人は「禁止」されると、逆に、見たい・やりたい・知りたいという衝動に駆られるそうです。たしかに、「見ないでください」と言われると、鶴の恩返しのように、見たくなりますよね。

では、この行動心理をビジネスやプライベートで無理なく活用して、相手の意識をこちらに向けさせることはできるのでしょうか。そこで、作家で心理学者の晴香葉子(はるか・ようこ)さんに、上手に使う方を聞いてみました。

晴香葉子(はるか・ようこ)/作家・心理学者・心理コンサルタント
harukayoko_prof.jpg 東京都出身。文学修士(コミュニケーション学)。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。テレビ、ラジオ、雑誌など、メディアでの心理解説実績多数。現在は、大学院博士課程に在籍し、研究を進めながら、行動心理学・消費者行動・コミュニケーション学など、さまざまな確度から情報を提供。著書多数。近著に『2回目からは、スーツのボタンは外しなさい』(潮出版社)がある。公式サイト


ダイエットに1度も失敗したことがない人は〜と書かれていたら


晴香さん:さまざまある商品やサービス、お店の中で注目を集めるため、キャッチコピーに工夫が凝らされていますが、「30代限定」「女子のみ」「〇〇な方は見ないでください」と書かれていると、対象者はもちろん、対象外の人にも意識を向けさせることができます。

たとえば、「ダイエットに1度も失敗したことがない人は、見ないでください」と書かれていた場合、裏返すと「失敗しないダイエットの情報かも」と連想させて、ダイエットに失敗した人だけでなく、関心のある多くの人が見たくなるわけです。

では、どうしてこのような心理現象が起こるのでしょうか。


行動の自由が奪われると、自由になりたいという欲求が高まる


晴香さん:人には、禁止されるとむしろやりたくなってしまう心理が働きます。これは「カリギュラ効果」と呼ばれる行動心理で、1980年に公開された「カリギュラ」という映画が、あまりにも過激な内容のため一部地域で公開禁止となり、かえって注目を集めたことに由来します。

こうした現象が起こるのは、人が本能的に持っている、自由に行動を選択したいという欲求に起因します。「ダメ」「禁止」と言われると、行動の自由が奪われて、ストレスになります。そこで、均衡状態に戻すために、ついつい禁止されていることをしたくなるわけです。これは外的な要因だけでなく、自分の中でも起こります。

たとえば、「絶対に◯時以降は食べない」と自分で決めたとしても、つまみ食いをしてしまう。ダイエットや習慣が長続きしないのは、絶対にダメ、してはいけないと自分の行動を無理に抑制しているから。「週に2回くらいは食べてもいい」など、もっと緩いルールにすると、かえって続くことがあります。


あなたもすぐにできる「カリギュラ効果」4つの活用法


晴香さん:では、先ほどのダイエットや習慣と同様に、カリギュラ効果を踏まえて、あなたの仕事やプライベートで役立てる方法をいくつかご紹介します。
 
1. 読ませるブログ記事を書く場合は

晴香さん:前述でもお話しましたが、「〇〇の方だけ見てください...」のように、禁止的なタイトルにすると、◯◯の方以外の人も引き込んでいくことが期待できます。また、ページをまたぐ場合は、「◯◯の方は次のページに進んでください」というのも1つの方法かもしれません。
 
2. 人を動かす場合は

晴香さん:仕事でも家庭でも、動きが鈍い人はいるものです。そうした場合は、試しに「もういいから、やらないでね」と言ってみましょう。ダメと言われるとやりたくなる確率が高いので、嫌々でも依頼したことをきちんとこなしてくれるかもしれません。ただし、「やらないでいいなら、やらない」と素直に受け取られる場合もあるので、まずは試して、その人のタイプを見極めましょう。
 
3. メールの見逃し予防、記憶に残す場合は

晴香さん:社内・社外メール宛に添付ファイルを送る際、セキュリティ対策のために、パスワード設定して、後送のメールでパスワードを知らせたり、パスワードを入力しないとファイルが開けないようにすることがあります。実はこれ、雑誌の袋とじと同じで、一手間を掛けないと見ることができないので、記憶に残りやすく、見逃す機会を軽減することができます。
 
4. 年末年始に人を無理なく誘い出す場合は

晴香さん:メールやSNSなどでイベント告知と集客を行う場合は、まず日時と開催場所の地域だけ教えて、参加者となった人だけに会場を教えるのも1つの方法です。カギを開けないと次へ進めないので、進んだ人は特別感が得られ、実際の参加率も高まるわけです。

また、年末に向けて忘年会などで人を誘う機会が多くありますが、2次会などで時間を共にしたい人がいる場合は、事前のお店のリサーチが必要ですが、情報誌のタイトルによく見られる、「隠れ家」「看板がない」「招待制」「◯◯限定」などをキーワードに、次のお店に誘ってみましょう。一般的に、なかなか探し出せないお店などは、行ってみたい、知っておきたいという欲求があり、知っている・体現した優越感が得られ、秘密の共有ができるので、誘いやすくなります。

いずれも、人間の本能的な部分を刺激する方法ですが、あざとく、度が過ぎてしまうと、ただの無理強いになって逆効果になることもあるので、ほどほどに活用してみてください。


「カリギュラ効果」。なかなか興味深いお話でしたね。2016年が間もなく終わろうとしていますが、晴香さんの活用法を参考に、年末の飲み会では、「興味を持たせるキーワードで誘い出し」、2017年からは「無理な禁止事項はつくらずに自分のなりたいを習慣化」するのはいかがでしょうか。


(文/香川博人)
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