【口腔アレルギー症候群】“花粉症”が原因でフル―ツや生野菜が食べられない人急増!医師に聞いた症状と対策法

写真拡大

寒い日が続き早くも春が恋しくなりますが、温かくなると気になりだすのが花粉。

子どもの“加湿器病”にご用心! 知っておきたい加湿器のデメリット&正しい使い方

近年は、春だけでなく秋なども花粉症に悩む人が増えており、その花粉症が原因で生の野菜やフルーツが食べられないという症状に発展する可能性があることをご存知でしょうか。

現在、急増している口腔アレルギー症候群(OAS)という症状について、はなふさ皮膚科の院長である花房火月先生にお話を聞いてきました。

口腔アレルギー症候群(OAS)とは

ーまず最初に、「口腔アレルギー症候群(OAS)」というのはどのような病気であるか教えてください。

花房火月先生(以下、花房):花粉症の人が、生の野菜やフルーツを食べるとアレルギーを起こし、喉の奥がイガイガしたり、かゆくなったり、唇が腫れたりする病気です。
ごくまれに下痢などの消化器症状、喘息、発疹が出ることもあります。

ーなぜ花粉症だとOASを発症するのでしょうか。

花房:花粉を吸い込むとそれに対するアレルギー反応が起こります。

花粉には様々なタンパク質の構造があって、そのタンパク質とからだの中で作られるタンパク質(特異的IgE)が結合することでアレルギー反応が起こります。

その花粉に含まれるタンパク質と、野菜や果物に含まれるタンパク質に似た構造があった場合、からだの中に作られたタンパク質(特異的IgE)が間違って攻撃し、アレルギー反応が出てしまうんです。

花粉に対して持っているアレルギーが、似たようなタンパク質の構造を持つ野菜や果物に対しても反応してしまうというのがOAS発症のメカニズムです。

ーこの病気は遺伝性のものだったりするのでしょうか?親がOASだったとき、子供もなりやすいという傾向みたいなものはあるのでしょうか。

花房:実は遺伝形式については、はっきりとは分かっていないんです。

アレルギーになりやすい体質というのは、ある程度、遺伝的な要因があるということは否定できないのですが、メンデルの法則みたいな簡単な遺伝形式ではなく、色んな遺伝子が絡み合ってそういう体質になっていると推測されます。

そのため、いわゆる遺伝病みたいな遺伝形式ではないと思われます。

ただ、花粉症を発症してからOASになる、ということは分かっていて、その逆はないんです。

花粉症のなりやすさっていうのは完全に体質で、ある程度は遺伝と言われています。

ただ、お母さんが花粉症だから子供が花粉症になるのが50%かというと、そういう単純な優性遺伝ではありません。

何%遺伝というのは断言できないのですが、お父さんかお母さんが花粉症であれば子供も花粉症になりやすいし、OASになりやすい、というのは一般的には言えるでしょうね。

OAS検査は採血で

ー自分がOASであるかどうかは検査などで調べることができますか?
また、どのような野菜や果物に反応するかまで分かるものでしょうか。

花房:検査に関しては採血でアタリをつけることができます。

アレルギー検査の結果を見て、たとえば「リンゴ陽性」とか出てくるのでデータを見ながら「これを食べるとどうですか?」と臨床症状と合わせてアタリをつけていく、というプロセスを取ることが多いですね。

ーOASは発症する前に未然に防ぐ方法があるんでしょうか?

花房:現状では予防方法については分かっておらず、どうして増えてきているかというのも現時点では不明なんです。

花粉症の人も年々増えていますし、花粉症の中でもOASの人というのも年々増えています。

ーOASであることが分かった場合、どのように対処すればよいのでしょうか?
症状を軽減するためには、日々薬を飲むのか、花粉の時期だけ何かをするのか、具体的に何をすればよいのでしょうか。

花房:OASだけに関していうと、原因である物質を食べないということが予防の方法です。

食べる場合であれば、熱を通せばタンパク質が変性するのでアレルギーを発症しなくなります。

あとは、定期的に抗アレルギー薬を飲むことも予防になりますし、欧米では減感作療法と言いまして、そのアレルギーを消す試みがされているみたいです。

たとえば減感作療法で、スギ花粉に対する反応を減らしていけば、OASも軽減されるという話があります。

ヨーグルトは花粉症の軽減に有効?

ーここ数年、花粉症の人がますます増加していく中で民間療法的なものもたくさん出てきました。

ヨーグルトを食べるといいとか、この食材を摂取するのが良いとか…それはOASの発症を抑えるのにも役立つんでしょうか?

花房:花粉症の症状自体を抑えることができれば、OASの症状も軽減できるんじゃないかという話はあります。

医師の立場から民間療法をオススメすることはできないのですが、腸内細菌層とアレルギーの密接な関連性というのはヨーロッパを中心に研究が進んでいます。

腸は、人間のからだと外界が接している部分なんです。

腸の中には千兆個という細菌がいて、その細菌を腸にいるリンパ球などの免疫細胞が見張っています。

その中に悪い細菌が入っていたら、免疫反応が起こってお腹が痛くなったりするわけです。

免疫細胞は体中を見張っていますが、その過半数が腸の周囲をマークしていると言われています。

腸内細菌に対して「これはいい、これは悪い」と免疫細胞がチェックし、学習しているので、腸内細菌層が乱れていわゆる悪玉菌が増えてくると、免疫細胞もバランスを崩し、アレルギー症状が出やすくなるのではないかという仮説があるんですよ。

それを裏付けるものとして、腸内細菌層の中に悪玉菌が多い子供は、アトピーを発症しやすいというヨーロッパから出ているデータがあります。

そのため、腸内細菌を整えておけば、腸内の周囲の免疫細胞も落ち着いて、全体のアレルギー反応が軽減されるのではないかと言われています。

腸内細菌を整えるという意味でヨーグルトなどを食べてアレルギーを抑える、というのは直接的な効果があるとは言い切れませんが、試してみる価値はあると思いますよ。


野菜や果物にアレルギー反応を起こすという話は聞いたことがありましたが、喘息やアナフィラキシーショックという症状を起こす可能性もあると知ってかなり驚きでした。

筆者も毎年春にはスギ花粉に悩まされているので、とりあえず今から腸内細菌を整えることから始めてみようと思います。

はなふさ皮膚科

花房 火月(ハナフサ ヒヅキ)
1979年12月2日(36歳) 大阪出身O型

○学歴
・1995/4〜1998/3 私立東大寺学園
・2000/4〜2002/3 東京大学教養学部理科三類
・2002/4~2006/3 東京大学医学部医学科
・2006/3 医師国家試験に合格(医籍第457275号平成18年4月14日登録)

○三鷹市、東京都医師会加入済
○所属学会:日本皮膚科学会、日本小児皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本抗加齢医学会所属
○テレビ、雑誌、新聞等のメディア出演多数
○表彰歴 皮膚科において低侵襲手術の独自性および術式を広めた実績が評価され、皮膚科医としては唯一、The Japan Times紙によりアジアの次世代を担うリーダー100人(100Next-Era Leaders IN ASIA2015-2016) に選出される。日本人皮膚科医として国際的に評価されるのはきわめて異例。