近代化が進むティンプーにも伝統文化は残されており、自然の多さも見て取れる

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 日本では世界一幸せな国としてクローズアップされることが多いブータン王国(ブータン)。インターネットの解禁が遅く、普及のペースも遅かったが、今や携帯電話事業者各社は高速通信を実現する第4世代移動通信システム(4G)を導入している。インターネットの普及率は上昇傾向にあり、4Gの競争が活発化しているが、インターネットの普及はブータンという国家にとっては負の側面も小さくない。

◆ネット普及率はようやく5割に

 ブータンではインターネットの解禁が1999年と遅かった。インターネットの解禁を長らく見合わせた背景には、ブータン政府が伝統文化の保護と推進を重視する中で、インターネットの普及による異文化の流入を防ぐ目的があった。

 ブータン政府機関や国際機関が公表するデータをもとに算出すると、ブータンにおけるインターネットの普及率は2009年に1%を、翌2010年に10%を超えた程度で、解禁後も普及のペースは遅かった。それでも2015年にはようやく50%を超えた。

 ブータンではスマートフォンを含めた携帯電話が普及しており、インターネットは携帯電話からの利用が多い。ブータン政府機関は携帯電話サービスの普及率を公開しており、2015年末には87%に達した。携帯電話サービスの普及率は2010年に50%を超えたが、その当時は決してインターネットの普及率は高くなかった。しかし、インドから輸入される低廉なスマートフォンの流通量が増えたことで、ブータンにおけるスマートフォンの利用者が増加し、インターネットの普及率は上昇した。

◆4Gで現状打破を狙う民間事業者

 世界各国で高速通信を実現するLTEの導入が進んでいるが、ブータンでも導入済みだ。

 国営事業者のBhutan Telecom(ブランド名:B-Mobile)は2013年10月に4GとしてLTEを導入した。しかし、LTEの加入数は2015年末時点でわずか835件、携帯電話サービスの全加入数のうちLTEの加入比率は約0.12%とあまりにも寂しい数字だ。インターネットの普及率が高くないブータンでは高速通信を求める消費者が少なく、LTEのエリアは首都・ティンプーのみで大々的な宣伝は実施せず、需要の低さと消極的な姿勢のためLTEの加入数は伸ばせていない。

 そんなブータンも2016年に大きく変化した。民間事業者のTashi InfoComm(ブランド名:TashiCell)が2016年4月に4GとしてLTEを導入した。ティンプーを含む3都市でLTEを導入し、その後に2都市を追加した。後発ではあるが大々的な宣伝を繰り広げ、一気に4Gで攻勢をかけてきた。インターネットの普及率は上昇で高速通信の需要が高まると判断し、さらにシェアを拡大する狙いがある。

 なお、ブータンの携帯電話事業者はBhutan TelecomとTashi InfoCommの2社で、携帯電話サービスの加入数シェアは2011年末時点でそれぞれ8割弱と2割強、2015年末時点で7割強と3割弱となり、Tashi InfoCommは徐々にシェアを伸ばしているが、依然として大幅なリードを許していることに変わりない。

◆高速通信4Gの競争が激化

 Tashi InfoCommの攻勢に危機感を覚えたBhutan Telecomは消極的な姿勢から転換した。

 2016年9月にはLTEを利用できる4G SIMの販売価格を前払い・後払いともに500ブータンニュルタムから100ブータンニュルタムに値下げした。Tashi InfoCommの4G SIMは前払いが200ブータンニュルタム、後払いが500ブータンニュルタムであり、Bhutan TelecomはTashi InfoCommより安価にして集客に乗り出した。

 また、Bhutan TelecomはLTEの導入から3年以上もLTEのエリアはティンプーのみであったが、2016年12月に2都市を追加して初めてLTEのエリアをティンプー以外に拡大した。

 4Gで現状打破を狙う民間事業者とそれに対抗策を繰り出す国営事業者の構図、ブータンでも4Gの競争が激化している。