世界ではフリーミアムで巨大な成功を収めた企業も多い。EA社の「Plants Vs. Zombies」や「PopCap」がその例に挙げられる。しかし、それらのゲームは生まれついてのフリーミアム型のゲームであり、無料で遊ばせることにより、ブランド価値が毀損することもない。

フリーミアムはブランドを殺す

マリオを用いたゲームで少額の課金が行われることは、ゲームの利用者にとっては問題にはならないだろう。しかし、任天堂にとっては彼らが大切に築き上げてきたブランドを毀損させてしまう可能性がある。同社が次にモバイルアプリ化する「どうぶつの森」や「ファイアーエムブレム」であれば、さほどの重大事ではないだろう。しかし、マリオは任天堂ブランドを象徴する需要なマスコットだ。

マリオをフリーミアムに用いることは、長期的なブランド構築の観点から見て、重大な過ちになりうる。それがたとえ金銭的メリットを生むとしてもだ。

フリーミアム型に適したIPとしては「どうぶつの森」があげられる。大量のキャラクターを有する任天堂は素材に応じて、フリーミアム型とプレミアム型を使い分けるのが得策だ。

しかし、それでもなお、フリーミアム型を適用する場合、任天堂には非常に慎重なアプローチが求められる。世間一般のゲームメーカーとは違い、任天堂はキッズ向け市場で強大なブランドを築いている。子供をターゲットとしたフリーミアムのゲームは、非常に悪どい商売にもなりうる。世間のフリーミアムゲーム企業のようにゲーマーから、はした金を徴収して満足する訳にはいかないのだ。

任天堂のモバイル進出には当初から、モバイルのカジュアルなゲーマーらを、同社の洗練されたハードウェアや質の高いソフトウェアに向かわせる狙いがあった。同社が今後、仮にモバイルへの売上依存を高めることがあったとしても、任天堂にはブランド価値を守り通し、粗雑なモバイルゲーム業界のやり方には手を出さないことが求められる。株主や投資家らが何を言おうとも。