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●AIが人事で貢献できること
日立ソリューションズは、同社の人事向け総合ソリューション「リシテア」シリーズの最新製品として「リシテア/AI分析」を発表した。どちらかといえば人間くさい印象のある人事や労務といった業務にAIを使ったデータ分析が適用されたとき、働き方や人事考査などに変化はもたらされるのだろうか。

○多種多様なデータからストレスなどを抽出

「リシテア/AI分析」は、就業管理、工数管理、帳票閲覧などの機能を持った各製品群からなる、人事・労務部門向けソリューション「リシテア」シリーズの新製品だ。

リシテアシリーズはこれまでに1100社、160万人を超える導入実績があるシステムであり、ここで築き上げてきたデータをAIで解析することで、従業員のモチベーションやメンタルヘルス面での不安が発生する恐れのある人を推測したり、他の組織とのモチベーションの差を可視化するといった支援機能を提供する。人材活用を効率化するためのツールと言ってもいい。

どうしてこのようなツールが必要になるのか。それは、物作り一辺倒だった産業界がサービス中心へとビジネスモデルをシフトしていくにあたって、人材の活用はこれまで以上に大きな重みを持つからだ。

女性の職場進出や外国人、非正規労働者など、働く人や働き方も従来とは変わってきており、これまでの経験やカンに頼っていたやり方では通用しなくなることもある。そのため、人材を客観的な指標で評価し、人や組織のパフォーマンスの最大化を図ろうというわけだ。

●AI活用でコスト効率化も
たとえば、日立ソリューションズ自身を含むIT業界では、特にメンタルヘルスを理由に休職する率が高く、日立ソリューションズのケースでは1.7%にもなった。これは他の業種と比べると3倍以上と非常に高い数値だという。一般に、年収500万円の社員が休職すると1年で800万円近いコストがかかるとされており、個人の健康という観点だけでなく、コストの効率化という点からも、休職の兆候を事前に察知し、カウンセリングや配置転換などを行うといった対策を早期に打てるメリットは大きいわけだ。

なお、こうした分析により発見できる「予備軍」は約40%程度ということで、数字だけ見るとさほど高いようには見えないのだが、人事の立場からするとかなり高いのだという。同社では「リシテア/AI分析」を導入して以来、社員による運動会や飲み会といったコミュニケーションの場を増やしてみたところ、休職率は半分近くまで下がったという。

日立ソリューションズでは「リシテア/AI分析」を構成する製品として、業績やモチベーションなどパフォーマンスの高い組織の特性を抽出して可視化する「組織パフォーマンス診断サービス」を2月に、業績やモチベーションなどパフォーマンスの高い組織の特性を抽出して可視化する「組織パフォーマンス診断サービス」を来年5月にそれぞれ販売する。その後も製品群を追加/強化していく予定だ。

●AIを過信しすぎてはいけないが……
○AIを使った人事は普及するか

AIが人事考査に使われるようになるとすると、中には「機械に判断されるのは嫌だ/不安だ」と感じる人も多いだろう。日立ソリューションズでは、「リシテア/AI分析」はあくまでデータを分析するためのツールであり、最終的な決定権はそれを操る人間にあることを強調する。運用する側も「これはあくまで事前の兆候の可能性であり、AIの判断が100%正しいわけではない、ということは肝に銘じなければなるまい。

とはいえ、人事部自体もリストラの対象となって経験のある人が減っていったり、これまでとは働き方の違うシステムになっていった場合、人事業務でも従来のノウハウが活かせなくなることは大いに考えられる。そのアシスタントとして何らかの形でAIが介入してくることは、もはや必然といえるかもしれない。

ポジティブに捉えれば、これは会社が従業員のヘルスケア全般を把握して、より健康的な職場づくりへのきっかけにすることもできるだろう。現在のスマートフォンはさまざまなセンサーを搭載しており、加えてスマートウォッチやウェアラブル型の生体センサーなどを用いてより正確な身体情報を収集できる。こうした情報を「リシテア/AI分析」のようなシステムが取り込めるようになれば、(プライバシーなどの問題はあるにせよ)より正確に身体の情報と仕事ぶりを判断できるはずだ。

メンタルヘルスに対する風当たりの強い日本では、一度「折れて」しまう、あるいはその傾向を見せただけで出世コースから外れてしまう恐れは否めない。だが、こうした問題は従業員だけでなく、会社全体が意識を変えて取り組まねばならない。「リシテア/AI分析」のようなAIの導入により、より正確で客観的なデータが取り入れられるようになれば、思い込みや先入観といったノイズから離れた人事考査も期待できるようになるのではなかろうか。

(海老原昭)