年内オープン予定の「アマゾン・ゴー」の店舗(The New York Times/アフロ)

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 米アマゾンが本格的に、リアル店舗の拡大に乗り出した。12月6日、コンビニエンスストアに似た小規模食料品店「アマゾン・ゴー」に参入すると発表した。

 アマゾンの実店舗といえば、2015年11月に米シアトルに開店した「Amazon Books」が最初の出店であるが、この時は、オンラインで不可能な「試用体験」をコンセプトに掲げ、書籍やアマゾングッズなどの商品を陳列する一般的な店舗仕様を採っていた。

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 だが今回の出店は、ITを駆使し工夫を凝らしたこれまでにない店舗づくりを目指したものである。顧客は、コンビニエンスストアに似た小規模食料品店「アマゾン・ゴー」の入店時に、スマートフォン(スマホ)をゲートにかざして本人性を確認する行為だけで、商品の認識から支払い決済に至るまでの一連の行為をすべて自動で完了することができる。

 カメラやセンサーを店舗内に張り巡らせることで顧客の行動を管理し、商品購入の認識をAI(人工知能)が自動的に行う。その際に活用されるのが画像認識技術であり、センサーフュージョンであり、深層学習などである。これらの技術は自動運転に用いられるのと同じタイプの技術で、アマゾンはこれを実店舗に応用して自動化につなげた。

 それでは、アマゾンがこのように、ことさら店舗の自動化を進めるのはなぜか。2つの意図が見えてくる。そのひとつは、コストリーダーシップによるローエンドモデルの導入である。通販サイトにおいてすでに豊富な品ぞろえで「Everyday Low Price(エブリデー・ロープライス)」を実現して成功したアマゾンは、実店舗でもこの手法を取り入れて拡大展開を図る意向である。コスト競争力の高い実店舗のネットワークを構築することで、削減した固定費の商品小売価格への転嫁が可能となる。

 2つ目の意図は、実店舗版レコメンデーションの実現である。入店時にかざすスマホにアマゾンのIDを連携させることで、顧客ごとの購買履歴を参考にしながら購買済みの商品に関連した多様な商品提案を実店舗で行うことが可能となる。データ解析には、すでにアマゾンがECにおいて実用化しているアルゴリズムをそのまま転用できるというわけである。

 今回のアマゾン・ゴーは、アマゾンが「プロジェクト・コモ」と名付けた実店舗設置の3つの取り組みのうちのひとつであるといわれている。ほかにも、車で商品を受け取れる機能を備えた多機能大型店の出店や、店内販売をしないドライブスルー型店舗を数週間以内にシアトルで開店する見通しであることをウォールストリートジャーナルが報じている。

 リアルでますます攻勢をかけるアマゾン。ECで得た優位性を今後プロジェクト・コモにどのように生かしていくのであろうか。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)