マイホーム購入前に知っておきたい「最低限のこと」[日本の不動産最前線 第8回]

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本コラムをご覧になる方のなかには、年明けあたりからマイホーム探しをしようとしている方も多いのではないだろうか。

待望のマイホームには胸が高鳴るが、注意したいのは、物件見学から契約までの購入者と宅地建物取引業者(以下、宅建業者)とのやり取りには認識に違いがあったり、その認識のズレや購入者側の無知を業者が利用しようとしてトラブルに発展する例があるということだ。さくら事務所のコンサル現場においても散見される。

今回は、そうしたトラブルに巻き込まれたり、不快な思いをしないための知識として「申し込み」や「契約」、「手付金」などの基本事項について、簡潔に整理しておこう。

申し込みと契約は別物

物件を気に入ったらまず、「購入申し込み」を行う。ところがこの「申し込み」の段階では、売主、買主の双方に、何ら法的義務が発生しないことは意外と知られていない。

不動産売買でいう「申し込み」とはいわば「契約の予約あるいは準備」のようなもの。申込みの後、不動産売買契約書に署名・押印して手付金を支払った時点で初めて契約の効力が発生し、売主・買主双方に法的義務や権利が発生する。つまりその前段階である「申し込み」においては、たとえキャンセルしても何らペナルティーは発生しない。

確かに民法では「契約は口頭でも成立する」とされるが、過去の判例においても、申込書に記名・押印して申込金を預けた段階で契約とみなされたことは、ない。つまり申込みの後「やっぱり契約するのをやめました」は可能なのだ。

もちろん、同義上の責任は残るゆえ、安易に申し込みをするのは考えもの。その物件を気に入り、特段の問題などなければ契約しよう、という意思が固まった段階で申込みを行うべきだ。

民法は司法の基本法だ。しかし、不動産売買に精通した宅建業者と一般消費者に民法を適用していては、情報の非対称性などから一般消費者にとって不利な状況が生まれることが想定できる。

そこで宅地建物取引業法(以下宅建業法)では、不動産業者に対して信義誠実を求め、一般消費者が思わぬトラブルにまきこまれないよう、民法よりも詳細な規定を設けている。宅建業法に定められていない事柄は民法が適用となるが、民法と重複する場合は宅建業法が優先される。

申込時には「申込書」「買い付け証明書」などの書類に署名・押印し、「申込金」とよばれる数万円〜10万円程度のお金を預けるのが一般的だ。この申込金は、もし何らかの理由で契約に至らなかった場合には、必ず返金される。まれに「契約をしないなら申込金は返金できません」という業者もいて驚かされるが、契約前の申込金はあくまで「預かり金」の性格があるだけ。何の問題もなく、当然に返金してもらえるものだ。

また、しばしば「”仮契約”をしましょう」といった非常にあいまいな用語を使い、実は正式な売買契約を締結させるといった不可解なケースもあるようだ。不動産売買には「仮契約」などという定義は存在しない。このような際には、「それは”申し込み”ですか? それとも正式な”契約”ですか?」と確認しよう。

ベストな手付金額とは

ところで、不動産売買契約では一般的に「手付金」を契約時に支払い、残りを引き渡しに「残金」として支払うのが通例。引渡しまでに「中間金」を設けることもある。

物件引渡し前に渡す手付金は、購入者側から見れば少ないに越したことはないだろう。未完成物件の場合には、きちんと図面通りに造られないリスクや、途中で業者が倒産してしまうリスクなどがある。完成物件や中古物件の場合も、約束通りの状態や期日に引き渡されないリスクなどが考えられよう。

業者以外が売主の場合は基本的に、手付金額は少なければ少ないほどよい。とはいえ賃貸借契約とは違うのだから、数万や数十万というわけにはいかないだろう。ちなみに、一般的な不動産取引の慣行では、手付け金額は5〜10%程度である。

一方で、業者が売主となっているケースでは、一定程度の手付金を預ける場合には保護されるという決まりがある。未完成物件なら物件価格の5%超、完成物件なら物件価格の10%超の手付金を業者が受取る場合には、その手付を銀行や保険会社などの第三者へ預けるなど、「保全措置」を講じなければならないことになっている。

手付金の保全措置が講じられていれば、手付金は引渡しまで業者の手に渡らず、不測の事態が起こっても安全である。

よって、例えば3,000万円の物件を契約するときのベストな手付金額は、売主が業者であれば「未完成物件なら”150万+1円”」「完成物件なら”300万+1円”」ということになる。

今回挙げた項目は、幅広い不動産取引における慣行のほんの一例にすぎない。こういった最低限の法的知識・不動産取引の慣行を知っておくことは、あなたやあなたの家族の身を守る。

マイホームという大きな買い物の際には、トラブルや心配など抱えることなく勧めたいもの。不動産取引に必要な基礎知識はしっかり身につけておこう。