矢口真里

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 前回の本連載では、マーケティングの4Pにおける「Promotion」(プロモーション)を紹介したが、今回はそのなかでも企業のPR活動のひとつである「パブリシティ」について、立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に解説してもらった。

●パブリシティを演出しようとして炎上したauショップ

――マーケティングにおけるパブリシティの意味とは?

有馬賢治氏(以下、有馬) 簡単にいうと、企業などが自社の情報を報道機関に提供し、ニュースとして報道されるように働きかける活動です。これは、お金を払ってメディアに情報を掲載してもらう“広告”とは異なり、あくまでも主体は報道機関にあります。例としては、新聞やテレビの特集コーナーで取り上げる新商品紹介やニュースでのイベントレポート、プレスリリースとして発信された合併などの企業情報を取り上げたニュース記事などがあげられます。

――広告とは違う、パブリシティのメリットは何ですか?

有馬 報道機関からの情報なので、受け手は企業が自画自賛している自社商品のCMとは違う、といった視点でその情報に接します。そのため、信頼性の高い情報として受け止めてもらいやすい側面があります。

――タレントのマツコ・デラックスさんは普段毒舌な分、紹介された商品をテレビで褒めると視聴者は「本当にいいものなんだ」と思い、売上が伸びるという現象がそうですね。では反対に、デメリットは?

有馬 報道機関にニュースソースを提供するかたちで告知されるので、必ずしも企業が意図した内容で報道されるとは限らないという点です。スポンサーやタイアップ商品ではないので、報道機関は提供元の言いなりになる必要はありません。極端な話、ダメな商品やイベントとしてニュースや記事で扱われてしまう可能性がある点では、企業にとってはデメリットでしょう。

――そういう意味では、パブリシティとは企業にとってはもろ刃の剣ですね。

有馬 そうですね。もちろん費用がかからないにもかかわらず宣伝効果が大きい分、決して無視はできないプロモーション手段なのですが、企業側が好印象を演出しようとして裏目に出ることもあります。最近でいえば、auショップが顧客へのアンケートに高評価をつけるように書面でお願いしたというニュースがありました。これは、アンケート結果を受けて、その満足度をプレスリリースとして情報発信して、記事として取り上げられてもらおうという意図があったかと思われますが、そのことが公になってしまいマイナスのパブリシティとなってしまいました。

●ツイート拡散でむしろ宣伝効果につながるケースも

――SNS時代なだけに、情報を操作しようとした事実も広まりやすいという一例のようです。

有馬 ただSNS時代だからこそ、“意図せずに”パブリシティになるケースも多いんです。よく聞く「炎上商法」などもそうですよね。芸能人などに多いですが、発言したことがネットで叩かれることによって話題となり、その類の仕事が急増するといったパターンです。どんな内容だとしてもメディアに乗っかることで知名度につながるので、あえてそういった言動をするタレントさんが最近では増えてきた印象です。

――企業であえて炎上させて話題を集めることは可能ですか?

有馬 マイナス面で話題になってもリピーターを獲得することは難しく、企業でわざと炎上商法をするのは多少無茶ではないでしょうか。ただ意図せず炎上商法的となった例でいいますと、以前、日清がカップヌードルのCMを、矢口真理さんを起用して過去の自身の不倫をネタにするような内容にしたところ、批判があがってしまってCMがすぐに放送中止されるといった事態がありました。ですが、非常に話題になったためにYouTubeでわざわざそのCMを視聴する人がたくさん現れ、結果的に「カップヌードル」という商品をリマインドしてもらう効果を得たわけです。

――コーセーの「雪肌精」のポスターに映る女優、新垣結衣さんの瞳の中にスタッフが映り込んで話題になったこともありました。こちらは特に批判されることもなく、むしろ過度な写真加工をしない新垣さんの美しさにスポットが当たり、商品としてもプラスイメージで一部メディアに取り上げられました。

有馬 それはたまたまいい方向に働いたケースでしょうね。意図せずプラスにプロモーションできたとすればそれは最も効果的ですが、一般の人がツイートした内容が拡散されて、その話題性でマスコミが記事を書くことも非常に多い時代です。どのように切り取られるか分からない以上、世の中に好印象のイメージだけ持ってもらい続けるプロモーションというのは非常に難しく、企業側も細心の注意を払って活動をしなくてはいけない、といえるでしょうね。

――ありがとうございました。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)