先日、陽澄湖(江蘇省蘇州市)へ行った時のこと。上海ガニを提供する店舗に向かおうとする手前で突然「お兄さん」と声をかけられた私。振り返ると「お前は朝鮮族か?」と聞かれ、目の前に「犬肉」を吊るし始めたではないか。写真は陽澄湖。

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先日、陽澄湖(江蘇省蘇州市)へ行った時のこと。陽澄湖は上海ガニの一大産地であり、上海ガニは9月下旬から1月にかけてが旬。メスはお腹に卵を多く溜める10月が、オスは白子を多く含む11月が最も美味しいといわれている。

「殻を剥いて取り出したカニミソを、生姜付け黒酢に付けて紹興酒と一緒にどうぞ」という謳い文句に唆されて陽澄湖に向かった私だが、季節は12月も半ば。シーズンギリギリだとかなり人もまばらだった。

上海ガニを提供する店舗に向かおうとする手前で突然「お兄さん」と声をかけられた私。振り返ると「お前は朝鮮族か?」と聞かれ、目の前に「犬肉」を吊るし始めたではないか。犬肉は東アジアや東南アジア、ハワイやポリネシア、オセアニアの島しょに残る、食用の犬を飼い、処理した肉のこと。友人の上海人からは「犬肉とか食べないよ」と言われていたので、上海市から1時間30分ほどの距離で、さらに皮を剥いだだけでほぼ形状を保ったまま売られていることにかなり衝撃を受けた。

犬肉売りのおじさんがなおも「朝鮮族なら犬肉食わなきゃ」とごり押ししてくるので「いいえ僕は日本人です」と正直にカミングアウト。「日本人?コンニチワ(笑)犬肉食べたことないの?」「ないね。というかそのままの姿でちょっと怖いね」「まあ。分解すると鶏肉と間違われちゃうから」と返してきた。実際、先日南方から来た観光客が一頭買いしたそうだ。一般的な値段は500グラム20元(約320円)で、日本の肉基準で考えれば格安だが、中国基準だとそれほどの安価でもない。

食べ方を尋ねた所「パクチー入れて煮込んでおけば大体旨いよ」とのこと。羊肉や牛肉と同じ調理法でオッケーだと言う。本来なら購入して、実際の味を確認してから世に発表すべき内容だったかもしれないが、首を吊られたほぼ原型の犬を目の前にしてその意欲は萎え、結局上海ガニを堪能して帰宅してしまった。

■筆者プロフィール:川崎健太郎
経歴:1988年、神奈川県川崎市生まれ。日本大学法学部新聞学科卒。富士見書房ファンタジア文庫編集部(現株式会社KADOKAWA)、時事通信社運動部を経て、2015年より一念発起し中国、上海市へ。中国語で挨拶もできない中で在駐日本人向け雑誌の編集、営業に携わる。専門分野はアニメ漫画等のサブカルチャーとスポーツ関係全般。