「女子会やめた。」第6回のゲストは、インタビュアーでコラムニストの芳麗(よしれい)さん。

NHK山形放送局のキャスターを経て、24歳でライターとして活動開始。aikoさん、椎名林檎さんなど大物アーティストを長期にわたりインタビュー、人気のジャニーズタレントの連載を担当するほか、大物俳優、お笑い芸人、クリエイターまで3000人を超える有名人のインタビューを担当し、このたび新刊『3000人インタビューして気づいた!相手も自分も気持ちよく話せる秘訣』(すばる舎)を上梓しました。

3回目は、アラフォー世代の芳麗さんにアラサーの時にやっておいた方がいいことや恋愛について伺いました。

自分の「好き」と「嫌い」を自覚する

小沢:ネットを見ていると、アラサーOLのたしなみや振る舞いに関する記事がたくさんありますよね。それをきちんと実行したとして、アラフォーになったらどうなるのか? という結果は誰も教えてくれなかったりして。美魔女以外の結論がよくわからないんですよ。

芳麗:私の世代……今の40代前半って、基本、地味だし、貧乏くじ世代とも呼ばれているんです。ベビーブームだったからライバルが多くて、受験も就職も苦労もしてきたので危機管理能力も高い。上は、バブルでエネルギッシュな世代だし、下は、同じく氷河期だけれど、ひょうひょうとしている世代。そんな上と下に挟まれて、地味で堅実というか。

ジェーン・スーさんは同世代ですが、圧倒的に面白いのに、遅咲きでしたよね。もしかして、「しっかりと生きる力を身につけてから、世に出よう」という貧乏くじ世代ならではの感覚が無意識にあったのかも(笑)。

「人からどう見られるか」でアイデンティティを決めるな

小沢:堅実世代なんですね。芳麗さん自身が、「アラサーでこうしておいたのがよかった!」ということはありますか?

芳麗:世論に流されない「自分の心からの好きと嫌い」を早めに自覚しておいた方がよいですね。常盤貴子さんが教えてくれた、安井かずみさんのCDの朗読「たとえば好き、たとえば嫌い」では、延々と、好きなものと嫌いなものを言い続けているんですけど(笑)。かっこいいんですよ。みんなが好きでも私は嫌いなもの、世の中には発見されていなくとも自分の好きなものを自覚している人って素敵だなと。自分の個性もよく分かるし、好き嫌いを自覚すると、不思議なことに自然と好きなものが寄ってくるし、アイデンティティが育っていくみたい。

小沢:なるほど。自分の中でもそうだし、堂々と口にしたら、手元には好きなものばかりが残るっていうのはありますね。

芳麗:それから、年下世代に限らずだけど、「人にどう見られるか」という依存心でアイデンティティを決めるのはもったいないですよね。自分の意思という主軸がないとつまらない。年齢を重ねても、幸せになっている人は、自分の「好き」と「嫌い」の軸がある人だと思います。軸があれば、仕事のみならず、人間関係もいい関係が築けるなと。

アラサーこそ、シゴかれ時?

小沢:まずは自分を内側から整えて、そこから他人との付き合い方を考えた方がいいということですね。仕事の面では?

芳麗:なんだろう……。あ、最初にひらめいたのは、尊敬する先輩に、徹底的にシゴかれること! アラサーくらいになると、そこそこ経験もあるし、プライドも出てくるから、誰かに怒られたりシゴかれるのって嫌じゃないですか。私はそうだったんですけど(笑)。でも、実際はまだまだだった。クリエイターはもちろん、どの世界でも、基礎を身につけたアラサーあたりが本当のスタートラインだと思うから。ここらでもう一度、正しく、徹底的にシゴかれてみる。それを乗り越えられた人は、本物の実力を身につけているし、年々歳々、輝いているなと。人間的にも謙虚でかっこいい人が多いです。

小沢:怒ってもらえることって、なかなかないですものね。疲れちゃうし。

芳麗:ごく一部の天才は別として、シゴかれてない人はラクな方へ逃げがちだし、いつまで経っても客観的に自分の実力を捉えられず、ムダなプライドばかりが大きくなっていっていく傾向があるなと。右も左もわかってきたアラサー世代こそ、シゴかれ時かも。なんかエラそうですけど、私もいまだに思いますもん。本音を言えば、アラフォーの私もまた次の段階でシゴかれたい(笑)。シゴかれたことを血肉にするのが、一番簡単なステップアップ法だと思います。

小沢:30歳近くなると、実績から得意な仕事ばかりが回ってくるようになりがちです。小さなことでも、失敗に向き合ってくれる方の存在は宝ですね。

芳麗:もちろん、誰にシゴかれるかも大切。尊敬できない人とは、ほどよく距離をとっていい。でも、仕事面、人間面の両方で尊敬できる先輩に出会えたら、自分から心を開いてみたらお得かも。……というのも、後輩を育てるって、ものすごく時間とエネルギーを食うんですよ。こちらを慕ってシゴかれることを望んでくれるくらいじゃないと、年上としてはキツイだけなので(笑)。自ら心を開いてくれる後輩になら、愛を持って激励してくれる先輩はいると思う。

すべての人間関係は恋愛である

芳麗:人間関係も30代後半からはますます楽しくなりますよ。40過ぎて思ったのは、大人になったら、すべての人間関係は恋愛と一緒だなということ。誰かを好きになったら、素直な自分をさらけ出すことが大事。自分がどんなに好きで仲良くなりたくても、相手も自分を好きになってくれないならしょうがない。片想いのままなら、自分の引力と魅力が足りなかったんだなと思って、精進するしかない……とかね。

小沢:すべての人間関係は、恋愛と同じ! 大人になるにつれて、他人と好き嫌いで付き合うのが難しくなると思い込んでいました。

芳麗:アラサー以前の人間関係って、学生時代の延長ですよね。同じ学校、会社などコミュニティの中で出会って自然と仲良くなって、なんとなく続いていく。でも、女性の場合は、仕事や結婚・出産の経験がありますから。どちらかの生き方が変わると、疎遠になったり、嫉妬しあったりして、壊れてしまうこともある。そもそも互いの思考や生き方を認めてから、つながっているわけじゃないから、壊れる時は早いんでしょうね。

小沢:精神的なものもそうですし、時間的にも合う合わないがどうしても出てきてしまいますものね。どうしても距離が生まれてしまう人はいます。

芳麗:大人になったら、本当に好きな人や魅力を感じる人を自分から選んで、自由に付き合うことができる。ただし、自分自身が仕事の能力も含めて魅力のある人間でなければ、魅力的な人と両想いになれない。尊敬や思いやり、相手を楽しませるサービス精神、適度な距離感などが大事とか……。ほら、やっぱり、恋愛っぽいでしょう?(笑)

関係に永遠はないところも同じ。互いが変化すれば、関係性も変わるし、自然と離れることもあります。だからね、その時々の本能のままに、仲良くなりたい人や好きな人には、自分から飛び込んだ方がかっこいいと思う。男女問わず、好きな人には素直にいく人が幸せになれるはず。

小沢:シンプル! 素直になるっていうのが、実は一番難しい。納得しつつも、恋愛下手としては、結構ハードルが高そうです……(笑)。

芳麗:いやいや! 自分は恋愛下手だと思う人こそ、普段の人間関係で素直に大胆になる練習をしてみたらいいと思います。老若男女問わず、「長らく恋愛をしていないから、自分に自信が持てない」っていう方の話もたくさん聞くけど、そんなコンプレックスは持たないでほしいです。生まれてこのかた恋愛したことがなくても、魅力的な人は魅力的だし、色気のある人はいます。別に恋愛経験数が魅力に比例するわけじゃない。

小沢:恋愛以外で蓄積してきたものでいくらでも勝負できる、と。

芳麗:だからこそ、まずは老若男女とのコミュニケーションを楽しんでみればいいと思います。人間関係を楽しめる人は、実は恋愛の潜在能力も高いですよ。自分なりに、いろいろな人と楽しい人間関係を築いていれば、恋愛体験がないことをコンプレックスに感じる必要はないですよ。よい人間関係を持てる人なら、10年ブランクがあってもポンと恋人ができますから。そこは先輩女子としてはもちろん、3000人以上、インタビューしてきたという実績からもお伝えしておきます。