北朝鮮では、今年9月頃から一般人の鉄道利用が禁止されている。冬季のエネルギー不足などにより、輸送力が著しく低下したので、鉄道当局は公的な業務のある人にのみ乗車を認めているのだ。

代替交通手段となるのはバスだ。北朝鮮には全国各地を結ぶ高速バスの路線網が張り巡らされており、運賃さえ払えばどこにでも行くことができる。しかし、乗客の急増に対応できなくなった。そこで、脚光を浴びているのが「木炭車」。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

面倒だが安価

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、車体は北朝鮮製の「勝利58」か、中国製の「解放」だ。ちなみに、中国で木炭車が使われていたのは60年代までなので、かなり年季の入った車体だ。

ドライバーは、国営企業や国の機関の名義を借り、清津(チョンジン)の航空大学前で客待ちをして、市内や郊外まで客や荷物を運ぶ。車体は、1トントラックから2.5トン、15トン、20トントラックまで様々だ。

エンジンに薪をくべて出発するまでには小一時間かかりスピードも出ない。しかし、運賃はガソリン車やディーゼル車より安い。燃料費が安いためだが、それ以外にも理由がある。

「火が出ているぞ!」

一般人の鉄道利用禁止によるソビ車(トラックバス)の増加に伴い、保安署(警察署)は交通違反の取り締まりを強化している。しかし、なぜか木炭車はそれほど取り締まられないため、運賃が安く抑えられるというわけだ。

燃料は主に薪を使ってきたが、最近、当局は山林保護のため山での薪集めを取り締まっているため、薪の値段が上がっている。そこで、廃油を染み込ませたトウモロコシの芯を燃料に使うことが増えているが、真っ黒な煙を吐き出す。

そのせいで、こんな笑えないエピソードも登場した。木炭車が国境の川沿いを走っていたところ、川向うの中国の人が慌てた様子で大声で叫んだ。

「おーい、北朝鮮の人!車から火が出ているぞ!」

中国の人は木炭車を見たことがないため、車両火災を起こしたものと勘違いし、親切心で教えてくれたのだ。

咸鏡北道の別の情報筋は、木炭車のさらなるメリットを説明する。

「山には多くの山林保護員がいて、薪集めを取り締まっており、トラックを見かけると停車させて薪を積んでいないか確認する。しかし、木炭車を使えば安心だ。7割が軍の名義を借りているため、山林保護員は手を出せないのだ」

つまり、木炭車を使って違法に薪集めをして、その薪で木炭車を運行するわけだ。