イメージ画像 Photo By taylorandayumi from Flickr.

写真拡大

 プミポン前国王が10月に死去したことでタイ国内は自粛ムードが広がり、国内で予定されていた一部コンサートやムエタイといった娯楽イベントも続々中止となった。

 商店などは大半が営業を再開しているものの、衣料店では喪服が並べられ、悲しみのムードから観光客も減っている様相なのだが、夜の街ではその減収を取り戻そうと、違法なチップ詐欺が横行している。現地取材で当事者を直撃した。

 首都バンコクでは、日本人向けの店も多い歓楽街パッポンなどが有名だが、ぼったくり店なども少なくないため、仲介役のガイドが安全な店を斡旋することもある。あるベテラン観光ガイドのタイ人が勧めるのは別の地区で、にぎやかな通りからは外れる「プラザ・エンターテイメント・コンプレックス」なる雑居ビル。複数の風俗店が「マッサージパーラー」として入っている。

 サービスは日本のソープランドに近いもので、90分の代金は接客する女性の質により、おおよそ1,500〜4,000バーツ(約4,500円〜1万2,000円)となっており、ほかに飲み物代100バーツ(約300円)がかかるというシステム。あとは女性には気持ち程度のチップを渡す習慣がある。

「客の多くは中国系やアラブ系の客で、日本人も珍しくはありません」とガイド。

 客はひな壇に並んだ数十名の女性から好みのタイプを選んで個室へ移動する形式で、タイの夜を楽しむ男性にはおなじみのものだが、国王の訃報以降で増えているのが、店とは無関係に単独で客から金を奪う詐欺コンパニオンだ。

 店のひとつ「CUPIDY」(日本語表記・キューピット)から出てきた韓国人の中年男性が必死になってクレームをつけている場面に出くわした。ガイドによると、「女性コンパニオンが、客のクレジットカードから不正に金を落として逃げた」という。

「店側もまったく関与していないところで女性が勝手にやったことで、店は女性をクビにすると言っているけど、客の方は店側に賠償を求めているようです。当の女性は店から逃げてしまっていて、連絡がつかない状況」(同ガイド)

 被害者は店側の関与も疑っていたが、グループで来店した韓国人客の、ほかの3人は何も問題はなかった。ガイドによると、このパターンでの詐欺が国王の死去以降、増えているのだという。

 被害者男性に話を聞くと、プレイ後にチップを要求され、100バーツの現金を渡そうとしたところ女性から「2人分の飲み物代を入れて340バーツ、支払いはカードのみ」と言われ、カードを渡したのだというが、暗がりでサインさせられたレシートをあとで確認すると、1ケタ多い3,400バーツと表記されていて、詐欺に気付いたという。店側はすでに代金は別途受け取っており「店としては追加料金は求めない」と言っていた。

 被害者はプレイ代として2,500バーツを支払っており、本来は総額9,000円程度で済むところを2万円近くも取られた形。

「女性は『明日以降、店の外で直接、遊ばないか』と言い、そのことを店側に告げ口しないよう求めてきました。しかし私は『明日、帰国するから無理だ』と言ったんです」(前出被害者男性)

 女性はおそらく、この客が帰国してしまえば被害届も出せないと踏んでの犯行だったのだろう。後日、この女性は11月に他店でもこうしたチップ詐欺を行っていたことがわかったが、ガイドによると「バンコクでは旅行者の安全を守るツーリスト・ポリスがいますが、カードの詐欺だとカード会社に説明してくれという程度で終わり。カード会社も支払いにサインがある以上、対応できないことが多く、ほとんどの被害者は泣き寝入り」だという。

 タイでは国王の死から1年間、国民全体で喪に服すことになっており、不敬罪が定められていることから、観光局は外国人にも派手な服装をしないよう呼び掛けている。そのため観光客は減少し「風俗店も通常の6割ぐらいしか客がいない」とガイド。その分を取り戻そうとする者が、犯罪に走っているという悪循環だ。

「数日前、日本人男性の被害もありました。こちらも店側に2,000バーツ(約6,000円)を支払ったのに、女性からさらにカードを悪用され4,000バーツも巻き上げられていたんです。男性は『女性の吸うテクニックがすごかったけど、財布の中身もバキュームされてしまった』なんて涙目でジョークを言っていた」(同ガイド)

 近年、発展が目覚ましいバンコクは東南アジアの旅行先でダントツの人気を誇り、昨年タイを訪れた日本人は約138万人。リピーターも多いが、浮かれて遊んでいると、思わぬ落とし穴にはまりそうだ。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)