「電気自動車のまったく新しいカタチ」との触れ込みで登場した日産ノートe-POWERだが、機械の中身やビミョーな乗り味のちがいを別にすれば、実際の使い勝手は普通のハイブリッド車そのものだ。

 ノートe-POWERは外部コンセントからの充電は不要(というか不可能)で、普通にガソリンを入れて走る。34.0〜37.2km/Lというカタログ燃費は、国内コンパクトカーでいちばん人気のハイブリッド車、トヨタ・アクア(第26回参照)にピタリ追走する。

 日産ノートはこれまでも、アクアやホンダ・フィットというハイブリッドを売りにする2強コンパクトカーに、ハイブリッドなしで肉迫する販売台数をあげてきた。e-POWERはそんなノートで初のハイブリッド車なわけで、発売直後の今年11月の月間販売では、日産車としては30年ぶりに国内月間販売1位を獲得! この勢いがいつまで続くかは予想不可能だが、いずれにしても、ノートe-POWERは、日産国内戦略で超期待のカンフル剤でもある。

 ノートe-POWERは、そのうたい文句どおりにタイヤを直接駆動するのがモーターだけで、そこが新しい。

 ただ、ハイブリッド車とは、一般的にエンジンとモーターを融合した動力システムをもつクルマすべてを指す。ハイブリッド車という発想自体は意外に古く、エンジン主体で走ってモーターは補助するだけのタイプ(=パラレル式)と、エンジンは電力供給に専念してモーターで走るタイプ(=シリーズ式)......という2種類の概念も昔から存在していた。

 しかし、世界初の量産ハイブリッド車として発売されたトヨタ・プリウスはそのどちらでもなく、エンジンのみ/モーターのみ/エンジン+モーター......という3つの駆動方式を自在に使い分ける"第3のハイブリッド"だった。以降、このトヨタ方式が世界のハイブリッド車の主流となってしまった。

 対して、このノートe-POWERは純粋な"シリーズ式ハイブリッド"である。その原理のアイデア自体が新しくないのは前記のとおりだが、シリーズ式ハイブリッドが本格的に商品化されるのは今回が史上初なのだ。

 電気自動車は、エコうんぬん以前に、ひとつの乗り物としてすごく気持ちいい。

 モーターは停止状態から通電すれば回り出して、逆の場合もそのまま停止する。よって、エンジン車や他のハイブリッド車に不可欠なクラッチなどの断続装置が存在しない。しかも、モーターは回り出した1回転目から1分あたり1万回転(=1000rpm)rpm以上という高回転まで、ほぼ全域でフルに近いトルクを出せるので、実用乗用車レベルの性能でよいなら、変速機もいらない。

 だから、電気自動車は発進から停止までギクシャクとした断続感はまったくなく、しかも最高速まで継ぎ目なく滑るように加速する。

 ノートe-POWERは発進や減速など一時的にエンジン停止のまま走れるように小容量バッテリーを積んでいるが、走行中は必要に応じて(こちらの乗り方とはわりと無関係に)エンジンがかかったり止まったりする。また、モーターをフルパワーで回すときには、エンジンもフル回転するので、やはり音や振動は純粋な電気自動車とは少しちがう。

 しかし、運転感覚では電気自動車のメリットをそのまま味わえるのが、ノートe-POWER=シリーズ式ハイブリッド最大のツボ。アクセルを踏んだら、間髪入れずにシュルルルーンと発進&加速して、アクセルを離すとキュイイイーンと減速する。エンジン車しか知らない身体には、そこがとてつもなく気持ちいい!

 ノートe-POWERではモーターだけで走ることを活かして、BMW i3(第77回参照)と同じく"ワンペダルドライブ"という電気自動車特有の魅力を打ち出しているのもツボ。

 早い話がエンジン車ではとうてい実現できないほど強力なエンジンブレーキ(?)が、クルマが完全停止するまで効く。街中程度のスピードならペダルブレーキをいっさい使わずに、慣れてしまえば右足をアクセルペダルに載せたままで走り切れるほど。アクセルを微妙に戻すだけでグイッとブレーキがかかるので、アクセルを微妙にコントロールしながら、ペダルブレーキなしでコーナーを駆け抜けられるのも、エンジン車しか知らない身体に新鮮きわまりない。

 いつも歯がゆいのは、こうした電気自動車の気持ちよさを、言葉で表現しづらいことだ。これはもう「とにかく乗ってみて!」としかいいようがない。ノートe-POWERはハイブリッド車ではあるけれど、さすが世界初の量産電気自動車をつくった日産......の技術と熱意のツボが詰まっている。

佐野弘宗●文 text by Sano Hiromune