リピーターになってもらうカギは「大満足」を超える「感動」です(写真はイメージ)


 前回(「リピーター続出のキッザニアがあえてやらないこと」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48383)に引き続き、第1回日本サービス大賞の優秀賞を受賞したキッザニアのサービスの秘密を見ていきます。

 キッザニアは来場者の70%がリピーターで、残る30%の新規顧客も多くが利用者からの紹介やクチコミがきっかけでやって来ます。なぜキッザニアのサービスはそれほど来場者を満足させ、リピーターを生み出すのでしょうか。

 前回は、キッザニアが「エデュテインメント」(娯楽であると同時に教育としても機能するエンターテインメント)というコンセプトを実現するために「あえてやらないこと」について触れました。今回は、そのコンセプトを実現するために、サービスやスタッフをどう評価し、育成しているのかについて着目してみたいと思います。

最高スコアは「大満足」ではなく「感動した」

 キッザニアでは多くの企業と同じようにお客様アンケートに取り組んでいます。特徴的なのは、その評価指標です。

 お客様満足の項目の最高スコアは「大満足」ではなく、「感動した」としているのです。

 キッザニアでは、この最高評価の「感動した」と答えてくださるお客様をどれだけ増やせるかに照準を絞って、熱心にサービスを磨き上げています。これは極めて重要な観点です。

 他の企業でも顧客満足度調査は行っています。長年CS活動を進めてきて、顧客満足度の数値が向上してきている企業も多いことと思います。しかし最近、「顧客満足度が高まるとリピートが増えると思っていたのに、CSが向上してもリピートが増えなくて困っています」という声が聞かれます。

 そんな企業が顧客満足度をどう評価しているかというと、「平均値」で評価したり、「やや満足」と「大満足」を合算して評価していることが多いようです。

 これの何が問題なのでしょうか。

 実は、顧客満足度とリピートの相関関係を調べてみると、リピートに繋がる満足度は「大満足」のみなのです。調査では、「やや満足」の実に97%がリピートしない可能性があると答えています。つまり、「大満足」と「やや満足」とを合算した数字や、満足度の平均値が向上したとしても、リピートが増えるとは限らないのです。着目すべきは最高評価の「大満足」なのです。

(詳細は当連載の「その顧客満足度調査でリピートオーダーは増えますか?(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41125)」を参照ください)

感情的大満足をしたお客様がリピーターになる

 キッザニアでは「大満足」のさらに上の「感動した」という評価に着目しています。これは何を意味するのでしょうか。

 リピートに繋がる「大満足」をしたお客様のコメントを分析してみると、2種類の理由があることが分かります。1つは、「このコストパフォーマンスなら納得です」というような“論理的”な理由です。そして、もう1つは「すごく助かりました」「心が温まりました」という“感情的”な理由です。

 大満足をこの論理的大満足と感情的大満足に分けて分析してみると、論理的大満足のお客様は、実は「やや満足」のお客様よりもリピートする可能性が低いということが分かっています。つまり、高い確率でリピートしてくれるのは、感情的大満足をしたお客様だけなのです。

 こうしてCSとリピートの関係性をロジカルに理解してみると、キッザニアが「感動した」に照準を絞ってサービスを磨いている理由がよく分かります。

スタッフの中からスターを生み出す

 さて、いくら魅力的なサービスを設計しても、スタッフが育たなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。サービスビジネスにおいて、人材の育成や評価は欠かせません。

 キッザニアのサービスを支えるのは、「スーパーバイザー」と呼ばれるサービススタッフです。キッザニアでは、このスタッフの教育の仕組みを日本で独自に考えており、7段階のランク評価と教育体系を整備しています。

 この中で、最高ランクのスタッフの中から、全スタッフのロールモデルとなる「プレミアムスーパーバイザー」を半年に1回選出しています。プレミアムスーパーバイザーは、サービスの現場だけでなく、会社の顔としての対外的な対応まで担います。

 このように、スタッフの中からスターを生み出すことで「自分もいつかはあんな風になりたい」という目標を持てるようにしています。

 なお、このロールモデルスタッフになるためには、お手本としての行動ができるだけでなく、他者を育成できることも重視されます。そうすることで、スタッフ同士が支え合い、成長し合えるように工夫しているのです。

ついつい失点重視型になっていませんか

 以上のように、キッザニアのサービスから優れたサービスのポイントを紐解いてみると、CS向上の方向性が明らかになります。それは、徹底的に“得点型”に振り切ることです。

 サービスのマネジメントの立場に立つと、ついつい「いかに失点をなくすか」という方向にばかり着目してしまいます。お客様からの不満やクレームをいかに減らせるか、サービススタッフのミスや無礼をいかに減らせるか、ばかりに目が向いてしまうのです。

 もちろん失点をなくすことは大切ですが、「失点しないサービス」でお客様に選ばれる時代ではなくなりました。これからは、「得点をいかに増やせるか」という方向でサービスを磨き上げた企業が選ばれる──。そんな時代になったのです。

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筆者:松井 拓己