左目をつぶり、右目で左にある●を見る。画面から顔を近づけたり話したりして、見えなくなったところが「盲点」(『緑内障の最新治療』より引用)

写真拡大

視野が欠けていく病気、緑内障。ストレス、糖尿病等が原因でなりやすく、手術後も視界は戻りません。早期発見や予防について聞きました。

■日本人の失明原因第1位「緑内障」

最近、人や物にぶつかりやすくなった、たとえば駅の人混みでぶつかりやすくなったとか、車をこすりやすくなったという経験はないでしょうか。もしそうだとしたら、あなたの視野が欠けているせいかもしれません。つまり「緑内障」の可能性があります。緑内障とは、眼圧等によって神経にダメージが加わり視野が欠けて失明する病気です。

「緑内障は、40歳以上の20人に1人、70歳以上で10人に1人がなっている病気なんですが、日本人の失明原因第1位の病気です。白内障と違って、視力はほとんど変わりません。視力は1.0とかちゃんと見えているのに、視野だけが欠け、見える範囲が狭くなっていくんです。ただ、人間は視野が欠けていても両目があるので補ってしまうんですね。脳がある程度補正して、見えているように錯覚するんです。

たとえば盲点という言葉がありますが、左手の指を1本立てて、左目をつぶって、右目だけで指の爪先を見てください。距離によって爪先が消えるところがあります。でも普通に見えているような気がしませんか。これは脳が見えているかのように情報を補っているんです。これと同じで、緑内障は、視野が半分くらい欠損していても気づきません。気づいたときはだいたい手遅れです。実感がなく、見えないと気づいたときはそれなりに進行していて、悪くなってからは治療できない。白内障同様、発症しても進行を止めることしかできません。だから失明を引き起こす病気第1位が緑内障なんです。しかし、緑内障になったら必ず失明するというわけではありません。きちんと治療しないと失明する病気ということです」 (彩の国東大宮メディカルセンター平松類医師)

■眼圧、喫煙、メタボ、ストレスが目の神経を死に追いやる

緑内障を引き起こしているのは、目の神経のダメージです。目の神経のダメージとなっているのは、眼圧、ストレス、糖尿病、近視、遺伝、打撲などの目の怪我だそう。

眼圧とは、眼球の弾力性のことをいいます。ボールの固さのようなものです。眼球の眼圧が上がると、その後ろにある視神経が圧迫されて、ダメージを受けるのです。神経質で細かい性格、真面目、悩みやすいなどストレスも原因になり得ます。家族に緑内障の人がいると、なりやすいとのこと。また、糖尿病が緑内障の原因になるというのはあまり知られていないそうですが、症状が重くなりやすいそうです。

「正確には目の神経が死んでいくんですね。血流が悪く、血が行かないので、神経が死んでしまうんですよ。死んでしまった神経は治せないというわけです。目の血管は髪の毛よりも細いですから、ちょっとしたことですぐに悪くなっていきます。緑内障だと分かった場合、現在できる治療は“相対的に血流を良くする”ということだけなんです。

いろんな原因があるのですが、1つはもちろん年齢です。もう1つは近視の人がなりやすい。あとは血流が悪い人。ネクタイを締めていたりすると、血流が悪くなりやすいとはいいますね。それからストレスが多い人に多いんですが、よく文字を書く人、出版系の人も多いです。パソコンの仕事をしている人は非常に多いですよ。血管を収縮させるのでタバコもよくないですね。メタボの人もなりやすいです」

思い当たることが多く、ドキッとしたのではないでしょうか。自分で気づいたときには手遅れかもしれないとなれば、早期発見。検査で見つけてもらうしかありません。

■緑内障を早期発見するには、人間ドックで「眼底検査」と「眼底カメラ」を

人や物にぶつかりやすくなった、車をこすったり、ぶつけることが増えたと感じた方は、早めの検査をおすすめしますが、まだそのような自覚症状がない方こそ、定期的に検査を受けたほうがよさそうです。

受けておきたい検査は、瞳を広げて見る「眼底検査」と「眼底カメラ」です。眼底カメラは機械にあごを乗せて写真を1枚撮るだけという非常に簡単なもの。しかし、近年は自ら進んで検査を受けようとしない限り、緑内障発見の機会は減っているといいます。

「意識している方は眼底カメラ検査も人間ドックの項目に入れて受診されています。この眼底カメラ検査は、メタボ健診が始まる前までは健診項目に含まれていたため多くの方が受けていたのですが、メタボ健診が始まってからは基本項目に含まれなくなり10分の1以下の人しか受診しなくなってしまいました。人間ドックだと1000円程度プラスするだけなんですが、別項目であることが多いのと、そもそもそういう検査の存在を知らない方も多くて、よほどの大企業でないかぎり、ほとんど受けていないというのが現状です。受けていればほぼ緑内障かどうかはわかるので安心です。

昔はアナログテレビの砂嵐(ノイズ)を見ていて、ヘンだなと感じることがあったのですが、今は砂嵐を見る機会そのものがないですよね。アレルギーや老眼の検査で眼科を受診したところ、偶然見つかるというケースはありますが、やはり定期検査をおすすめします」

■医者と患者で「視野」の意味が違う?

緑内障の受診に備えて知っておきたい言葉があります。「視野」というと何をイメージするでしょうか。一般的には“両目で見て見える範囲”を指すはずです。しかし、医者のいう「視野」は違います。“片目で目を動かさずに見える範囲”のことを意味します。

このため、医者は見えていないといい、自分では見えていると思う、という誤解が生じます。そのため医者に不信感を抱き、結果的に治療を遅らせてしまうこともあるそうなので、注意が必要です。

■目の血流を促進し、光のダメージから守るのが予防のポイント

できることなら防ぎたい緑内障。仮に現在緑内障の気はあっても、生活に支障がないならその状態を維持したいものです。予防のポイントは「目の血流を促進し、光のダメージから守る」ことにあります。

▼目を守るために今からできること

□ストレスを避ける
□光を避ける
□抗酸化物質を摂取して、体の酸化から守る
□照明は蛍光灯より白熱灯を利用する
□ブルーライトをカットする
□寝る前のスマホはせめて30分前までに見るのをやめる
□ホットタオルや温熱機器、まぶたのマッサージなどで目の血流を促進させる
□(治療中の場合)目薬を正しい方法でさす

「緑内障の予防のためには、血管が収縮するようなことをなるべく避けることが大切です。ストレスが一番よくないことですが、タバコも控えていただきたいです。 緑内障に限らず、すべての目の病気に言えることですが、『光』が障害なのです。目は唯一光を通す臓器なので、光による障害が非常に多い。心臓や肺などほかの臓器と違って、目だけは光を必要とする、光を通す臓器です。そのため、白内障、緑内障、老眼などなんでも、目への“光のダメージを減らす”というのが一番重要です。光からの距離を取る、スマートフォンなどをあまり近くで見ないなど、とても基本的なことになりますが、それが大事です。寝る直前までスマートフォンを見ている方は、せめて寝る30分前には見終わる努力をしたいところですね」

 

■緑内障予防に効果的なのは「カシス」

平松医師によれば、目にいい食材というのがあるそうです。特に研究結果によってその効果が明らかになっているのは「カシス」です。カシスに含まれる抗酸化物質の「カシスアントシアニン」目のダメージを抑える効果と、目の血流をよくする効果があるという研究結果があるそうです。

このほかに、ほうれん草(ルテイン)、トマト(リコピン)、ブルーベリー(アントシアニン)、カシス(アントシアニン)、ブロッコリー(βカロテン)、緑茶(テアニン)、ビタミンC、サケ類やカニ、エビなどに多く含まれるアスタキサンチンなどもプラスになるといいます。

「緑内障の治療は“眼圧を下げる治療”になります。欠けた視野を元通りにしたり、ダメージを受けた神経を治したりはできないので、眼圧を下げることでダメージの量を減らすことしかできないんです。具体的には、目薬を一生さし続けることになりますが、目薬ではどうしても効果が出ない場合には手術も行います。しかし、手術でも眼圧を下げることしかできません。手術をしたことで乱視が出たり、視力が下がるといったリスクもあるんです。水晶体(レンズ)は年とともに大きくなり、眼圧上昇の原因になることもあるので、早めに白内障の手術をする(薄いレンズに置き換える)ことで、予防に効果的なことがありますが、いずれにせよ(白内障も含め)予防するに越したことはありません」

目は雑に扱われがちですが、実は結構繊細な道具だと平松医師は語ります。 「その道具の使い方を誤ると、効率も落ちるし、成果も上がらなくなるし、いろいろな不具合もでてきます。長い間使う大事な道具ですから、もっとしっかりメンテナンスしていただきたいです」

白内障も緑内障も、できるだけ発症・進行は遅らせたいもの。クリアな視界でいつまでも心地よく過ごせるよう、まずはできることから始めてみましょう。

(文=すずまり(鈴木麻里子))