■ガンバ大阪・遠藤保仁インタビュー(2)

 ガンバ大阪の遠藤保仁は、今季の前半途中から本来のボランチではなく、トップ下のポジションでプレーする機会が増えた。以前も一時期、FWや右MFの位置でプレーしたことがあったが、これほど長くボランチから離れることはなかった。

 遠藤の"指定席"には20歳の井手口陽介が入って、不動のものにしつつある。そうした現在の状況について、遠藤本人はどんな心境でいるのだろうか。

「正直、ボランチじゃなきゃダメとか、そういうこだわりはないね。それは、気持ちが変わってきたというより、自由にやらせてもらっているから。トップ下のプレーで(長谷川健太)監督に言われているのは、攻守の切り替えや、球際で激しくいくとか、ボールを取られたら全力で取り返すとか、当然やらなければいけないことだけ。特にやってはいけないこともないし、ほんと自由。自分たちがどう攻めるかってよりも、どうしたら相手のバランスが崩れるのかな、ということを意識して攻撃している。(トップ下も)楽しいから、そこでもいいかな、という感じ」

 遠藤のポジションは、配置的にはトップ下だが、チームでは自由に動く"フリーマン"的な役割を果たしていた。

「ボランチよりも(ポジションが)5m前に出ているだけだけど、景色が違うし、相手のプレッシャーはかなり厳しい。ただ、前に行けば行くほど、ミスをおかしても許される部分があるので、今は楽しんでやれている。それが、大事でしょ。俺は楽しんでサッカー人生を終わりたいんで、最後は別にボランチじゃなくてもいいと思っている」

 遠藤は現在、36歳。年が明ければ、37歳になる(1980年1月28日生まれ)。年齢的に、体力的な衰えなど、若い頃とは違った面で苦労を感じてもおかしくない。さらに今後、監督のサッカーの志向や若手の台頭によって、ベンチに置かれる機会が増えていくかもしれない。ベテランの生き方を、遠藤はどう捉えているのだろうか。

「(これまでと同様)この年齢になっても、体のケアは特別なことは何もしていない。練習前、ストレッチする時間がちょっと長くなっただけ。基本、ひと晩寝れば、気持ちも、疲れもすっきりするからね。

 まあ、俺らの年齢で大事なことは、変なプライドを持たないこと。『昔はこのプレーができていたのに』って(過去の自分と)比べられたりするけど、それを気にしてもマイナスになるだけ。『あいつ、キレがなくなったな』って言われることもあるけど、そりゃこの年齢になれば、20歳のときとは違うし、キレがなくなるのは仕方がないこと。

 逆に、その当時はできなかったプレーが、今はできることもある。自分の武器を大切にしつつ、まだまだできないことにもトライする。全力でがんばってダメなら、そこは他の選手にカバーしてもらえばいいし、逆に周囲の選手ができないことを自分がやればいい」

『黄金世代』の同期、小笠原満男(鹿島アントラーズ)や、小野伸二(コンサドーレ札幌)、稲本潤一(札幌)らも、まだ現役で奮闘している。それでも"引退"の足音はヒタヒタと近づいているに違いない。その点の見極めについて、遠藤はどう考えているのか。

 例えば、プロ野球のセ・リーグを制した広島カープの黒田博樹投手(41歳)は、今季10勝を挙げて「まだやれる」と惜しまれながら引退した。この引き際は、遠藤の目にどう映ったのだろうか。

「カッコいい、やめ方だよね。アメリカでもやれる状況にありながら帰国して、古巣の広島に戻って、チームを優勝に導いて引退。これって、理想的だよ。やめると決めたときは、きっとやり切った感があったんだと思う。

 俺はどうかなぁ......。周囲に『まだやれるでしょ』って言われたら、『あ、そう』って、そのまま続けるかもしれない。だって、引退する基準がないからね。レギュラーを外されたぐらいじゃ、やめない。外されたら、全力で奪い返しにいくだけだし、その作業が面白いんだよ。でも、ヨウスケ(井手口)から奪い返すとかはないけどね(笑)。自分の中で、やり切った満足感と、『楽しかったなぁ』と思えたら、やめるだろうね。いつになるか、わからんけど」

 そう言って、遠藤は笑った。

 サラリとこういう話ができるのは、まだ体が動くからだろう。たぶん、本人の中には引退の「い」の字もまだないはずだ。

 選手生命を長く保つには、遠藤は"刺激"が重要だという。日本代表でプレーしていた頃は、代表メンバーでいることが刺激そのものだった。今は、長谷川監督から自らに足りないとされている「インテンシティ」や「デュエル」を求められ、それが刺激になっている。

「デュエルは、特別なことじゃないけどね。『球際で戦え』って昔から言われていたし、ザッケローニ監督やアギーレ監督も『戦え』って言っていた。サッカーの試合では、もちろんそれは重要で、必要ではあるけど、俺はボールを持ったときに何をするか、ということを一番に考えている。代表でプレーしていたときも、"強さ"そのものよりも、どういうふうに(相手から)ボールを取るのかを考えていた。言葉に踊らされるんじゃなくて、実際に何をするのかってことのほうが大事。

 ただ、今は1対1の対応や、五分五分のボールのときに強さを発揮する選手が評価されるようになってきている。その点では、うちにもヨウスケやコンちゃん(今野泰幸)とか、自分よりも優れた選手がいるけど、自分も負けないように努力しているよ」

 ところで、ハリルホジッチ監督になってから、遠藤は一度も日本代表に招集されていないが、もしものケースを想定し「自分が戻ったら......」ということを考えて試合を見ていたりするのだろうか。

「そういうふうには見ていないね。試合を見ているときは、『ケイスケ(本田圭佑)、がんばれよ』『ハセ(長谷部誠)、よく声出してんなぁ』とか言って、ごくごく普通に見て応援している。でも、代表入りを諦めたわけじゃない。代表は引退するまでずっと目標だから、リストに入れるように、これからも努力を続けるよ」

 遠藤が代表メンバーのリストに入らないのは、年齢的なものもあるが、ハリルホジッチ監督の求めるプレースタイルではないからだろう。代表のボランチの顔ぶれを見ると、ボールを保持してゲームを作るタイプの選手は少ない。

「代表もそうだけど、今の(日本の)サッカーはボールを持てるボランチよりも、球際に強く、前に行けるボランチが重宝されている。その辺は、自分の課題でもあるんで、(自分も)試合で出せるようにしていく。タイプが違うからといって、(代表入りを)諦めることはない。圧倒的な力をつけて、それを見せつけられれば、俺のスタイルが嫌いな監督でも、一度は試してみようかなって思うはずだからね。(中村)憲剛がリストに入っているけど、彼だって、本来ハリルホジッチ監督が求めているタイプではないでしょ? 調子がいいからリストに入っていると思うから、俺もまだ諦めない」

 W杯アジア最終予選は来年、アウェー戦が3試合もあって、日本代表はますます難しい局面を迎えることになる。そんなとき、必要とされるのは、経験豊富なベテランの力だ。今のチームスタイルでこそ、ひとりで時間を作ることができる、遠藤のプレーを見てみたい気がする。

佐藤 俊●構成 text by Sato Shun