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ジュニパーネットワークスは12月15日、都内で記者会見を開き、米Juniper Networks 開発・イノベーション(JDI)担当 CTOのキリーティ・コンペラ氏が来日し、「Self-Driving Networks」のビジョンに関するプレゼンテーションを行った。

冒頭、同氏は自動運転車を引き合いに出し「自動車は発明時と比較し、自動化の観点からさまざまなイノベーションが起こり、簡単・安全・便利になったが、これで自動車のイノベーションは終焉を迎えるのだろうか? 近年では自動運転技術が進歩しているが、その一助として米国のDARPA(国防高等研究計画局)開催の完全自律型自動車のグランプリが寄与している。開催年の2004年は完走車はなかったが、2005年に23台のうち5台が完走、2007年には都市部において交通規制に従った大会を開催し、それから3年間で完全自律型の自動車が誕生している状況を鑑みれば、これこそ破壊的な変革・ビジョンなのではないか」と指摘。

一方、ネットワーク業界でも同様のグランプリを開催できるのではないかとも語る。同氏はSelf-Driving Networksのグランプリについて「完全自動型のネットワークの構築がタスクとなり、目標としては検出や設定、監視などをネットワークオペレーターが行う業務をネットワークが行うことだ。これにより、オペレーターがネットワークサービスを考える時間に費やせるほか、ネットワークがより高いレベルのSLA(サービスレベルアグリメント)を満たすことでき、ネットワーク自体が出来事を予測し、主体的に変革・変更ができるようにしたいと考えている。また、ネットワークに対する攻撃やセキュリティ違反を試みた場合、ネットワークが検知し、攻撃に対処することが可能になる」と説く。

そして、Selef-Driving Networkに求められる技術として「テレメトリ、オートメーション、目的の宣言、意思決定、ローカルとグローバルの視点の5つが挙げられる」と同氏は述べた。

テレメトリに関しては「レーザーセンサで周囲360°をスキャンする『LiDAR』により、30m範囲内で何が起こっているかを3Dで情報を提示する。GoogleカーはLiDARを使い、歩行者やほかの車両の情報を取り込んでいる。われわれはこれが重要だと考えているため、ネットワークでテレメトリをどのように活用するかを検討している。ネットワークの情報はコレクターに取り込まれるが、ストリーミング、リアルタイムでの機械への最適化が重要となる。この技術は開発を継続しており、市場に投入している」と同氏はいう。

また、オートメーションと目的の宣誓についてコンペラ氏は「自動車に乗車した場合、どのように目的地を目指すか考えなければならなく、さまざまな選択肢が存在する。ネットワークもさまざまな詳細を決めなければならないが、単純にネットワークにオペレーションを伝えて解決できるのではないかと考えている。自動車と同様に細かい仕様を決定しなければならないが、われわれはWAN SDN(Software Defined Network)『Nothstar』やデータセンターSDN『Contrail』といったソリューションを有している。将来的にはネットワークに対して、オペレーションの指示を伝えるだけで完結できるようにしたい」と展望を語った。

加えて、意思決定に関して「今後取り組むべきものであり、例えばネットワーク上で何かを検知し、変更点などがある場合はルールベースで実施する。その場合はルールが多すぎるため、解決策としてAIを使えば業務がよりスピーディになる。AIは医療分野や金融分野など至る所で活用されており、実際にネットワークはAIの活用については遅れをとっている」と同氏は説明した。

さらに、ローカルとグローバルの視点について同氏は「従来のSDNはすべてを一元化するが、周辺で何が起きているかを把握しておくことと同時に、全体像を把握することが重要だ。また、時間の経過とともに何が起きるているか把握しなければならない」と語気を強めた。

そして、Self-Driving Networkが与えるインパクトとして「AIがネットワークのオペレーション業務を遂行するようになるため、ネットワークに知見を持つ人からサービスデザイナーに、ネットワークに関するノウハウからアルゴリズムの微調整にスキルセットがそれぞれ変化するだろう。また、SLAが自動的に満たされるようになり、ネットワーク自体が適合、調整、予測が可能になるかもしれない。さらに、セキュリティは『良いAI』と『悪いAI』間の戦いになるのではないか」と同氏は想定している。

最後に「われわれはネットワークの経済性を実証しなければならないが、多くのプロバイダーは持続が不可能だという。確かに段階的な改良では目的は達成できないが、われわれのビジョンはネットワークを効率的にすることだ。そのためにはネットワークのグランプリが必要なのではないか」との認識を示した。

○日本では「OpenLabイノベーションセンター」を開設

同日には、ネットワーク自動化技術の学習や検証を行う「OpenLabイノベーションセンター」を日本オフィス内に開設した。同社によると、実施したITとビジネスの意思決定者を対象に実施したグローバル調査(2016年7月実施)において、ITの意思決定者の約半数(45%)が「自社のIT担当者が今から5年後に成功するために必要なスキルを備えていない」と考えているという。

このような状況を踏まえ解説したOpenLabイノベーションセンターは、同社によるグローバル規模のOpenLab拡大の一環であり、日本のITリーダーが必要とするハンズオントレーニングやワークショップなどを提供し、次世代のネットワークイノベーションに対応できるIT担当者を育成する。

具体的には、ネットワークの自動化技術に関心を持つユーザー、パートナー、研究者などを対象に、実践的な教育プログラムやSDN対応のサンドボックス、ネットワーク機能仮想化(NFV)の相互運用テストといった広範なリソースへのアクセス環境を提供する。

同センターから同社のハードウェア/ソフトウェア製品にアクセスすることで、実際のネットワーク環境やシナリオのシミュレーションを行うことができ、まずは2017年1月から同社のSDNコントローラの1つであるContrailのトレーニングセッションの開始を予定している。

また、2012年に開設した同社初OpenLabイノベーションセンターでは、これまでネットワーク自動化技術とプログラマビリティに関するトレーニングセッションや、ユーザーとの共同開催によるSDNハッカソンを実施しており、日本においても同様のプログラムを通じて大学生と同社の技術者やユーザーが協力し、最新のSDNソリューション、自動化ソリューションを駆使して共同作業で実際の問題の解決策を見出す。

さらに、2017年春にはネットワーク自動化技術の啓蒙を目的とするハッカソンイベントを開催。SDN技術がネットワークのアーキテクチャやサービスに対して与えるインパクトを学生に紹介するほか、それを実現するための実践的な技術の習得の場を提供することを目的としている。

ハッカソンへの参加を通じて、SDNネットワーク自動化ソフトウェアプロジェクトを経験し、独自のアプリケーション・ソリューションを構築することができるという。こうしたハッカソンイベントやハンズオンのトレーニングなど、さまざまな教育プログラムを定期的に開催することで、ネットワークインテリジェンス、自動化機能を活かしたソリューションの開発、テスト、検証を推進していく方針だ。

ジュ二パーネットワークス 技術統括本部 統括本部長の加藤浩明氏は「各企業はネットワークに新しい変革が必要だと感じているが、変革が自社にとっての成長の機会になるのか、脅威になるのか分からないといった事情もあり、新しいネットワークに移行できない状況がある。顧客調査をした結果、経営者の半数は業界を変える製品やサービスが投入されると考えているが、そのような新しい製品やサービス、技術が投入されたときに自社製品が同水準、もしくは競合他社に先んじていく上で、ITのプラットフォームが重要だと考えている」と述べた。

その上で同氏は「企業では、ネットワークやITを自動化していくことが競争力の維持には必要だと想定しており、ここ数年で登場したSDNやNFVなどの技術でネットワークの自動化に取り組み、結果的にはセキュリティ、コンプライアンスの強化にもつながっている。しかし、経営者は自社が今後のネットワークの変革に追いついていくことが難しいのではないかと危惧している。そこで、われわれはOpenLabイノベーションセンターを開設し、ユーザーやパートナー、研究者などを対象に将来のネットワークの自動化について多様な検証を行うことができる」と今後の同センターが活用されることに期待を寄せた。

(岩井 健太)