イタリア北部モデナ州都ボローニャに近い町マラネッロにあるフェラーリの本拠地 (画像提供 Ferrari S.p.A)

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 今回イタリアを訪れたら、高級スポーツカー・メーカー、フェラーリの工場を見学したいと思っていました。よくフェラーリは特別な芸術作品と称賛されていますが、エンジンなど、どの部品もすべて伝統工芸品のように手作業で丁寧に製造されていました。実際に工場で製造の全過程を見学してみたら、なぜフェラーリが世界のファンから高い評価を得ているのか理解できました。

 まるで日本庭園のよう! 美しい花や緑に囲まれた作業場

 フェラーリの本拠地はイタリア北部モデナ州都ボローニャに近い町マラネッロにあります。本部にはフェラーリ社の会長や役員たちのオフィスがあるだけでなく、すべてのグランツーリスモ(高速走行性能を備える自動車)とF1マシンの設計や製造もここで行われています。すべてのフェラーリ車はここで誕生しています。

 車の工場というと機械の音で「とても騒々しい」印象でしたが、工場に入った途端、まるで美しい花園に入ったかのようでした。フェラーリの工場内は騒音、光、室温がそれぞれ最適化されています。工場の外には美しい庭があり、ガラス張りになっている作業場は外の庭で美しく咲いている花や豊かな緑と一体となっており、まるで美しい日本庭園を見るようでした。私自身も歩いていると工場を見学していることすら忘れてしまうほど。

 工場内はとても広く、多くの通路があります。これらの通路には創始者エンツオ・フェラーリや伝説のF1ドライバー、ファン・マヌエル・ファンジオなどF1グランプリ優勝者の名前がつけられています。フェラーリは自社のこれまで歩んできた歴史と伝統的騎士道精神を誇りに思っています。

 建物内の電力は完全自家発電で、CO2排出量を40%減少することに成功したそうです。これほど徹底的に工場の環境保護を行うのには驚かされます。視学的な美しさと環境保護へのこだわりは、社員のストレスを軽減するのが目的だそう。

 「社員が毎日楽しくて誇りに思っていれば、自分の仕事を好きになる。そうすれば、効率よく仕事を全うできるだけではなく、創造性の向上にもつながる」

 花園のような視学的美しさ、F1ドライバーの名前が名付けられた通路、環境保護の意識の高さは、みな「人間が第一」という理想を実現した現れであり、私はここにいる社員全員、とても大事にされているのを感じました。そしてフェラーリの経営陣は本当に賢明だなと感じました。

トップクラスの鋳造技術を持つエンジン生産部門

 私たちが最初に見学した作業場は、建築家マルコ・ヴィスコンティ氏が設計した「新エンジン加工エリア」でした。ここは、世界のフェラーリファンたちが最も知りたがっている、V型8気筒(V8)と12気筒(V12)のエンジンの作業場で、職人たちの手によって、フェラーリのエンジンが、どのように作り上げられているかが見学できる場所です。このエリアには世界最先端の機械設備があるだけではなく、同時に豊かな緑も方々に置かれており、働く環境としてはとても優れています。ここでも社員たちを最善な状態に保つため、エリア内の湿度と室温が調節され、美しい環境が整備されています。

 フェラーリの鋳造技術は世界トップクラスと言われています。メインは職人たちの手作業で、工場内には最先端の工作機器もありますが、それらの設備は、むしろより効率的に伝統的な手作業の技術をサポートするためにあるのだそうです。ですからフェラーリの各部門では今も変わらず手作業が行われています。極めて小さいエンジン部品一つでも、熟練した職人が、鋼の杓子で溶けた鋼を取り、型に流し込んで作っています。ちなみに昨年、ここで作り上げられたフェラーリは7600台だったようです。

 

 フェラーリのV型12気筒のエンジンを担当する技術者は5人、1人一日で完成されるエンジンは1つだけ。5人の技術者は1日、5つのエンジンしか作れません。技術者たちは自ら作ったエンジンをわが子のように誇りに思っています。V型8気筒エンジンの生産ラインには32か所の作業場があり、ここでは作業員がチームで流れ作業によってエンジンを作っていきます。それでも、1日25台のエンジンしか作れないのです。完成したエンジンは、エンジン組み立てエリアと車体組み立てエリアに送られます。

フェラーリのV型12気筒のエンジンを担当する技術者は5人
1人一日で完成されるエンジンは1つだけ(画像提供 Ferrari S.p.A)

美しい環境で次々と生み出される新しい価値 プロダクト開発センター

 エンジン加工エリアの反対側は、建築家マッシミリアーノ・フクサス氏が設計したプロダクト開発センターです。ここではエンジニアたちがフェラーリ車のすべての部品の研究・開発を行っています。ここの建物は生態気候学の原理を応用しており、明るくて風通しも良く、全部で4つの階がありますが、透明な通路と階段でそれぞれの階がつながっています。見学を案内してくれた社員によると、建物中に日本庭園様式のエリアがあり、この美しい環境の中で社員がリラックスした状態でアーティスティックな心を養っていくことを会社は願っているそうです。

工場内には豊かな緑が(画像提供 Ferrari S.p.A)

1台1台の車両はオーダーメイド! 明るく優々とした組み立てエリア

 次に見学したのは、V8気筒とV12気筒エンジン車両を組み立てる場所で、建築家ジャン・ヌーヴェル氏が設計した新組み立てラインエリアです。私たちが目にしたのは、熟練の職人の見事な技術は勿論ですが、ここでも素晴らしい労働環境でした。これは従業員の誇らしげで楽しくてリラックスした表情から見て取れます。

 ここでは50の作業場があります。作業台は作業員の身長によって、高さを調節できます。この組み立てラインでは、19分間ごとに車体を移動させるので、その間に組み立てるべき部品を車体に装着しなければなりません。また、次に組み立ての品質をチェックする検査員がいます。またフェラーリの車両の内装には高級レザーが使用されています。フェラーリの職人はこの熟練の伝統工芸をとても誇りに思っています。

 私たちは作業台に置かれている、世界各地から集まった注文を目にしました。それぞれの車両は、色や内装のインテリアなどそれぞれのオーナーの要望に沿って作られていきます。これによって、世界に1台しかないフェラーリ自動車が誕生するわけです。日本人には特に白いフェラーリが人気のようです。

 フェラーリの組み立てエリアはそれほど多くの従業員がいないし、騒音がなく、とても静かでした。見学していると、まるで目の前の光景が自動車の生産ではなく、芸術品の創作を見ているようです。

フェラーリ車両製造過程はそれほど多くの従業員がいな
いし、騒音がなく、とても静か(画像提供 Ferrari S.p.A)

「利益を第一に」ではなく、「人間を第一に」 

 工場内の作業場はすべて豊かな緑に囲まれて、静かで優々たる環境となっています。作業員もまた作業に非常に集中して、横で見学している私たちの会話も全く聞こえていないようです。仕事の間に作業員たちが窓ガラス越しで、外の自然風景を眺めることがありました。これを見て、従業員にとって本当に優しい仕事環境だと感心しました。

 フェラーリのエンジニアや技術者の創造性がどこから生まれたのか、フェラーリがいかにして成功したのかについて、皆それぞれの見解を持っています。ただビジネスを成功させていくには、「利益を第一に」ではなく、「人間を第一に」とすることは最も明らかで、古くから変わらない真理ではないでしょうか?

 

 

(翻訳編集・張哲)