3Dプリンターは医療分野でも活躍しており、人間の細胞をもとに3Dプリンターで臓器や体の部位を出力するプロジェクトが進行中です。そんな3Dプリンターで作成される人工臓器は、実物の臓器の代替品として開発されているだけでなく、医者が複雑な手術を行うための練習台となったり、医学生が人体の構造を学んだりするためにも使われています。

Creating the “Model Human” to Practice Surgery - Newsroom - University of Rochester Medical Center

https://www.urmc.rochester.edu/news/story/4668/creating-the-model-human-to-practice-surgery.aspx

3D Printed Organs Look, Feel and Bleed Like the Real Thing | Motherboard

http://motherboard.vice.com/read/3d-printed-organs-look-feel-bleed-like-the-real-thing

手術が困難な臓器の場合、3Dプリンターで出力された人工臓器を使って手術の練習を行うことができます。そんな人工臓器を用いた手術の練習で重要になってくるのは、人工臓器の触り心地です。現在、世界中の研究者たちが脳や背骨、心臓などの手術が困難な部位の模型を3Dプリンターで生成し、これを練習に用いようとしています。人工臓器は粘着性のぐちゃっとつぶれるような素材で作られているそうです。

ロチェスター大学の「Simulated Inanimate Model for a Physical Learning Experience(SIMPLE)」と呼ばれるプロジェクトでは、ヒドロゲルで人工臓器を作っており、この人工臓器はなんと切ると出血するという本物の臓器のような仕上がりになっています。SIMPLEプロジェクトについて、ロチェスター大学メディカルセンターの泌尿器科で助教授を務めるアフマッド・ガージー氏は「我々が作成している人工臓器は、本物の臓器のような見た目と触感で、実際に手を加えると反応するものもあり、医学生や外科医がリアルな外科シミュレートを行えるようになる」とその意義についてコメントしています。

実際に3Dプリンターで出力した人工臓器などを用いた外科シミュレートの様子は以下のムービーで見ることができます。

Simulated Surgery at URMC - YouTube

場合によっては、患者の臓器や骨格、あるいは神経系に至るまでが再現されるそうですが、人工臓器を用いた外科シミュレートを行うことで、「実際にはどの方法で手術を行った方が出血量が少なくて済むのか?」などが実践の中で解き明かされていきます。ガージー氏は「外科医はまさにパイロットのようなものです。パイロットが初めて飛行機を飛ばす時や、外科医が初めて手術を行う時、処置はすべてひとりで行わなければいけません。パイロットの場合は膨大な時間を費やして現実世界に似せたフライトシミュレーターで訓練を行うことが可能ですが、外科医の場合はこれまで実際と似た環境での訓練を行うことができませんでした」と語っており、3Dプリンターで作成した人工臓器がそういった現状を変えていく可能性を示唆しています。

日本の大阪府吹田市にある国立循環器病研究センターでは、3Dプリンターで心臓の模型が作られており、これも医者が困難な外科手術の練習を行う際などに役立っています。3Dプリンターで作成した心臓の立体模型は、CTやMRIを用いて実際の患者の心臓を模したものになっており、困難な手術を行う際でも実際の患者の心臓と近い模型を使って外科シミュレートが可能になるわけです。また、3Dプリントされた人工臓器を外科手術の練習に使用しているのは、ロチェスター大学や日本の国立循環器病研究センターだけではありません。アメリカのクリーブランド・クリニックでは3Dプリントされた人工臓器を用いて珍しい疾病を患った外科患者の手術をシミュレートしています。

複数の病院の研究者たちが移植手術に使うこともできる3Dプリントされた機能器官の登場を待ちわびています。アメリカ国立衛生研究所は、3Dプリントしたり学生の勉強用教材として、さまざまな種類の心臓模型を作成しています。なお、ガージー氏は3Dプリンターで人工臓器を作成する理由を、「手術はパンドラの箱のようなものです。内側を開くまでは中がどうなっているのかはわかりません」と表現しています。