間宮夕貴は肉食女子の役に挑戦

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 1970〜80年代後半に人気を博した成人映画レーベル「日活ロマンポルノ」を5人の実力派監督が復活させる「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の1作で、第69回ロカルノ国際映画祭のコンペティション部門で若手審査員賞を受賞した「風に濡れた女」の塩田明彦監督と主役を務めた間宮夕貴が、映画.comのインタビューに答えた。

 塩田監督のほか、行定勲、白石和彌、園子温、中田秀夫らが結集し、上映時間80分前後、10分に1回の濡れ場を入れる、製作費は全作品一律、撮影期間は1週間、完全オリジナル作品といった統一ルールでロマンポルノに初挑戦した。「黄泉がえり」「カナリア」「どろろ」で知られる塩田監督による本作は、俗世から離れて山小屋で暮らす男・高介(永岡佑)と正体不明の肉食女子・汐里(間宮)の本能むき出しのラブバトルを、オフビートな笑いを織り交ぜて描いている。

 「女は卒業した」とうそぶくインテリ肌の劇作家・高介は、猪突(ちょとつ)猛進な汐里に“ロックオン”されてまとわりつかれるうち、捨てたはずの性欲に押さえが利かなくなっていく。あっけらかんとした性描写が本作の大きな魅力だが、塩田監督は「(ロカルノ映画祭で)賞をくれた人たちは、ヨーロッパの各地で映画を専攻している若い学生たちだったんです。そのうち、20人中15人くらいが女性だった。どうも女性から見てとても面白い映画を作ったんだな、というのはその際に感じました。不思議なくらいどこの国に行っても女性たちの熱い支持を受けている」と述懐。本作の女性人気の高さは「ヒロインが、ただ生きることをおう歌している自然そのものみたいな人で、観客を爽快な気分にさせるみたいです」と間宮演じた汐里のキャラクター性に起因すると分析する。

 間宮は「甘い鞭」や「屋根裏の散歩者」でも過激シーンに果敢に挑戦しているが、「シナリオを読んだときに、“この女の子はなんなんだ”というのはすごく思いました。謎が多いこの役を私はやれるのかという不安はすごくありましたね」と汐里の強烈なキャラクターに当時は戸惑いがあった様子。役作りの困難さに加え、本作の撮影は「ほぼアクション。短パンが多かったので、足が傷だらけになっちゃった。勲章です」と振り返る。

 劇中でも、欲望むき出しのラブシーンはもとより、高介と取っ組み合ったり、肩車状態から突き落とされるといった体を張ったアクションに挑んでいる。中でも、防波堤で読書をしている高介の前に自転車に乗った汐里が現れるや否や、海に突っ込んでいく出会いのシーンは強烈な印象を残す。間宮は「今だにあのシーンを見ると緊張でがちがちに固まっちゃう」と苦笑い。「リハーサルで監督に『ブレーキをかけないで、海に入ってもこげるところまでこいで』と言われて(待機場所から)ぱっと前を見たら、(監督やスタッフの)集団から紫色の殺気が出ていて『ヤバい! 1度でもミスしたら海に沈められる』と(笑)。死ぬほど怖かったです。今までの人生の中で1番緊張しましたね」。

 本作の肝いりのシーンであることがうかがえるエピソードだが、塩田監督は「大好きなロマンポルノ作品である『恋人たちは濡れた』の自転車が海に突っ込むラストシーンが昔から目に焼きついていて、それを出会いにしようとだけ決めて脚本を書いた。この映画の核となっているシーンだから、絶対に成功させなければならない。でも、撮影時間は午後のこの時間じゃないといけない、失敗したら撮り直せないよというシチュエーションだったんです。相当プレッシャーをかけていたみたいで(笑)」と回想する。追い込んだかいあって「どこの国に行ってもウケる。息をのんでいる感じが伝わるんです」と胸を張る。くだんのシーンをはじめ「こだわったポイントは全編アクション。とにかくこの映画は、出演している俳優たちが(自らの肉体表現や演技によって)面白さを作り上げていくのが最大の武器なわけです。俳優たちが魅力的に見えればこの映画は面白い、彼らのやることなすこと全部がアクションでありたいと思っていました」と出演陣への信頼をのぞかせた。

 「風に濡れた女」は、12月17日から東京・新宿武蔵野館ほか全国順次公開。