国政介入事件で朴大統領が弾劾訴追され来春から予定している国定歴史教科書の導入が危ぶまれている。世論の反発も強く、野党側は慰安婦問題の日韓合意と並んで国定化の見直しも要求している。写真は韓国地下鉄構内で開催された日帝侵略70年史展示コーナー。

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2016年12月17日、国政介入事件で韓国・朴槿恵大統領が弾劾訴追され、朴政権が来春から導入を予定している歴史教科書の国定化が危ぶまれている。国定教科書は国内の反発が強い中、11月末に見本が公開されたばかり。大統領を追い込んだ野党側は慰安婦問題の日韓合意と並んで国定化の見直しも求めている。

韓国で歴史教科書の国定化に踏み切ったのは、朴正熙大統領(朴槿恵大統領の父親)。軍事独裁政権下の1974年、中学・高校用で計11種類あった歴史教科書は中高各1種類の国定教科書に再編された。

その後、リベラル系の盧武鉉政権が2007年に国定制度の廃止を決定。検定制度が導入されて、複数の民間企業が教科書を作成し、学校側が自主的にそれを選ぶという仕組みに変わった。しかし、保守系の李明博政権になると、検定教科書が左派に偏向しているとして、再び国定教科書復活へ向けた揺り戻しが始まり、朴槿恵政権がこの動きを本格化。昨年10月、国家が単一の教科書を編集・発行する「国定」に戻すと正式発表した。

国定化に野党などは「歴史の解釈が特定政権の専有物に転落しかねない。自由な発行制度を採択する世界的な流れにも逆行する」などと猛反発。世論の反対も強く、国政介入事件が明るみに出る前は、国論を二分しかねない政治問題になっていた。

11月28日に公表された国定教科書の見本で大きな論争を巻き起こしているのは、韓国の建国時期。1948年年8月15日を従来の「大韓民国政府樹立」ではなく、「大韓民国樹立」とした。これについては、日本による植民地時代だった1919年の臨時政府樹立を排除したことで、「抗日独立運動を否定し、植民地時代を美化する」などの反対論が相次いでいる。

朴正煕大統領時代に始まった経済開発計画、セマウル運動など産業化時代の肯定的な側面を強調する記述にも反発が集中。見本では「慰安婦少女像」の写真が省かれ、日本政府の慰安婦像撤去要求が、国定教科書の中で実現したと批判する声も出ている。

最大野党「共に民主党」の秋美愛代表は、朴大統領の弾劾訴追案可決後、「歴史教科書の国定化、旧日本軍の慰安婦問題をめぐる韓日合意など朴政権の代表的な失政に対し即刻中止を求め、社会的合意手続きと国会での協議も要求する」と述べた。韓国メディアでも「政府が導入先送りなどを検討」との報道が相次いだ。

聯合ニュースによると、李俊植・社会副首相兼教育部長官は13日、報道を否定する一方、「歴史教科書は正しい歴史教育が目的」と強調。政治状況と関係なく国定化を推進すべきとの考えを示した。しかし、朴槿恵大統領の職務が停止されたことで推進力が落ちたのは間違いなく、聯合ニュースも「今の政局を考えると、来春から国定教科書を教育現場で用いる計画は事実上白紙に戻ったと見なすべきだろう」と報じている。(編集/日向)