現在のようにGoogleマップやBingマップを使うことで机の前にいながら全世界の隅々のことを見られる時代でもわからないことは多々あります。それが大航海時代真っ只中であればなおさらで、「新世界」「新大陸」と呼ばれたアメリカ大陸はヨーロッパ圏の人々から見るとわからないことが多くあり、当時の地図には人魚や巨人、ポセイドンなどが描かれています。

In 1562 Map-Makers Thought America Was Full of Mermaids, Giants, and Dragons | Atlas Obscura

http://www.atlasobscura.com/articles/in-1562-mapmakers-thought-america-was-full-of-mermaids-giants-and-dragons

地図はこれ、スペインの地図製作者ディエゴ・グティエレスと画家で出版業者としても知られるヒエロニムス・コックの共同制作作品で、「Americae Sive Quartae Orbis Partis Nova Et Exactissima Descriptio」という名前がついています。

File:Gutiérrez, the Americas, 1562.jpg - Wikimedia Commons

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Guti%C3%A9rrez,_the_Americas,_1562.jpg



この地図は新世界を描いた壁掛け地図としては最古のもの。クリストファー・コロンブスのバハマ諸島到達が1492年、ビセンテ・ヤーニェス・ピンソンのブラジル到達が1500年1月、フェルディナンド・マゼランの艦隊が世界一周を果たしたのが1522年ということで、すでに既知の場所が多くなっているからか、海岸線はわりと正確に描かれています。

その一方で「宣伝的内容」や「民間伝承」の類いまで描かれているのが特徴的。

たとえば、南アメリカ大陸の最南端・ホーン岬の西側には人魚が描かれていて、陸地には巨人が描かれています。



船に襲いかからんとする巨大な怪物。どうやら、クジラが潮を吹いている姿がモチーフになったようです。



ドラゴンのようにも見える生き物。ヒッポカムポスに似ていますが、ヒッポカムポスはノルウェーとイギリスの間に棲んでいるといわれています。



ブラジルのあたりには、人を殺して焼いて食べているかのような人の姿が。このころ、すでにヨーロッパからの探検家は現地の文明に遭遇しているはずなのですが、「野蛮で危険な人々が住んでいる」というイメージで描かれているようです。



メキシコに描かれた巨大火山



地図の右端にはアフリカも描かれていて、ゾウやサイ、ライオンの姿が。ただ、描かれているサイは本来ならばアフリカにはいないはずのインドサイだったりします。



そして、地図の左端にかなり小さな文字で描かれている「カリフォルニア(California)」。名称が初めて使われたのがこの地図だったそうです。



ちなみに、大西洋の中央上部に描かれている三叉の槍を持っているのはポセイドン。その後ろで車に乗っているのはスペイン国王・フェリペ二世。スペインが「太陽の沈まない国」と呼ばれた絶頂期の王です。



大西洋の下の方には巨大な生物に乗って盾を持った男が描かれています。スペインと覇を競うように外海へと進出したポルトガルの盾です。



この時代、ヨーロッパの識字率は高くなかったため、地図は数少ないナビゲーションツールであり、また遠い土地のことを伝える人気のメディアでもあったのだと、大英図書館のAquiles Alencar Braynerさんは語っています。