「Thinkstock」より

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●円高ドル安時代の海外通販

 皆さんは、海外通販を利用したことがあるだろうか。

 筆者はアメリカに10年ほど暮らしていた経験があるため、帰国後も時折アメリカの通販店に商品を注文してきた。特に、1ドル80円台の円高時代は、たとえ電気製品でメーカー保証が受けられなくても、価格が日本で購入する半分以下に収まることも珍しくなく、十分に妙味があった。

 もちろん、送料や税金(関税含む)は重要な部分であり、海外からの購入には適さないものもある。たとえば、大きく重い商品やかさばる商品では送料がネックとなる。また、関税が高く課せられる商品もあまり相応しくない。

 これまで筆者は、衣料品、日用品、ブランド品、そして女性が購入するようなものを除いて、さまざまな商品を海外通販で購入してきたが、もっとも重要なことは「サービスの質」だと感じている。

 たとえば、店側が本気で海外に販路を見いだそうと考えているのであれば、送料は安く収まる輸送手段を選ぶとともに、より安全でリーズナブルとされる電子決済サービスを利用することになる。アメリカに限らず、海外ではクレジットカード、小切手など、不正使用が多く、店側もその対策を講じなければならない。そのため、店側はそんなリスク対策に要する費用と、見込まれる海外向けの売上増を天秤にかけることになる。

 筆者が利用してきた通販の中には、日本からの注文のみ、クレジットカードでの海外注文を受け付けるといった店舗がいくらかあった。もちろん、それは日本人が不正を行う頻度が極めて低いからである。

 また、海外通販における代金の支払いは、アメックス(アメリカン・エキスプレス)でのみ可という店もあった。店側は割高の手数料を支払うことになるが、トラブル時の対応や補償が比較的厚いこともあり、筆者も海外通販用にアメックスを持っている。

 ちなみに、以上のことは「サービスの質」に含まれるものの、店側がいわば事務的に準備すべきことである。実際には、もっと重要なことがある。それは、日本人が得意とする分野で、相手の気持ちに立った「おもてなし」や「真心」といったものになるのかもしれない。

●サービスの質の違いがリスクとなる?

 今から10年ほど前になるだろうか。筆者はアメリカのネット通販店からカーオーディオ用のアンプを購入したことがある。決して高価なものではなかったが、なかなか日本では入手できないもので、入手できても5万円程度する商品だった。そんな商品がセール品となっていて、送料・税金等を含めても1万5000円程度になっていたのだ。

 およそ2週間後、配達された商品を見てみたら、アンプ本体から伸びた固定用の金属プレートが曲がっていた。梱包用の箱にも一部損傷があり、輸送中の落下が原因と思われた。自動車用のアンプには、ホームオーディオ用のアンプと異なり、車体などに取り付けるためのプレートが本体底部から伸びていることがある。外観上、箱状の本体部分に損傷はなかったが、固定プレートが損傷しており、内部でも基板上のハンダにヒビが入るなど、問題が予想された。

 そこで、運送業者にそれを伝えたところ、支払総額がすべて運送業者によって補償(返金)されることになった。

 実は、驚いたことに、商品の梱包があまりにも杜撰なものだった。内容物のサイズとは不釣り合いなほど大きなダンボール箱の中に、直径3センチ程度の細かな発泡スチロール製緩衝材が大量に入れられ、その中に裸に近い状態でアンプが入っていたのである(アンプの元箱は極めて貧弱なものだった)。つまり、大量の緩衝材の中で重い金属製アンプが自由に動き回れるようになっていたのだ。輸送中にそのアンプがダンボール箱の底の方に移動して、荷下ろしの際に衝撃が伝わることは容易に想像できた。日本でそんな梱包が行われることはあり得ないだろうが、アメリカや海外では、そんな常識は通用しない。

 筆者の感覚からすると、明らかに責任の所在は杜撰な梱包を行った店側にあったが、現実には運送業者の責任とされたのだ。

 結局のところ、全額返金された上に、筆者のもとに損傷したアンプが残された。後日、曲がったプレートはペンチで元に戻し、動作確認を行ってみると、予想外に正常に使えることがわかった。得をしてしまったような結果ではあったが、少々後味の悪いものであった。筆者は店側に連絡を取り、今後はもっと丁寧に梱包するように伝え、その後は大幅に改善された。

 筆者は、自分自身や友人・知人らのために、そして、一時的にかかわった小売業での仕入れでさまざまなものをアメリカ、カナダ、オーストラリアなどから購入してきた経験があるが、幸い大きなトラブルは経験していない。不良品が含まれていたとしても、店側によって適切な対応がなされ、なんらかのかたちで還元されてきた。

●中国からのネット購入でも同じ?
 
 では、欧米諸国以外からの通販購入はどうなのだろうか。近年では、中国が海外向けのネット通販に力を注いでおり、圧倒的な安さで急成長している。

 たとえば、日本のアマゾンにおいても、さまざまな国の業者が出品している。中国からの出品者も多く、筆者も利用したことがある。概して商品は2〜4週間程度で送られてくるが、注目すべきは価格と送料である。筆者が時折注文する電子部品類の価格はひとつ数十円から百数十円ほどのものが多いのだが、それらが送料無料なのだ。国内の通販を利用すれば、送料のほうが何倍にもなってしまう価格帯のため、気長に待つことができればお買い得となる。送料無料のカラクリはよくわからないが、香港とマレーシアを経由して来ることもあった。

 ここで、中国の通販利用者が増えるとともに、トラブルも多く発生しているといわれる。具体的には、注文した商品が届かない、ニセモノやキズモノが届くなどである。だが、ほとんどの場合、店(出品者)の信頼性や商品の品質に関しては、過去の購入者による評価とレビューが参考になり、リスクは低減できる。

 筆者は大手アリババグループが運営するAliExpressでも買い物を行うことがある。便利な決済システムやセキュリティー面では評価が高いサイトである。購入者が商品を受け取ったことを連絡してはじめて店側に代金が支払われるシステムになっている。

 通常の輸送手段を選べば、多くの商品はやはり2〜4週間程度を要して送料無料で送られてくる。アマゾンにおける海外出品者と同様、筆者は店(出品者)の評価とレビューを見て注文を行っているため、これまで大きなトラブルは体験していない。

 ただ、世界共通と思われるが、主なリスク要因は商品の取り扱いにあるように思われる。つまり、購入者が注文商品を満足いく状態で受け取れるような配慮=「サービスの質」が問われ、その一面は梱包状態から伺い知ることができる。

 去る11月11日、中国では「独身の日」とされ、大規模なバーゲンセールがあった。これは、アメリカにおける感謝祭後の売り上げをわずか1日で上回る規模で、その過熱ぶりはテレビ報道でご存知の方も多いだろう。テレビの密着取材でも取り上げられたが、運送システムが未発達な中国においては、小包を投げて仕分けするなど、運送業者による商品の取り扱いは実に粗雑なものだった。

 かつて筆者が渡米した当時、中国人の経営するファストフード店で、食べ物が入った皿やトレーが客に投げ渡されるのを見てびっくりしたことが思い出されるが、壊れやすい商品の注文は避けたほうが無難かもしれない。また、不良品の混入率はやや高めと理解しておく必要もあるだろう。

●利用時の一工夫

 筆者が電子部品等を購入する際は、同一店から単体で1個のみ注文するように心がけている。なぜなら、多くの場合、軽く小さな商品1個がいわゆるプチプチを使ってぐるぐるに包装されるため、粗雑な扱いでもそれほど問題とならないからである(もちろん、送料無料が多いため、まとめ買いをする必要はない)。

 一方、同一店から複数の商品を注文すると、たとえば、壊れやすい商品を個別に包装してから一緒にするのではなく、ぶつかり合う状態で一緒にしてから梱包されてしまう可能性がある。そうなると、プチプチの内側で互いに擦れ、ぶつかり、商品が破損するリスクが生じる。自分が欲しいと思うものを、店側はどのように梱包するだろうかとイメージすることは大切である。

 以前、2つのパーツで構成された電子部品をAliExpressを通じて購入したことがある。それは、セット品として切り離せないものだったため、リスクは覚悟していたのだが、やはり、部品同士が輸送中にぶつかり、実用上の問題はなかったが、片方の部品(プラスチックパネル)表面にヒビが入って到着した。ただ、受け取った商品の写真を撮って店側に見せたところ、次回の注文においてディスカウントを得るということで話はまとまった(さすがに返送料を負担してまで交換する気にはならなかった)。

 通販においては、もしもの際に店側とのコミュニケーションは必須である。不明な点を事前に質問してみれば、店側の対応も伺い知ることができる。多くのトラブルはコミュニケーション不足によって生じる。英語でのやり取りに不安のある方は避けたほうが良いかもしれないが、欲しいと思う商品がどのように梱包・発送されるのか、想像力を働かせることのできる方であれば、商品によってはリスクを抑えて賢いショッピングは可能である。ちなみに筆者には無縁だが、ブランド品の購入には注意が必要と思われる。

 とはいえ、出品者側の意識(サービス)の向上と、購入者側の不安感の払拭にはしばらく時間を要すると思われ、多くの日本人が中国を含めた海外から直接商品を購入するようになるとは思わないが、ショッピングに国境を意識しない状況が訪れるようになるのは決して遠い未来ではないだろう。
(文=水守啓/サイエンスライター)