小池百合子東京都知事(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

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「笑ってんじゃない!」「説明になっていない!」「答弁漏れだ!」――。

 小池百合子・東京都知事に激しいヤジが飛んだのは、12月7日の東京都議会本会議、自民党の崎山知尚議員への答弁でのことだった。その様子はテレビでもこぞって取り上げられ、たとえば11日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)では、お笑いタレントの松本人志(ダウンタウン)が「都議会のヤジを見ていて、あの人たちにも奥さんや子供さんがいて、あれを見て、パパ格好良い、パパ頑張れと思うかな? 恥ずかしい」と酷評。都議会議員のマナーの悪さが波紋を呼ぶ事態となっている。

 自民党都議によるヤジといえば、思い出すのは2年前。2014年6月18日の東京都議会本会議で、みんなの党Tokyoの塩村文夏都議が女性の妊娠・出産に関する東京都の支援策について質問していた時だ。

「自分が早く結婚したらいいじゃないか!」
「産めないのか?」

 明らかにセクシャルハラスメントと受け取れるヤジが飛んだとして、国内のメディアだけでなく、BBC、CNN、ウォール・ストリート・ジャーナル、ロイター通信などでも性差別発言として取り上げられた。

 ヤジは自民党議員席から聞こえたとされたが、当初、都議会自民党は発言者の特定には動かなかった。だが、太田昭宏・国土交通大臣、田村憲久・厚生労働大臣、石破茂・自由民主党幹事長、野田聖子・自民党総務会長(いずれも当時)など永田町界隈からも声が上がるなど、批判の渦は広がった。

 そしてヤジから5日後の6月23日、前者については都議会自民党政調会長代行の鈴木章浩都議が、自分が飛ばしたヤジであることを認め謝罪した。後者については、誰がしたものか、ヤジがあったのかどうかも曖昧なままだった。

 セクハラヤジを認めたことで、鈴木都議は都議会自民党を離脱し、新会派「都議会再生」を結成する。だが 15年7月1日、会派を解消し都議会自民党に復帰した。ちなみに鈴木都議は、都議会自民党を離脱した際にも自民党からは離党しておらず、自民党員のままであった。現在の都議会での役職は都議会外郭環状整備促進委員会副会長、都議会自民党のなかでは建築・設備推進政策研究会幹事長を務めている。

●都議会自民党の反論

 こうした流れを振り返りながら、今回のヤジ騒動を見てみると、自民党都議はヤジについて反省していないのではないか、とも見受けられる。東京都議会自民党政調会事務局に話を聞いた。

「先日のは知事の答弁に対するヤジでございまして、2年前のはですね、人格を否定するようなヤジなんですね」

 セクハラヤジとは違うことを強調する。

「自民党が一方的にヤジを飛ばして知事をいじめているという報道が、特にワイドショーなどではございましたが、それまでの経緯があるんです」

 経緯とは、どういうものだったのか。

「これまでは知事側と議会側では、何を質問するのか、それに対して知事がどう答えるか、答弁の調整をしていたのです。9月の最初の議会の時に、『事前の調整はしない』と、知事のほうから申し出がありました。こちらから質問項目を出したにもかかわらず、それに対する回答は一切出てこなかったのです。これからはまったく答弁調整やらずにやるんですねと、知事がそういうご決意なら、ということで、今回、自民党からは項目も伝えずに、当日質問をして返してくれるのだろうなと思ったんです。ところが答弁が順番通りに出てこないとか、答弁を飛ばすとか、十分な答弁ができないとか、そういうことでヤジが出たと思います」

 当初、小池知事が答弁できたのは、28項目のうち9項目だけだった。

「お答えいただいてないところ、不十分なところについてはもう一度お答えくださいということで、自民党が再質問させていただきました。休憩が入って知事のほうが整理されて、お答えになったということですね。ただその中身は、たとえば『大きな黒い頭のネズミがいっぱいいるとわかった』という知事の発言に『誰のことか明確にお答えください』と質問したのに、『ご想像にお任せします』とか、普通は議会での知事答弁ではそういうお答えはないんですよ。その辺で不誠実、不確実な答弁をされたということで、ヤジが出たというところもございました」

 ぶっつけ本番できちんと答えられないなら、事前調整して知事の意思が都民に伝わるようにするほうが、小池知事の掲げる「都民ファースト」にかなっているという理屈も、見方によっては成り立つかもしれない。だが、ヤジという手法に走ったことで、有権者の都議会自民党に対する印象は悪くなったことは確かだろう。

●小池知事と都議会自民党の対立鮮明

 いずれにせよ、今回の“ヤジ騒動で、小池知事に対する都議会自民党の対立姿勢が鮮明となったが、その背景について、ジャーナリストの朝霞唯夫氏はこう解説する。

「自民党東京都連の下村博文会長は、党の意向に背いて先の都知事選に出馬した小池氏の足元を揺るがせるため、応援していた7人の区議、いわゆる“7人の侍”に『身上書』提出を求めていました。処分の軽減を図るという名目でしたが、一枚岩でない7人に対し“分断作戦”に打って出たのです。しかし、下村氏らの予想に反し、7人は身上書の提出を拒否。この分断作戦失敗により、ターゲットを小池知事に絞らざるを得なくなったのです。しかも、小池知事は、聖域とされていた、これまで新年度予算編成の際に都議会が持っていた200億円分の政党復活予算を廃止する方針を打ち出しました。さらに小池知事は10月、新党結成にも発展しかねない大規模な政治塾『希望の塾』を立ち上げました。

 そうした状況のなか、このまま小池知事の言いなりで物事が進んだら、来年の都議選で自民党は勝ち目がなくなる。自民党都議のなかには、来年は離党して無所属で戦うことを考えている者もいると聞いています。そういった都議会自民党の“お家事情”もあり、引き締めの意味合いもある。しかし、世論を今まで以上に敵に回す危険性もある両刃の剣です。それを承知の上ですから、都議会での対決姿勢は都議会自民党の“背水の陣”といえるでしょう」

 小池知事と都議会自民党の攻防は、どちらに軍配が上がるのだろうか。
(文=深笛義也/ライター)