北朝鮮の中でも最も寒い北部山間地域。11日の朝鮮中央テレビはお天気コーナーで、両江道(リャンガンド)白岩(ペガム)の気温が氷点下25度まで下がり、全国で最も寒かったと伝えている。

そんな極寒の地で暖房は命にかかわる問題だが、市場経済化の進展で格差が広がる北朝鮮では、暖房用の燃料にも格差が現れるという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

薪集め禁止令

金正恩党委員長は、2015年の「新年の辞」で「森林の回復戦闘を力強く繰り広げ祖国の山々を緑の森に覆われた黄金山に転換させなければならない」と、緑化事業を大々的に推し進めることを宣言している。

金正恩氏の指示に基づき、当局は全国各地の苗木を育てる施設を拡充し、緑化事業を進めている。しかし、山にある個人耕作地を取り上げ、苗木を植えるという強引な方法が反発を呼んでいる。

一方で当局は、山林を監督する人員も大幅に増員。禁止となった薪集めの取り締まりに当たらせているが、一向に減る気配を見せていない。

石炭より薪が人気

北朝鮮では全国的に石炭が使われているが、両江道の人々は薪にこだわる。薪は手間がかからず、火力が強く、安価だからだ。薪集めは禁止されているが、市場での売買はどういうわけか禁止されてない。

庶民の使う低灌木は1立米30元、中間層の使う普通の木の枝は75元で売られている。一方、幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)の間で人気が高いのは、丸太を割って作った薪だ。こちらは取り締まりの対象となるため、裏で取引されており、1立米あたり100元もする。

雑灌木すら買えない貧困層は、落ち葉をかき集めて煮炊きに使っているが、燃焼時間が短いため、暖房には使えない。ちなみに、一般家庭で春までに使う薪の量は2.5立米だ。

薪が好まれる風潮は、他の地域にも広がりつつある。

薪が好まれる理由

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、幹部やトンジュの間では、褐炭や練炭ではなく丸太を割った薪の人気が高まりつつある。

石炭による一酸化炭素中毒事故が頻発しているからだ。治療するには、高圧酸素の機械の装置が必要だが、どこの病院にでもあるわけではない。薪を使えば中毒のリスクが低くなることから、「保険」のようなものだ。

薪用の木を切り出すことは当然違法で、山へと繋がる道には何重にも検問所が設けられているが、「どうやって運んだのか理解に苦しむ」と、情報筋は述べている。

金正恩氏が緑化事業を進め、土壌の流出による災害を防ぎ、農業生産を増やそうとする方向性そのものは正しい。しかし、燃料問題を解決せず、緑化を強引な方法で進める限り、森林の回復は進みそうにない。