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●飛蚊症の8割程度が生理的な原因
「飛蚊症」(ひぶんしょう)という言葉をご存じだろうか。一般的に、自分の視界の中に細長い浮遊物らきし物が見えることを指すこの症状は、網膜はく離などの重篤な疾患につながる可能性もあるがその大半は放置しておいても問題ない。

本稿では、あまきクリニック院長の味木幸医師の解説をもとに飛蚊症の症状や原因などを紹介する。

○飛蚊症の見え方は人により異なる

何かを見ている際、細長い黒い物体のようなものが動いて見える状態のことを一般的に飛蚊症と呼ぶ。暗い場所だと見えないが、真っ白な原稿用紙や秋晴れのように透き通った空を見ると現れるのが一般的とされている。

視界の中の浮遊物は、視線を動かした際にやや遅れて現れる特徴がある。これらの物体はあたかも蚊や虫が飛んでいるように見えることもあるが、味木医師は人によってこの浮遊物の見え方に個人差があると話す。

「見えるものには実際にさまざまな形があって、蚊とか虫ではなくて『ひもみたいなんですよ』とか『泡粒みたいなんです』とか表現される患者さんもいますし、色も黒に限らず白とか赤という患者さんもいます。それらを総称して飛蚊症と呼びますね」。

飛蚊症の原因は大きく分けて「生理的原因(加齢含む)」と「病的原因」がある。網膜組織が裂けてしまう「網膜裂孔(れっこう)」や、失明につながる恐れもある「網膜はく離」が病的原因の一例だが、8割程度が生理的原因だという。

この生理的飛蚊症は、目の構造が原因となって起こりうる症状だ。私たちの目の中は硝子体(しょうしたい)と呼ばれるゼリー状の物質で満たされているが、硝子体は経年劣化する。加齢とともに硝子体に濁りが出てきて、その濁りが網膜に影を落とし、あたかも目の前に浮遊物が漂っているように見えるのが生理的飛蚊症のメカニズムだ。

「生理的飛蚊症は目の中の老化が原因になってくるため、40代や50代の方に多くみられます。ただ、個人差もあり近視が強い方では20代で出る場合もあります」と味木医師は話す。

●生理的飛蚊症が一時的に消える理由
生理的飛蚊症は一度現れると、基本的に消えないケースが多い。だが、脳の働きによって一時的に見えなくなることがあると味木医師は解説する。

私たちは日常生活において目や耳からさまざまな情報を受け取っているが、あまりにも受け取る情報が多すぎると情報過多に陥る。そのような状態にならないよう、脳は入ってくる情報を取捨選択して私たちの認識・認知機能をうまくマネジメントしてくれている。

「例えば耳で言うと、雑然とした部屋でいろいろな音があふれている中、自分の名前が聞こえると『何か悪口を言われていないだろうか』みたいな感じでそのしゃべり手の声に集中し、結果としてよく聞こえますよね。情報が有り余る中で『飛蚊症が必要ない』と脳が判断したら、一時的に視界から消してくれるというわけです」。

日常的に生理的飛蚊症に悩まされていると、状況によって脳の「認識させるべき情報」のプライオリティにおいて飛蚊症が低くなるときがあり、一時的に症状が消失する可能性がある。ただ、仮に消えたとしてもストレスや心配事、疲れがあると脳が落ち着かない状態になり、生理的飛蚊症を消す能力が乱れてしまう。そのため、ストレスや過労が生理的飛蚊症のトリガーになりうることを覚えておこう。

○生理的飛蚊症か否かを見分ける判断材料

生理的飛蚊症は基本的に消失せず、放置しておいても問題はないケースがほとんどだ。味木医師は飛蚊症の原因が生理的か病的かを見分ける一つの目安として、「発症時のエピソードが詳細に語れる」点をあげる。「3日前に近くのスーパーへ買い物に行った際、野菜売り場で何気なくにんじんを手に取った瞬間に突然症状が現れた」などのように発症時の様子を詳細に語れるようだと要注意。

最終的に生理的飛蚊症かどうかを判断するには、医療機関で検査と診察をする必要があり、検査自体は30分程度で終わることが多い。また、生理的飛蚊症でも「今までとは違った見え方をする」などの場合では検査が必要になるケースもあるため、気になる人はきちんと医療機関を訪問するようにしよう。

※写真と本文は関係ありません

○記事監修: 味木幸(あまき さち)

あまきクリニック院長、慶緑会理事長。広島ノートルダム清心高校在学中に米国へ1年の留学。米国高校卒業後に母校に戻り、母校も卒業。現役で慶應義塾大学医学部入学。同大学卒業後、同大学眼科学教室医局入局。2年間の同大学病院研修の後、国家公務員共済組合連合会 立川病院、亀田総合病院、川崎市立川崎病院・眼科勤務。博士(医学)・眼科専門医取得。医師として痩身や美肌作り、メイクアップまでを医療としてアプローチする。著書も多数あり。

(栗田智久)