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東京大学(東大)は12月16日、神経ストレスが胃がんの進行を加速させるメカニズムを解明したと発表した。

同成果は、東京大学医学部附属病院消化器内科 早河翼助教、小池和彦教授らの研究グループによるもので、12月15日付けの米国科学誌「Cancer Cell」オンライン版に掲載された。

人間の神経細胞は脳だけでなく全身に分布しており、なかでも胃腸には1億個以上のさまざまな神経細胞が存在し、胃腸の動きや消化ホルモンの分泌を調節している。以前から神経ストレスががんやさまざまな病気の原因になる可能性は指摘されていたが、その理由や重要性についてはよくわかっていなかった。

今回、同研究グループは、消化管内での神経シグナルの中核をなす神経伝達物質「アセチルコリン」がどこから産生されるのかを、アセチルコリン産生細胞が緑色に光る遺伝子組換えマウスを用いて観察した。

この結果、胃の幹細胞を取り巻くようにアセチルコリン産生神経細胞が存在するとともに、粘膜細胞中の刷子細胞(Tuft cell)と呼ばれる細胞も、アセチルコリンを産生していることが明らかになった。また、これらの神経細胞とTuft cellは、マウスの胃発がん過程において徐々に増殖し、組織内にアセチルコリンを活発に産生していくことがわかった。

この結果から同研究グループは、増加したアセチルコリンががん細胞に働きかけて、神経を成長させる物質を放出させるのではないかという仮説を立て、検証。実際に、胃がん細胞では神経成長因子(NGF)というホルモンがアセチルコリン刺激によって高発現することがわかった。さらに、NGFを胃内に過剰発現するマウスを作製し、同マウスの胃内には異常な神経が発育し、結果として自然に胃がんを生じることを明らかにした。

アセチルコリンの受容体を欠損したマウスや、NGF受容体阻害剤を投与したマウス、アセチルコリンを産生するTuft cellを除去したマウスでは、こうした神経シグナルによる胃がん増殖効果が見られなくなることから、胃がんの発生には、アセチルコリンを介した神経ストレスが直接関与していると考えられる。

同研究グループは、今回の成果について、従来の抗がん剤に加えて、抗NGF抗体やNGF受容体阻害剤を組み合わせることで、胃がん治療の効果を高めることができる可能性があるとしている。

(周藤瞳美)