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マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、カーボンナノチューブ(CNT)でできたスタンプと導電性インクを用いて、基板表面に微細なパターンを高速で印刷する技術を開発した。ガラスやフレキシブルシートなどの表面にCNTスタンプを押し付けてパターンを転写するだけで電子デバイスとして機能させることができる。タッチパネルや高解像度ディスプレイの画素制御などに使われる微細なトランジスタも、スタンプ処理によって形成できるようになるという。低コスト化も期待できる。研究成果は、Science系列のオープンアクセス誌「Science Advances」で報告された。

近年、印刷技術によって電子デバイスを簡易に作製するプリンタブルエレクトロニクスが注目されている。インクジェット印刷やスタンプなどを用いて材料表面に電子デバイス機能を持たせる試みはこれまでにもあった。しかし、微細なパターンを制御することは難しく、パターンの境界上でインクがしみになる「コーヒーリング現象」や、印刷の不均一性などによって、電子回路がきちんと動作しないという問題があった。

研究チームは今回、これまでになく微細なパターンを高精細に印刷できるスタンプを開発しようと試みた。導電性ナノ粒子を分散させたインクがスタンプ中を均一に流れ、どのような表面にでも印刷できるようにするためには、スタンプの材質がナノレベルの多孔性を持っている必要がある。そのようなスタンプ材料として最適なのがCNTだった。

密集した多数のCNTをパターン制御しながら成長基板上に垂直配向させることによって、高精細なスタンプを作製した。CNTの束が無数の微細な羽ペンのように働き、そこをインクが伝わることで印刷対象物の表面にパターン転写されるという仕組みである。CNTの表面は薄膜ポリマー層でコーティングすることによって、インクの浸透性を確保し、スタンプした後もCNTが収縮しないようにした。インク溶液中に分散させる導電性粒子には、銀、酸化亜鉛、半導体量子ドットなどを用いた。

研究チームは、CNTスタンプによる印刷に使用できるモーター駆動のローラーを備えた印刷機も開発した。スタンプを取り付けるプラットフォームはバネとつながっており、このバネによって印刷対象表面にスタンプを押し付けるときの力を制御する。商用での連続印刷を見据えた設計であり、実際に毎秒20cmの速度で連続的に印刷可能なことが実証されているという。

論文によると、スタンプ形状はエッジラフネス0.2μm程度と精巧なものであり、印刷されたパターンは5〜50nmの範囲で良好な膜厚均一性が取れている。解像度は既存のフレキソ印刷と比較して少なくとも10倍は高いという。また、印刷後のパターンの導電性をテストした結果、スタンプ処理後に熱処理を加えることによって、高性能な透明電極として使える電気伝導度(107S/mオーダー)が確認されている。

研究チームは、このスタンプ技術をグラフェンなどの二次元材料と一体化することで、電子デバイスやエネルギー変換デバイスの超薄型化を実現することが次の研究課題になるとしている。

(荒井聡)