カプコンのゲームシリーズ「バイオハザード」を原作として、2002年に映画「バイオハザード」が制作されました。ゲームには出てこないオリジナルの主人公であるアリスをミラ・ジョヴォヴィッチが演じたこの映画シリーズは2004年「バイオハザードII アポカリプス」、2007年「バイオハザードIII」、2010年「バイオハザードIV アフターライフ」、2012年「バイオハザードV リトリビューション」と作品を重ね、とうとう2016年12月23日に日本で最速公開される「バイオハザード:ザ・ファイナル」で完結を迎えます。

今回、シリーズを支えてきたポール・W・S・アンダーソン監督に話を聞く機会があったので、映画シリーズやゲームとの関係について、いろいろと語ってもらいました。

GIGAZINE(以下、G):

映画「バイオハザード」シリーズはこの「バイオハザード:ザ・ファイナル」で完結します。アンダーソン監督はシリーズの完結について「作品が皆さんに愛されているうちにスペクタクルな形で終わらせたかった」と以前行われたインタビューでお答えになっています。「スター・ウォーズ」にも迫る六部作という大きなシリーズとなったこの作品について、もともと、どれぐらいの広がりを考えていたのですか?

ポール・W・S・アンダーソン監督(以下、アンダーソン):

「長いシリーズになったらいいんだけれどな」というのは「夢として見ていた」程度のことです。作品が成功してうまく続けばいいなというのは映画監督なら誰しも思うものですが、第1作目をベルリンで撮影しているときには、6作目を携えてこうして日本でインタビューを受けているなんて想像もしていませんでした。ただ、どうストーリーを展開するかというアイデアだけはあったので、最後の最後で「アリスには実はこんな真実があった」や「アンブレラ社とはこういう関係だった」ということを明かすのを、15年間ずっと抱えていました。



G:

最後の戦いの舞台が「ハイブ」だったことで、アリスの戦いの旅が「一周」したことに感慨を覚えました。当初から「いつかはハイブに戻ってくる」ということを考えておられたのですね。

アンダーソン:

その通りです。円を描くように原点への回帰、つまりラクーンシティ、そしてハイブへ戻るということを意識して作っていました。アリスは記憶を失っているので、出自を探るためには始まりの地へ戻らなければなりませんから。それに、作品を見ている人が映画を1作目からまた見直したくなるようにできればいいなということも考えました。

G:

「ハイブ」では見たことのある通路やトラップが出てきて、とても嬉しくなりました。特にワン隊長がやられてしまったレーザートラップの再登場には胸が躍りました。このトラップの登場も構想の早い段階から決まっていたことですか?

アンダーソン:

そうですね、今回は「ハイブ」でもまだ見たことのないエリア、たとえば換気用の巨大ファンが出てきたり、ブラッドショットのような新しいクリーチャーが出てきたりするのですが、心臓部に近づくにつれて、見たことのある光景が出てくるようになります。実は、1作目の時に使用した設計図が残っていたので、全く同じものを作ることができたんです。だからこそ、レーザートラップも登場するというわけです。ただ、1作目のときのアリスはレーザートラップの部屋で起きたことを傍観するしかできませんでしたが、今回は自らが挑むことになっています。

G:

この映画シリーズではアリスを主人公として、ゲームとは違う「もう1つのバイオハザードワールド」が描かれていますが、ゲームに新しく出てきたクリーチャーが映画に取り入れられたり、逆にレーザートラップがゲームに出たりと、お互いに影響を与え合っていますね。

アンダーソン:

映画とゲームの関係の話でいうと、もともとゲームにインスパイアされて生まれた映画ですが、ゲームにはいないアリスという主人公を据えて「ゲームとは異なるストーリーにする」ということは強く意識してきました。……というのは、ゲームの「バイオハザード」はホラー要素も強くて思わずびっくりしてしまうシーンも多々あるのですが、同じことをしてしまうと予測できてしまいますから、そういう展開はやらないようにしよう、ということでした。それこそ、誰が生き残るのか、誰が死ぬのか、「実はウェスカーが悪役だった!」ということがそのままだったら、ゲームをプレイした人には驚きがないですよね(笑)

G:

確かに(笑)

アンダーソン:

「驚き」というのはすごく大事で、例えば僕の大好きな映画「エイリアン」でいうと、まだ見たことのない人に向かって「シガニー・ウィーバーしか生き残らないよ」「ジョン・ハートのお腹をエイリアンが食い破って出てくるんだ」なんて言ってしまうと、楽しみがなくなってしまいますから、そういうことにはならないようにと意識して制作を行いました。そのため、1作目はアウトブレイクの起きる前に何があったのかということを描く前日譚(プリークェル)という形にすることで、誰が死んでしまうのか、誰が生き残るのかがわからないようにして、「既視感」がないようにと考えました。

G:

なるほど。

アンダーソン:

もう1つ大事にしたことは、ゲームをプレイしたことのない人でも楽しめる作品にするということです。アリスを主人公にすることで、観客は彼女の目を通して作品を追うことになります。しかし、アリス自身が記憶を失っていて「バイオハザード」の世界のことを何も知らない状態なので、観客のアバターになってくれて、一緒に世界のことを知りつつ進んでいけるというわけです。



一方で、出てくるクリーチャーや舞台、さらにカメラアングルについては、ゲームに非常に忠実に作られていて、プレイしたことのある人には「この映画はゲームを愛する人が作っているんだ」ということが伝わるようになっているんじゃないかと思います。映画で描かれている世界はゲームに対してパラレルワールドではありますが、間違いなくDNAを受け継いだ作品だということが感じてもらえると思います。

G:

ちょうど本作の公開とゲーム「バイオハザード7 レジデント イービル」の発売は近い時期になりましたね。

アンダーソン:

ゲームも最初はサバイバルホラーから始まって、だんだんとアクション重視になっていったのですが、今回の「バイオハザード7」ではまたサバイバルホラーへと原点回帰しますよね。映画も同じように、当初は密室劇でしたが、だんだんとスケールが大きくなってアクションも重視される作品になっていき、この「ザ・ファイナル」ではアクションを残しつつも、後半の舞台が「ハイブ」なので、またサバイバルホラーのような雰囲気に戻ってきました。これだけ怖い映画というのを、僕はこれまでに作ったことがないんじゃないかというぐらいにハラハラする仕上がりになっていますよ(笑) 観客の皆さん、ビビって飛び上がってしまうかもしれませんが、そんな皆さんと一緒に作品を見るのが楽しみです。

本作のオープニングではアリスはまた1人になっていて、しかもナイフすら持っていないという裸一貫の状態ですが、これは「バイオハザード」1作目の設定みたいなところがありますね。銃はあるけど弾はなく、ナイフが手に入ればそれだけで嬉しいという(笑)



G:

ありますね(笑) 今回の映画での「驚き」の1つには、レッドクイーン役を監督とアリス役のミラ・ジョヴォヴィッチさんの娘であるエヴァ・アンダーソンさんが担当しているという点があります。ちょうど「バイオハザードIII」の日本公開日がエヴァさんの誕生日だったという、シリーズ制作の間に生まれた娘さんなわけですが、本作でエヴァさんをレッドクイーン役にというのはどうやって出てきたアイデアなのですか?

アンダーソン:

レッドクイーンというのは難しい役どころで、こなせる子役がそう多くないんです。子どもの姿はしているけれども大人のような言動ですし、発言内容も複雑です。それに感情表現の面でも求められるものが多々あります。娘は幼いころから……まだ幼いんですけれど(笑)、ずっと「女優になりたい」と言っていたんです。私もミラもそれ自体は反対ではありませんでしたが、やるからにはしっかり台本が読み込めなければいけないので読書力を鍛えて、本来の学年相当よりも高い力をつけさせましたし、お芝居の教室にも連れていきました。すると、どうやらエヴァはミラの才能を受け継いでいるなと感じるようになりました。そこで実際にレッドクイーンに配役したというわけですが……エヴァを見て「なかなかやるな」と思わされましたよ(笑) 他にも理由はありますが、まずは映画でのレッドクイーンを見ていただきたいです。



実はメインビジュアルにもこっそりと登場しているレッドクイーン。本作の根幹に関わる存在なので、要注目です。



G:

アンダーソン監督はもともとゲームが大好きで、「バイオハザード」の1〜3のプレイ時には自分がまるでゾンビみたいな容貌になるほどにハマったとか、ゲームにのめり込みすぎて連絡が取れなかったという逸話があります。そんな監督が、今度は「モンスターハンター」の映画を制作することが発表されました。

アンダーソン:

「モンスターハンター」は前から大好きだったんですよ。それで、カプコンの方と話をする機会があったのが「バイオハザードIV アフターライフ」を撮影していた2009年ごろだったと思います。「バイオハザード」と同じように、「ゲームの世界を愛していて、映画にしたい」という、純粋なファンとしての気持ちが高じた結果ですね(笑)

G:

非常にお忙しそうですが、かつてのようにゲームに没頭するような時間は確保できていますか?

アンダーソン:

それが……2人の子どもがいて、こうやって大きなシリーズを抱えているので、なかなか時間が取れないんですよ(笑) 特に、今は「バイオハザード:ザ・ファイナル」をようやく仕上げたあと、すぐ飛行機に飛び乗って出てきましたから、空港にいるわずかな間にiPhoneで「プラントvs.ゾンビ」を遊べたら幸いというぐらいのもので、最近の流行からは置いて行かれています。あとは、娘が「マインクラフト」をするのが好きなので、それを眺めているとかですね(笑)



G:

なるほど、そんなご多忙な中でお時間をいただき、ありがとうございました。

映画「バイオハザード:ザ・ファイナル」は世界に先駆けて、2016年12月23日から日本で最速公開。公開されている新予告編では、インタビューの中で出てきたレーザートラップのシーンも見ることができます。

映画『バイオハザード:ザ・ファイナル』新予告編 - YouTube