いよいよ最終話が配信された「代償」について後藤庸介監督が語る/(C)2016「代償」製作委員会

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毎週金曜にHuluにて日米同時配信中の、小栗旬主演・Huluオリジナルドラマ「代償」。

【写真を見る】小栗旬はナイフをもらっても後ずさる弱々しい男を好演!/(C)2016「代償」製作委員会

ザテレビジョンでは、本作に出演するメインキャストおよび監督にリレー形式でインタビューを行ってきた。

最終回は本作のメイン監督を務めた後藤庸介氏に、この作品を映像化しようと思ったきっかけや経緯、キャスティングについて、そして監督目線での見どころを聞いた。

――まずは本作を映像化しようと思われたきっかけから教えてください。

2年半前に原作が刊行されて、ちょうどその時期に平置きしてあったものをたまたま本屋さんで手に取りました。こういう仕事をしているので、普段から本屋にふらっと行って原作になるようなものはないかなと、意図的にブラブラするんですけど、当時はたくさん企画を立てている時期でもあったので、目が肥えてきていたのかもしれません。

それもあって、めったに本を手に取るってとこまではいかないんですけど、「代償」はパッと見た瞬間に、原作になりそうだなと思って手に取ったのを覚えています。帯巻だけで中身は分からないんですけど、法廷モノだということと、単純に敵対する2人が、弁護士と被告というのが面白そうだし、キャッチーだなと思ったんです。

装丁にその世界観が出ていてビビッときたというか、ペラッと見て、あっ!これ!面白そうだなと思って、1日で読み終えた記憶があります。すぐにKADOKAWAさんに連絡させてもらって、「これドラマになると思うんですけど、どうですか?」って担当の方にお話したのがきっかけです。

――ビビビっときたんですね!

はい。それに法廷の中であっと驚く逆転劇が起こるというのが面白くて、追い詰められた弁護士が突然すごい才能を発揮して、いい証人の力を得て勝つというありがちな逆転劇じゃなくて、1回逆転したと思ったらもう一段階あって勝つというのが、すごいなあと。

そういう仕組みもキャッチーで、法廷シーンだけでもう1本ドラマができそうだなってところに加えてキャラクターの肉付けがしっかりしてあって、濃密でいろいろな要素が詰まった作品です。

――メインキャストでサイコパスを描いているのも斬新ですね。

高橋努さんが演じた達也のサイコパスというのも、この何年かでお茶の間でも浸透してきた存在なんですけど、これはちょっと新しくて、達也はいわゆる猟奇殺人犯ではないんですよ。普通の顔をして、世の中にすんなり溶け込み、むしろ少し人望がある人として生きているんだけど、いわゆる感情が全くない。

加えて計算高くて、ものすごくズル賢い教唆犯、というキャラクターを徹底的に描いた作品はなかなかないなあと思って。

ただ、これは地上波ではたぶんやれないし、2時間とかの規模で描くものでもないなと。少年時代が占める割合の多さの中で、短い尺のドラマにしたら、絶対少年時代は回想というか、フラッシュバック的に描かれるようになってしまうので、それじゃ絶対つまらないなと思ったんです。

KADOKAWAさんを口説き落とすために「2時間ドラマとかに(権利を)渡しちゃ駄目ですよ!」などと、ちょっと強気に出ました(笑)。絶対に(映像化の)争奪戦になると思っていていましたし、実際に「他からも(オファーが)きているんだよ」って言われたので。

「地上波でも駄目だし、短い尺でやっても駄目ですよ」って言い続けていたら、「じゃあ、あなたはどこの枠を出せるんですか?」って言われて…。

そんなやりとりをしていたら、上司に「Huluさんからオリジナルドラマを作るに当たって、何か企画ないか?って言われているんだけど」と話が来て、「あります!あります!」ってすぐさま返事をしました。

それも話数は決まっていないけど、ある程度の尺をもって描けるということだったので、グッドタイミングでしたね。そこからはトントン拍子でした。

――それで映像化されて、原作と違って現代と過去が交互に入り組んだストーリー展開になっていますよね。

そうですね。その方が見やすいかなというのもありましたし、せっかくHuluさんでやるのであれば、とにかくいろんなキャラクターを立てていって、2・3本は必ず同時並行でドラマを進めていこうと。

最初は難しいかもしれませんが、ハマりだすと話自体が交わらなくても、キャラクターを好きになっているので、全然違うサブキャラの話で一話が作られていても満足しちゃうというか。他のキャラクターを育てながら、飽きさせないいろんな事件が起こりながら、っていう構成は日本ではありそうでないんですよね。

当たり前ですけど、主人公がいたら家があって、主人公が働いている場所があって、セットを立てるってなったら、そこで半分話を付けなきゃいけませんってなってきちゃう。そうしたらおのずと主人公の背中をずっと追い掛けていく話になるんですよ。

頑張って違うものを作ろうとしても、結果似たようになってきちゃうかなと。だからとにかくちょっと難しくてもいいから、これは何なの?って興味が先に進む形で話が並行して続くようなものができたらいいな、と考えているうちに完成しました。少年期も見せつつ、達也や道子(片岡礼子)たちのシーンも強く見せつつ。

――キャスティングに関しては最初から決めていましたか?

キャスティングに関しては、圭輔もそうですけど達也というのは一体どんなキャラクターなんだっていうのが最初に悩みました。今でもちゃん理解しているのかっていうと分からないので(笑)。

いろいろ考えたんですけど、1つ確実なのが、ニタ〜って笑うとか、何かすごく怖い事をするっていうのは、一切やめないと駄目なんじゃないかと。ちょっとでもそれが見えちゃうと、もっとガンガン目に見える形でやればいいじゃん!ってなるので。

そうするとただの猟奇殺人犯みたいになっちゃいますし、何もせず、ただニコってしているだけなのに怖いキャラクターを作らないとと思って、そういうことを全くしない爽やかなイケメンにしたらどうかな?とも思っていました(笑)。

でも、それはそれで今までもあったし、意外とすぐ飽きちゃうかなって。それにあまり怖くないかもしれないってなっったんですよね。

それだったら、努さんみたいにどう見ても“何かありそう”な人に、それを隠して爽やかな芝居をしてもらう方が違和感もあるじゃないですか。見ていて落ち着かないというか、予定調和じゃない感じがいいなと思ったんですよね。

この人はいつ怖い顔をするんだろって、ずっとざわざわしながら見られたとらいいなと。でも、ずっと爽やかな芝居をしているだけだったら、めちゃめちゃ怖いかなと。

――なるほど、ギャップですね。

ええ。そうするんだったら、圭輔は主人公であり、一応今作のヒーローなので、格好良さもありつつ、応援したくなる人がいいなと思いました。でも、新しいドラマだなって思うのが、主人公なのにあまり活躍しないんですよね(笑)。

一見活躍しそうになるんですけど、全部負けて帰ってくる感じが、弱々しいというか人間らしくて。そういうキャラはどういう人がやると作品としても、キャラクターとしてもいいのかなってなったときに、小栗さんが浮かびました。

小栗さんはすごいなと思ったのが、いわゆるヒーロー性の部分はちゃんとあるんだけど、それでいて繊細なキャラクターっていうのがうまい! 

たぶんこんなにうまい人はいないですよ! 声質とかもすごく格好いいし、実は本人に言っていないんですけど、個人的にめちゃくちゃ好きなんですよ!(笑) キャスティングとは全然関係ない話ですし、恥ずかしいんで本人にも最後まで言わなかったんですが…。

――男がほれる格好良さがありますよね。

そうそう。小栗さんって格好いいんだけど、男子にも女子にも「かわいいな、放っておけないな」って思わせるところもある。それこそ変人っぽい役もやっているけど、家庭的な新米パパの役とかもハマるじゃないですか。

物腰や声質とか、その辺のかわいらしさがあって、美し過ぎるイケメンの人とかマッチョな男らしさじゃない格好良さと言うんですかね。それがこの圭輔というキャラには合うなと思っていて。

ものすごく弱いし、繊細だし、くよくよしているし、優柔不断なんですけど応援したくなる。小栗さんはそのバランスが最高だなって思っています。

それにいい意味で驚いたのが、第6話は一応最後に勝つ話なので、ヒーローとして圭輔がガツンとやるっていう意識でこちらもいたんですけど、最後の対決で達也が「使えよ」ってポーンとナイフを放り投げたんですよ。

そうしたら小栗さんが、「ふわあああ!」って逃げ腰の芝居をしていて、最後までそうなんだ!ってビックリしました! 想像以上に弱い人というか、すごくリアルな人間だなあって(笑)。

普通のヒーローならナイフが転がってきても、一目見て「だから何だよ!」って食ってかかる感じだと思うんですけど、後ずさったんですよね。それを見て「すげー!」って思って、すぐに小栗さんの所に言って「僕びっくりしました。圭輔はここまで弱いんですね」って言っちゃいました。

「本当の圭輔を発見しました」って言ったら、小栗さんも「いや、やっぱりこのキャラクターは最後までこうなんじゃないかなと思って」って仰られて。

ドラマって主人公が一番変わらないといけないっていう主文律があって、もちろんそれはそれで正しいし、実際このドラマでも変わってはいるんですが、本質的には変わらないのが人間じゃないですか。そういう意味ではものすごくリアルな人間を描いていますよね。

人間誰もがスーパーヒーローになるわけじゃないってところで、すごくリアルなドラマなんだなって思いました。小栗さんに関しては、最後まで予定調和じゃない、この人から何が出るんだろうって感じはかなりありましたね。

――撮影されてきて、このキャストはハマったなっていうのは?

あまりドラマっぽい人は嫌だったんですよ。キャラクターさえそこにいれば、あまり予定調和じゃない感じのお芝居をしてくれる人が良くて、“記号的”なキャラクターにならなければいいなと。存在感というか、この人は何をしでかすんだろうって人に来てほしかったので、そういう意味ではみんなバッチリ決まりました。

よくも悪くも曲者ぞろいな感じがすごくしていて、例えば普通にニッコリ笑ったり、分かりやすいト書きをしていても、いい意味でも全くそう見えないお芝居をされるんですよ! 不安をあおる感じで、次はどうなるんだろうって興味につながるような感じのキャスティングになっているんじゃないかなあって気がしています。

――そう聞くと、そういう目で見ちゃいそうですね(笑)。

みんな信じられないんですよ! 役者陣が話していたらしいんですが、「この作品で一番悪いヤツは誰なんだろう?」って。そのときに、圭輔の優柔不断さとか、圭輔が表面的にはいい顔をしようとするところとかが悪なんじゃないかって話が出たらしくて、まさにその通りだなと。

圭輔は人間の善と悪というか、強さと弱さを兼ね備えているところもあって、とても人間らしい。優しさとかプライドとか弱い気持ちとか、いろんなものを持っているがゆえに日常生活で足を引っ張られていくんです。一方、それがない達也は自分が好きなことだけを貫き、それが周りからは魅力的に見えたり、付いていきたくなったりする。

他の人たちは割と人間らしいキャラなんですけど、この話で達也に関わっていく中で、どんどん自分の中で強い自我のようなものが育っていって、より素直に行動するようになるんです。だから実はすごく悪いヤツとか、心の底から嫌いなキャラクターはたぶんいないんですよね。

もちろん達也や道子はムカツクって思うんでしょうけど、道子役の片岡さんも徹底して「私は愛の人だから」って言い続けているんで、最終的には誰も悪い人に見えないんじゃないかな。

――今後こういう分野を撮りたい!という目標はありますか?

これはサスペンスでフィクションで、ホラーっぽい要素も入っていると思うんですけど、そういう作品こそ海外に向けて作らないといけない時代だと思うんです。日本の強みっていくつかあると思うんですけど、個人的には結構ホラーもそうですし、SFの分野に関して日本の知識というか想像力は、世界レベルだと思うんですよ。

でも、お金がすごくかかるので難しいんでしょうけど、ホラーとかサスペンス、SFといった分野で世界に打って出たいなと。

今回は凝り過ぎちゃって、6話に収めるのもすごく難しくて、説明不足になる部分もあると思うし、逆にこの内容で20話作れって言われても難しかったでしょうけど、その分ギュッと凝縮しました。

新しい時代の1歩目、半歩目でもいいので、そうなったらいいなあ。いい意味で「変な作品」と言われたらうれしいです。最後まで凝りに凝ったつくりにしているので、最終回までじっくりとお楽しみください。