<これまで禁止されてきたサイの角の取引が南アフリカで解禁される動きが。ヤミ市場の根絶が期待されるが、逆に重要を刺激する懸念もある>(写真:昨年南アフリカで死んだサイは1175頭。09年以降では6000頭を上回る)

 左へ、そして右へとよろめいて、体重2トンの体が崩れ落ちる。すると、青い作業服の男が近寄って手際よく目隠しをし、別の男が耳に巨大な耳栓を差し込む。そして、1人の作業員が電動ノコギリの刃を、眠っている動物の角の根元に当てる。白い削りくずが辺りに飛び散り、ほんの数分で角が切り落とされる。

 すべて終わると、獣医師が注射を打つ。10分前に矢で撃ち込んだ鎮静剤の効果を打ち消す薬だ。この後、チームの面々が慌ててトラックに飛び乗り、サイはどこかへ走り去った。

 不思議な光景だと感じるかもしれないが、作業員たちにとっては日常的な仕事だ。ここは、南アフリカのヨハネスブルク郊外にある世界最大のサイ牧場。この「バッファロー・ドリーム牧場」では、約80平方キロの土地で、ほかの多くの動物と共に1100頭以上のサイが放牧されている。

 ここにいるサイは1年半に1回、角を切断される。その際は鎮静剤を打たれるので、痛みは感じない(1年半たつと、また角が伸びてくる)。

 切断された角は、直ちにマイクロチップを埋め込まれ、武装した護衛に守られて秘密の保管場所に運ばれる。蓄えられている角の量は約5トン。さらに毎年1トンずつ増えていく。近い将来、これをすべて売れる日が来ると、オーナーのジョン・ヒュームは期待している。

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禁制品化が密猟に拍車?

 南アフリカには、世界全体のサイの約80%、数にして約2万頭が生息している。その3頭に1頭は、ヒュームのような民間人が所有するものだ。

 南アフリカのすべてのサイが密猟の脅威にさらされている。密猟者たちはますます高度な装備を擁し、強力に武装するようになった。

 183カ国・地域が参加しているワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)は、サイの角の国際取引を禁じているが、ベトナムや中国への密輸はなくならない。富裕層がアクセサリーにしたり、家に飾ったり、病気の治療効果を信じて服用したりしているのだ。

[2016.12.13号掲載]

レイチェル・ヌワー(科学ジャーナリスト)