「Thinkstock」より

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●東京都区部では平均年収の10倍を超える

 マンション価格が上がって高くなりすぎると、当然のことながら売れ行きにブレーキがかかります。この1年ほどの首都圏の新築マンション市場動向がそれをはっきりと物語っています。このところの契約率は好不調の目安といわれる70%を切る月が多くなっているのです。

 2015年の平均価格を都県別にみると、東京都区部は6732万円、神奈川県4953万円、埼玉県4146万円、千葉県3910万円でした。

 一方、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、15年の東京都の平均年収は約624万円、神奈川県は約544万円、埼玉県は約477万円、千葉県約488万円ですから、東京都区部だと年収の10.8倍、神奈川県9.1倍、埼玉県は8.7倍、千葉県は8.0倍です。これでは、平均的な会社員ではとても手が出ません。売れなくなって当然でしょう。

●先行き見通しが明るければ売れるが

 それでも、経済の先行き見通しが明るく、5年後、10年後には収入が増えて住宅ローン返済もラクになるといった自信を持つことができれば、苦労してでもマンションを手に入れようと思うものです。

 でも、残念ながら今はそんな情勢にはありません。収入が上がるどころか、どうかすると減ってしまう不安が強いですし、その一方で子どもの教育費などは安くなりません。むしろ、少しでもいい教育を受けさせて、いい大学、いい企業に入れるためにかかる費用は膨らむばかりです。

 これでは、ますますマンションは売れなくなりますから、不動産会社としてはなんとか対策を練って、少しでも売れるようにしなければなりません。

●売り上げ確保のためにできることは限られている

 高すぎるから売れない――であれば価格を下げるのがもっとも確実な方法ですが、現在のように地価が上がり、建築費も高止まりしている状態では下げられる要素は限られています。住宅の性能を落とすわけにはいかないので、選択肢としては企業努力による経費の削減、そして専有面積の圧縮といった策に限定されます。

 企業努力による経費の削減は、バブル崩壊後の多くの企業が徹底しており、これ以上に絞れないところまできています。まして、景気をよくするためにも賃金の引き上げの必要性が叫ばれており、人手不足も深刻ですから人件費を下げるわけにはいきません。となると、残る選択肢は専有面積の圧縮しかありません。

●専有面積の圧縮が始まっている

 実のところ、その専有面積の圧縮がすでに始まっているのです。

 図表1をご覧ください。これは首都圏新築マンションの平均価格と平均専有面積の推移を示したグラフです。ミニバブルといわれた07年、08年に価格が上昇、グロス価格を抑制するために専有面積は小さくなりました。その後は、横ばい期間に入ったのですが、この2〜3年の価格上昇によって、再び専有面積の圧縮傾向が始まっています。
 
 その結果、最近ではもっとも専有面積が広かった02年の平均が78.06平方メートルだったのに対して、15年には70.80平方メートルまで縮小しています。16年にはその傾向が加速、1〜9月の平均は69.99平方メートルと、ついに70平方メートルを切っているのです。0212年からの14年間で8平方メートル以上狭くなった計算です。

●3LDKなら80平方メートル以上はほしいところ

 ファミリータイプの3LDKのマンションといえば、70平方メートル台が常識で、できれば80平方メートル程度ほしいところです。事実、マンションの価格が低下していた2000年代初頭には80平方メートル台のゆとりある3LDKが増えて、平均でも80平方メートルに近づきました。

 それが、今では再び平均で70平方メートルを切っているのです。最近は家族数の減少によって、新築物件に占める3LDKの割合は少なくなっていますが、それでも郊外部などではやはり3LDKが大きな勢力を占めていることは変わりません。

 にもかかわらず、今後は60平方メートル台の3LDKが増えることになるでしょう。価格を抑えるためにはある程度仕方のないこととはいえ、そんな物件はお勧めできません。

●将来の資産価値面でも大きなマイナスに

 なぜ、お勧めできないのか。ひとつは、何より使い勝手の悪さです。
 
 70平方メートル以下の3LDKだとリビングや居室の面積が小さくなり、たいへん使い勝手が悪くなります。5畳以下の居室などが含まれ、実質的には居室として使い切れずに、納戸のようになってしまうケースが少なくないのです。間取りプラン上は3LDKであっても、実質的には2LDKとしてしか使えません。

 いまひとつが将来の資産価値の低下です。そうした使い勝手の悪いマンションは、中古住宅としての査定時の評価が低くならざるを得ません。

●マンションは一戸建てよりも価格が下がりやすい

 図表2をご覧ください。マンションと一戸建てを比べると、中古市場での成約価格をみると、一戸建てに比べてマンションのほうが、格段に価格が下がりやすいのです。築浅時には平均4739万円のマンションが、築21年以上で1729万円ですから2分の1以下、築31年以上では平均1572万円ですから、3分の1以下ということです。
 
 これが平均値ですから、専有面積が狭くて使い勝手の悪いマンションだと、もっと下がる可能性が高いてしょう。それこそ4分1、5分の1といったことがあるかもしれません。そんな物件を選んでしまっては将来、たいへん後悔することになります。

●バブル期には50平方メートル台の3LDKも

 こうした専有面積の圧縮の動きは、今に始まったことではありません。1990年前後のバブル期には、もっと極端な専有面積圧縮が行われました。

 バブル期には大手不動産会社でも60平方メートル台の3LDKが当たり前でした。ひどいケースでは50平方メートル台の3LDKが売り出されたことがあります。それも、誰もが知っている大手不動産会社がそんな物件を売り出したのですから、我々も唖然としたものです。

●中古マンションの成約物件の面積も縮小傾向

 そうした事情もあって、中古住宅市場で取引される中古マンションの専有面積は新築に比べるとかなり狭くなっています。図表3にあるように、おおむね60平方メートル台の前半です。建築後の経過年数の平均が20年以上ですから、バブル期などの60平方メートル台の3LDKなどが中心となっているわけです。
 
 それもここ2年、3年は中古価格の上昇によって、広めの中古マンションを手に入れることができずに、多少狭くてもガマンせざるを得ない人が増えているのでしょうか、実際に売買が成立した成約物件の専有面積は新築同様に縮小傾向にあります。

●間取り変更できるかどうかを確認する

 そうした専有面積の狭い物件でも、汎用性の高いマンションならなんとかなります。たとえば、専有面積の狭い3LDKマンションであっても、将来的に間仕切り壁を撤去して、2LDKや1LDKなどに変更できれば、使い勝手の悪さをカバーできます。間取り変更によって、資産価値も高まる可能性もあります。

 ただし、それには数百万円以上のリフォーム費用がかかるでしょうから、狭い3LDKを買うときには、安さだけに目を奪われるのではなく、そうした点まで含めて判断するようにしていただきたいところです。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)