photo by Kentin CC BY-SA 3.0

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 都内を中心に店舗を展開する喫茶店「喫茶室ルノアール」。

 アイスティー1杯が300円台で買える「スターバックス」や「ドトール」と比べると、同じものが500円台後半から600円少々かかるなど割高ではあるが、その分、店内は落ち着いた雰囲気でサービスもよく、平日はビジネスパーソンが商談に使っている光景がよく見られる。

 総店舗数は120店舗と、大手チェーン喫茶店と比べれば、ごく少数ながらも存在感を放っているルノアールの経営状態を読み解いて見た。

◆圧倒的な売上総利益率の高さ

 ルノアール第1の特徴は、何といっても売上総利益(粗利益)率の高さだ。スターバックス(現在は日本法人は上場廃止のため、上場時の最新のデータを使用)、そしてドトールと比較すると、その差は歴然としている。

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 もともと、喫茶店業は実質的には利用者への場所貸しとして機能しているといっても過言ではないため、原価の安い飲料を提供しているわけだが、それにしてもルノアールの原価は10%強しかなく、原価率はIT企業と見まごうほど、極めて低い。

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 そんなルノアールの営業利益率はさぞかし高いのかと思いきや、そうでもない。スターバックス、ドトールからは大きく水をあけられ、両者の半分ほどしかない。

◆ルノアールだけ年収400万円台

 営業利益は総売上から原価と販管費を引いたもので決まる。ルノアールは販管費の割合が非常に高いのだ。販管費は通常、人件費や土地代、広告宣伝費などからなる。

 ルノアールの販管費の内訳を見ると、やはり「給料及び手当」と「貸借料」が大きな割合を占めていることがわかる。また、「その他」として、退職給付費用や賞与引当金など、これまた人件費に関わる項目を中心に相当額計上している。

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 ただし、給与も賃料も他社と比べてそんなに高いわけではない。むしろ給与に関しては、各社の「平均年間給与」を比べると、ルノアールだけ400万円台で、500万円台の他社から引けを取っている。

 貸借料に関しても、有形固定資産が総資産に占める割合はドトールよりは低く、土地や建物に特段多くのお金を払っているわけではないようだ。

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 ルノアールは都内の有名な場所に多くあるものの、駅からは少し離れたところに立地していることが多く、入居しているビルも最新のオフィスビルなどよりはそれなりに経年したところが多いため、そこまで賃料がかさまないのだろう。駅チカにあることが多いドトールとは対照的だ。

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 給与は他社の水準より低く、賃料が高いわけでもないルノアールだが、1店舗あたりの売上高が競合他社と比べて明らかに低いことが特徴となってしまっている。効率的な経営という観点では他社に劣っており、販管費の占める割合が他社よりもはるかに高い原因になっていると言えるだろう。◆「受取補償金」という副収入

 ルノアールの決算書を読み解いていくと、もう1点。他ではなかなかみられない指標にお目にかかることができた。それは、「受取補償金」という項目だ。

 特別利益としてほぼ毎年計上されている受取補償金は、ここ2年なんと当期純利益に迫る額となっている。逆に言えば、受取補償金がなければルノアールはほとんど利益を上げられなかったということになる。

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 この受取補償金の正体は「立ち退き料」である。ルノアールが入居しているビルの賃貸人が、ビルの老朽化などを原因に建て替えをしたいと考えると、ルノアールは立ち退き料をもらってその店舗を撤退する。それが毎年のように計上されているのだ。確かに、ルノアールは定期的に店舗を閉じている。

 そう考えると、前述したルノアールの立地戦略は、賃料をもともと安く抑えるだけではなく、立ち退き料を得ることまで見越している二重に有用なものであるとも言える。原価率が極めて低いことから高利益を出しやすい体質なのも、賃貸人との立ち退き料の交渉で有利に働く。

 喫茶店を単なる作業スペースやくつろぎの場として考えず、その背景にある経営戦略に思いを巡らせれば、意外な面白い事実が見えてくるものだ。

【参照】
株式会社 銀座ルノアール「有価証券報告書・四半期報告書」

<文/大熊将八>

おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok