新垣結衣さんが主演し、星野源さんが相手役を務めるドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系、火曜午後10時)が好調です。

10.2%でスタートした視聴率は右肩上がりで、第9回までに16.9%まで上昇。星野さんが歌う主題歌「恋」に合わせて新垣さんら出演者が踊る「恋ダンス」や、契約結婚をきっかけに互いを意識していく、みくり(新垣さん)や平匡(星野さん)の“ムズキュン”なストーリーはもちろんのこと、みくりの伯母を演じる石田ゆり子さんや“イケメン”な平匡の同僚を演じる大谷亮平さんら脇役陣もドラマを盛り上げています。

12月6日に放送された第9話では石田さん演じる“百合ちゃん”が働く女性として歩いてきた道がクローズアップされ、その生き方がネットを中心に話題になりました。働く女性にとって、百合の生き方はロールモデルともいうべきカッコいい生き方の一つ。第9話を振り返りながら、百合の生き方に迫ります。

「自由に生きる。美しくなる。」を体現してきた百合

百合はみくりの伯母で化粧品会社で働くいわゆる“キャリアウーマン”。49歳の独身で男性経験もないという役どころですが、みくりのよき相談相手で、可愛らしさもあわせ持つ大人の女性です。

第9話では、百合が手がけてきた化粧品のコピーを軸に、百合が仕事や世の中に対してどう向き合ってきたかが描かれました。

百合が手がける化粧品は「自由に生きる。美しくなる。」がキャッチコピー。好きな仕事に向かい、凛とした姿勢で立ち続ける百合は、まさにこの広告のお手本といってよく、彼女自身もそのことを強く意識しています。

しかし、同じ商品の地域限定広告のコピーに「細胞まで愛されたい。めざせモテ肌。」という真反対のコピーが使われていることが発覚。いわゆる“ダサピンク”に彩られたコピーにざわつく百合や百合の部下、そして百合の同期の女性たち。その場は一度は「見なかったフリをしようか」という意見に傾きかけたものの、百合は「そういうわけにはいかない」とつぶやき、コピーを撤回するよう上司に直談判に行きます。

そして、残された部下たちの前に、百合の同期の女性が登場。そこで、実はゴダール化粧品(百合が働く会社)も昔は「モテ」や「愛され」と言った男性目線のコピーを打っており、その状況がなかなか変わらなかったこと、百合が出世したことで方針がやっと変わったこと、百合の働きぶりが同期の女性たちの希望になっていることが明かされるのでした。

「独身だから必死」 そんな悪口くらいでは傷つかない?

百合の直談判に「異性にモテたいのは人間の自然な感情でしょ」ともっともらしく返答する“オヤジ脳”の上司。そんな上司に百合は「そうしたコンセプトのメーカーがあるのは構わないし、それを否定するつもりもありません」と前置きしつつ「私たちが10年間守ってきたイメージは『自由になるために美しくなる』。(それを覆すような)広告を(顧客である)彼女たちが見たらどう思う?」と訴え、上司を説得するのに成功するのでした。

見事、上の決定を覆した百合でしたが、帰り際に「融通が利かない」「未だに独身なのがわかる気がする」「それもあって必死なんだよ」という偏見にまみれた上司たちの陰口を耳にします。しかし、そんなオヤジたちの悪態にも特段傷ついた表情も見せない百合。そんなことはこれまでにも散々言われてきたというような、どこか諦めにも似た表情をしたように見えたのは筆者だけではなかったはずです。

「だから私はカッコよく生きなきゃって思うのよ」

その夜、行きつけのバーに寄ることなく帰りかけた百合を呼び止めたのは平匡の同僚の風見でした。たまたま見かけた「自由に生きる。美しくなる。」という広告に「百合さんが作っているんですよね? かっこよくて好きです」と感想を漏らす風見。百合は「男の人にそう言ってもらえるのは嬉しい」とホッとした表情を見せ、胸の内を吐露します。

「与えられた価値に押しつぶされそうな女性たちが自由になる。自由だからこその美しさ。例えば、私みたいなアラフィフの独身女だって、社会には必要で誰かに勇気を与えることはできる。あの人ががんばっているなら自分ももう少しやれるって。今1人でいる子や、1人で生きるのが怖いっていう若い女の子たちが『ほら、あの人がいるじゃない? 結構楽しそうよ』って思えたら少しは安心できるでしょ。だから私はカッコよく生きなきゃって思うのよ」

百合の“告白”は、「女は美しくあれ」「女は若い方が価値がある」「女は結婚するもの」……という、女性に生まれただけで世間から押し付けられる価値観にがんじがらめになって生きる、多くの女性たちの胸を揺さぶる言葉だったのではないでしょうか?
 
そんな百合に風見は「そんなこと、言わないでください」と優しく言葉をかけます。風見の言葉に思わず涙をこぼす百合。

いつの間にか百合自身も「年下の女の子たちのためにも、カッコよく生きなきゃ」「カッコいい女姓にならなきゃ」という使命感にがんじがらめになっていたのかもしれません。

自分自身の足ですっくと立ち、仕事に向き合い続けるアラフィフの百合は、20、30代の女性たちにとって憧れの存在。しかし、百合は百合で「カッコいい女性にならなきゃ」「同期の分も頑張らなきゃ」と必死に生きてきたのでしょう。

カッコよく、しなやかに生きる百合。第9話は、そんな百合も水面下では必死に世間の荒波にあらがったり、時には波に流されたフリ(?)をしたりしながらなんとか泳いできたことがひしひしと伝わる回でした。百合ら先輩の女性が開拓してきた道を私たちはどう歩いていくのか、「いや、私も荒野を開拓する!」と、また新たな道を見つけて道なき道を行くのか、あるいは他人の価値観で舗装された道を行くのか……。

どの道を行くにせよ、それは私たちが自分で決めること。百合の生き方から見えてくるのは、自分で決めた道を歩いてきたからこそ得られるモノが、女性を美しくするということなのかもしれません。

(編集部)