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個人的に今年は「買って良かったもの」が豊作な年だった。その中からベストオブ〜を選ぶとしたらBoseのノイズキャンセリング機能付きのワイヤレスヘッドフォン「QuietControl 30」(QC30)かもしれない。「かもしれない」というのは、QC30を気に入っているかと聞かれたら、デザインとか満足していないところも色々あって答えに迷うからだ。でも、集中したい時にノイズキャンセリング・ヘッドフォンを装着する私のニーズは存分に満たしてくれる。実際、毎日のように使っているから、使用時間、プロダクティビティや趣味への貢献度で考えたら、やっぱりQC30が今年の一番なのだ。

ノイズキャンセリング・ヘッドフォンはこれまでBoseのオーバーヘッド型の有線ヘッドフォン「QuietComfort 25」を使っていたが、メガネをかけるのでインイヤータイプが欲しくてQC30を購入した。飛行機内とかで騒音を消して寝たい時とか、オーバーヘッド型だと顔を横に向けられなくて窮屈というのもインイヤー型にした理由の一つである。そうした点でQC30には満足しているが、実際に使い始めてみて最も気に入っているポイントは「周りの音が良く聞こえる」こと。アクティブノイズキャンセリングの効きがスゴいから周りの音が良く聞こえる。どういうことかというと、下の画像はノイズキャンセリングの効き具合を調節する「Bose Connect」というアプリのスクリーンショットである。

QC30はノイズキャンセリング効果を12段階で調節できる。だから、QuietComfortではなくQuiet”Control”である。ノイズキャンセリング効果はさすがBoseで、右に回して最大値の「12」にすると外部の騒音のほとんどがカットされた静寂な世界が訪れる。

では、左に最小値まで回したらどうなるか? 私はノイズキャンセリングがオフ状態になると思っていた。ところが、そうではなかった。「4」ぐらいから周りの音が普通に聞こえ始め、「1」だったらはっきりと聞き取れる。つまり、ヘッドフォンのマイクが拾った音がヘッドフォンで出力されるのだ。最初はノイズキャンセリング・ヘッドフォンに「それ、いるかなぁ」と思った。ノイズキャンセリング・ヘッドフォンは密閉性が高く、ノイズキャンセリングをオフにしていても耳せんをしたような状態になってしまうものの、周りの音を聞きたければヘッドフォンを外せば良い。ところが、使ってみたら予想外の効果だった。QC30は周りの音を通す最小値でもノイズコントロール効果がゼロになるわけではなく、人の声など聞こえるべき音がよく聞こえるように処理されているので聞き取りやすいのだ。「1」〜「3」ぐらいで周りの音がよく聞こえ始めて、「1」なら実際よりも少し大きな音で聞こえるぐらいだ。混雑したカフェで誰かと会話をする時、裸耳で会話するよりも、QC30を装着してきちんとノイズコントロールした方が雑音に埋もれそうな人の声が聞き取りやすい。

携帯電話やPC、テレビなどから出力される音を楽しむだけではなく、周りにある音もよく聞こえるようにするノイズコントロール……面白い体験だなと思っていたら、Boseが「Hear Better」(より良く聞く)というアクティブノイズキャンセリングを備えたヘッドフォンの新しい使い方を提案し始めた。

「Hear Better」は「Bose Hearphones」というQC30と同じデザインのリスニングデバイスと「Bose Hear」というアプリを使う。聞き取りにくい音を増幅し、邪魔な雑音を抑えて、聞きたい音を聞き取りやすくする。音量や高音域の調整、マイクの指向性のコントロールの他、「会話に集中」「グループでの会話」「音楽」「テレビ」といったプリセットモードが用意されている。たとえば、カフェなどでのミーティングで相手の声をよく聞き取るためにHearphonesを装着する。がやがやとしたグループでのミーティングで特に意見を聞きたい人の声を拾う、コンサートで演奏をより良く聴く、家族と見ているテレビの音を自分だけもっと大きな音で聞く等々。補聴器を使うほどではないけど、以前ほどクリアに音楽などを楽しめなくなった人たちのサポートも考えられる。Hacker Newsのフォーラムでは、Hearphonesに関して、騒がしい環境で話し声など特定の音に集中できずに会話に参加できなくなるという症状について議論が広がっている。

会話を浮かび上がらせるノイズキャンセリングの使い方は、すでにスマートフォンなどでは珍しくないが、普段の生活の中でも積極的に使いたいという人は少ないだろう。私もQC30を使っていなかったら「Hear Better」に興味を持たなかったと思う。でも今は、メガネをかけるようにヘッドフォンを装着してノイズをコントロールし、いつでも音声デジタルアシスタントを利用できるような未来が起こり得るように思っている。たとえば 現実とデジタルの世界を融合させるAR(拡張現実)にしても、今はまだ音がそれほど注目されていないが、QC30のようなヘッドセットなら周囲の音と拡張された音が本当に共存しているように融合できるだろう。 ヘッドセットもAppleのAirPodsぐらいのサイズだったら装着していても気にならない。

先週Kickstarterが公開した「2017年のテクノロジー予測」でも、新たなトレンドとして真っ先に「Next-level listening」が挙げられていた。iPhone 7シリーズからヘッドフォンジャックが省略されて、少なからず不満の声が上がっているが、ワイヤレスの普及をきっかけにリスニングデバイスは進化を一気に加速させ始めた。聞くことの新たな体験の広がりが期待できる。

(Yoichi Yamashita)