12日、北朝鮮政府が演出した“庶民の日常生活”の裏側をロシアの撮影スタッフが危険を冒して暴き、世界各国で高く評価された話題作の日本公開に先駆け、監督が都内でトークイベントを行った。

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2016年12月12日、北朝鮮政府が演出した“庶民の日常生活”の裏側をロシアの撮影スタッフが危険を冒して暴き、政府の強力な圧力と非難を押しのけ世界各国で高く評価された話題作「太陽の下で―真実の北朝鮮―」の日本公開に先駆け、メガホンを取ったロシアのヴィタリー・マンスキー監督が来日し、都内で映画「かぞくのくに」のヤン・ヨンヒ監督とトークイベントを行った。

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<あらすじ> 8才のジンミと模範労働者の両親。“庶民の日常”を映すドキュメンタリー撮影のはずが、用意されたのは住まいも、職業も、会話までもがシナリオ通りの被写体だった。スタッフは真実を暴くため、録画スイッチを入れたままの撮影カメラを放置し、隠し撮りを敢行するが…。

北朝鮮において、“庶民の日常生活”とは一体どのようなものなのだろうか?モスクワ・ドキュメンタリー映画祭の会長も務めるヴィタリー・マンスキー監督は、誰もが知りたい疑問を、誰もが見えるかたちで描きたいと考えていた。北朝鮮政府から撮影許可を得るまで2年間、平壌の一般家庭の密着撮影に1年間。その間、台本は当局によって逐一修正され、撮影したフィルムはすぐさま検閲を受けることを強いられたが、検閲を受ける前にフィルムを外部に持ち出すという危険を冒して本作を完成させた。

マンスキー監督は「私が当初作ろうとした作品は、入国後数日で絶対に撮れないと痛感した。北朝鮮がいかに素晴らしい国かを謳ったスローガンを人々が掲げ、行使すればするほど、内実はスローガン通りでないという逆説を描くしかなかった」と撮影時を振り返った。さらに、実際には空港に着いてすぐ撮影クルー全員分のパスポートが取り上げられ、自由な外出はその時点で不可能になり、「部屋の明かりをすべて消して、窓の外を行き交う人々を撮ることぐらいしかできなかった。その他はすべて戦時体制のような状況下、撮影は進んでいった」と明かした。

在日コリアン2世で、自らも政治や国家によって家族が引き裂かれる経験をしたヤン・ヨンヒ監督は「やっとこういう作品を出す監督が現れたと思うと感慨深い」と吐露。「大なり小なり、北朝鮮に取材に行ったことがあるメディアは、そういう北の実態を目撃してきている。ただ露骨に真実をさらそうとすると、新聞社や放送局との関係が悪くなり、入国の許可が下りなくなるなど取材に支障が出るため自粛している方も多い。その中でとても面白く、いい意味で残酷に、北朝鮮の断片をお撮りになったと思います」と、監督の映画化までの苦労をねぎらった。

家族の安全を考慮し、カットしたシーンはあるかとの問いに、「ジンミたちの家族3人は、すべて、役人に言われた通りに演じています。彼らが願って行動する場面は一つもありません。だから編集の段階で安全を守るためにするべきことは何もなかった。だからと言って、この家族の安全は保障されているというわけではないのです」とマンスキー監督は答える。本作がさまざまな国で評判になったことを受け、北朝鮮政府は今ではジンミちゃんを子どもの英雄としてまつり上げ、家族は“成功の象徴”として宣伝しているという衝撃の事実も明かされた。

マンスキー監督は、「ロシアでは公的な映画館が公開日の3日前に上映を取りやめるなど明らかな圧力を受け、紆余曲折を経て結局民間の映画館でのみの公開になってしまった」と悔やみながらも、本作がドキュメンタリー映画としてはロシア最高収益を記録したことを語った。

ヤン・ヨンヒ監督は「私も(北朝鮮にいる)姪っ子をホームビデオのようにして撮影したドキュメンタリーを撮ったので、ぜひ監督にも見てほしい」と伝えた。一方、マンスキー監督からも「もし体制が変わったら、本作の出演者たちが撮影当時どう思っていたのか、そういったことを映画にしてほしい」とオファーを出した。

最後にヤン・ヨンヒ監督は「カメラが無いときの映ってないときの彼らのことを考えながら映画をみてほしい」とメッセージ。マンスキー監督も「私はソ連邦で育った人間ですので、北に暮らす人々に共感や同情、思いを共にしたいという気持ちがあります。どうか心を開いてください」とアドバイスを送り、トークイベントを締めくくった。「太陽の下で―真実の北朝鮮―」は2017年1月21日よりシネマート新宿ほか全国順次公開となる。(編集/内山)