WEEKLY TOUR REPORT
■米ツアー・トピックス

「Giving Back」という言葉がある。日本語にすると"還元"、あるいは"恩返し"という意味になるのだろうか。

 2015−2016シーズンのPGAツアーは全47試合(4つのメジャー大会を含む)、賞金総額はおよそ3億2700万ドル(約370億円)だった。トップ選手たちが得た賞金は、途方もない金額となる。

 しかし一方で、PGAツアーも、高額賞金を得た選手たちも、「Giving Back」と称して社会への還元活動を積極的に行なっている。その中に、決して目立った存在ではないけれども、地道なチャリティー活動を続けている『PGAツアー・ワイブス・アソシエーション』というものがある。文字どおり、プロゴルファーである夫を支える"妻たち"が、社会へ恩返しするために集まった集団だ。

 発足は、1988年。その前年、ジャック・ニクラウスの妻、バーバラ夫人が中心となってPGAツアーで戦う選手のワイフ(妻)たちがゴルフのチャリティートーナメントを行ない、基金集めに成功したことがきっかけだった。そこで、夫であるツアープロとともに全米中を転戦するワイフたちが、「試合に訪れる先々のコミュニティーで、何か私たちにもできることがあるかもしれない」と、同協会を設立。現在はフロリダ州の非営利団体として活動し、今年ですでに28年目を迎えている。

「私たちの一番の目標は、子どもたちが心配なく育つことのできる社会作りの手助けをすること。病気などで支援が必要な子どもたちと、その家族のために、どんな小さなことでも手伝っていきたい」

 そう語るのは、現在同協会の代表を務めるメーガンさん。マーティン・レナード(33歳/スコットランド)の夫人である。

 同協会の活動に参加する選手の妻の数は、年々増加しているという。では、具体的にはどんな活動をしているのか。

 例えば、昨季のフェデックスカップ・プレーオフの第2戦、ドイツバンク選手権(9月2日〜5日)がボストンで開催されたときのことだ。この週は、9月5日の月曜日が"レーバーデー(勤労感謝の日)"で、ロングウィークエンドとなる。そのため、試合も月曜日が最終日と変則的だったが、長い週末になるということは、当然その間は学校が休みになる。

 アメリカは物資に恵まれた豊かな国ではあるが、貧富の差が激しく、自宅ではまともな食事ができない子どもたちがたくさんいる。そういう子どもたちは、「学校に行かないと給食がないため、食事ができない」という現実があるのだ。

 そこで、同協会では事前に地元の食品会社などと提携し、子どもたちが週末に食べられるものを手配。それらを、ひとつのバックパックに詰めて、給食代わりとして、貧しい子どもたちの自宅や、そうした子どもたちが集まる施設へと配った。パッキング作業には、ツアープロたちも手を貸していたので、まさに夫婦そろっての活動だった。

 今年最後のオフィシャルトーナメント、RSMクラシック(11月17日〜20日/ジョージア州、シーアイランド)の際には、ツアープロチームvsワイフチームに分かれて、地元の子どもたちと一緒に野球イベントを開催。そこでは、チャリティーを募って、3万5000ドル(約400万円)もの募金を集めた。

 また、例年5月にPGAツアーが主催する「第5のメジャー」と呼ばれるプレーヤーズ選手権が行なわれる。その開幕前には、会場の隣のコースで『ワイブス・クラシック』と称して、妻たちのゴルフトーナメントが開催される。夫であるツアープロたちがキャディーを務めるなどして、今ではそれも人気イベントとなっている。

「野球も、ゴルフも、とても楽しいイベントでした。私たちも、すごくエンジョイできました。でも、この協会として一番大事なことは、子どもたちがいい時間を過ごし、少しでも安心して育つ環境を作るために、よりよい手助けができるコミュニティーになっていくことです」

 昨季の全米プロ覇者ジミー・ウォーカー(37歳/アメリカ)の妻、エリン夫人はそう語る。

 PGAツアーは、ビッグマネーが動くだけではない。そして、PGAツアーで戦う選手の妻たちは、夫に声援を送るだけの美しい"セレブ"というわけではない。毎週、彼女たちは各試合会場の地域コミュニティーに訪れて、きちんと"Giving Back(恩返し)"をしているのだ。

 この『ワイブス・アソシエーション』は、PGAツアーの誇りでもある。華やかな一面ばかりがフォーカスされがちなPGAツアーだが、実はこうした知られざる側面があるのだ。

 それこそ、このツアーの魅力であり、日本のゴルフファンにもぜひ知ってもらいたい。トッププロが輝かしい脚光を浴びている裏で、その妻たちが華やかな舞台をしっかりと支えているということを。

text by Reiko Takekawa/PGA TOUR JAPAN