【試乗】使い勝手抜群! ダイハツ・トール&トヨタ・タンク&ルーミー

写真拡大 (全53枚)

パワーユニットは1リッターのターボと自然吸気

ダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンクは、ダイハツが企画、開発、生産のすべてを担い、ブーン、パッソをベースにした、トヨタ全チャンネルにOEM供給する両側スライドドアを備えた”容量系”コンパクトカー。

もちろん軽自動車を起点とする小型車開発のメリットを最大限に生かし、タントなどダイハツ軽で培ってきたパッケージング、スマートアシストと呼ばれる先進安全技術などを惜しみなく投入しているのが特徴だ。

そして全幅1670mm、最小回転半径4.6mのコンパクトネス、小回り性の良さがもたらす扱いやすさが光る街乗りから、ダイハツのこだわりでもある直列3気筒1リッターにして1.5リッター並みの余裕ある新開発ターボエンジンによるロングドライブ、そして全高1735mm、室内高1355mmのゆとりと多彩なシートアレンジ&アクセサリーによる車中泊にまで応えてくれる2列シートミニバン的なマルチパーパス&1LD性能の持ち主でもある。

搭載されるパワーユニットは、まずブーン・パッソから譲り受けた定評ある直列3気筒1リッターNA(自然吸気)、69馬力/9.4kg-m(最高24.6km/L)。

および前記の新開発直列3気筒1リッターターボ、98馬力、14.3kg-m(21.8km/L)の2種。

トランスミッションはいずれも専用のギヤ比を持つCVT。足まわりも基本はブーン・パッソのものだが、バネは全高に対処し硬めのセッティング。ダンパーもそれに対応する乗り心地重視の専用チューンとなっている。

なんと顔だけで4種類から選択可能

ツートーンルーフも用意されるエクステリアデザインはボクシーかつワイド感を強調した、エッジが効いたデザイン。顔はトールとタンク、トールカスタムとルーミーカスタム、ルーミー、タンクカスタムの4種類。グレードは2WDだけで8種類も揃い、ボディーカラーはツートーンも含めると14色もある大所帯である。

全車ブラックで統一されたインテリアのインパネは質感の高い水平基調のデザイン。ナビ、CVTセレクター、エアコンコントローラー部分のパネルは高級感あるピアノブラックが基本となる。

注目したいのは豊富かつ実用的な収納。ペットボトルが数本入る容量のインパネセンター大型ボックスは脱着式で、ゴミ箱にもなる仕掛け。

インパネ左右の回転式カップホルダーは閉めるとスマホを置くのにちょうどよく、展開するとペットボトル、500ml〜1Lの紙パックが入るアイディアが光る。

また、時計やギヤ表示、外気温計、各種アニメーションなどが表示できるインパネセンターに用意される4.2インチTFTカラーマルチインフォメーションディスプレーの左右には、後席へエアコンの風を送る吹き出し口が備わり、後席の乗員、ペットへの空調配慮にもこだわりを見せている。

シートはかけ心地の良さで定評あるダイハツ最新のムーブキャンバスと同じ骨格。後席ダイブイン機構はタントのものを流用。ダイハツ軽の財産、アイディアを積極的に採用。後席6:4分割のシートは240mmスライドと70度のリクライニング機構を備え、ラゲッジの奥行きを500〜740mmに可変できる。

ちなみに身長172cmのドライバー基準での後席ひざ回り空間は最大385mm。これはブーン・パッソの同210mm、シエンタ2列目席の同220mmをしのぐだけでなく、トヨタのMクラスミニバン、ヴォクシー・ノアの2列目席ベンチシートの同300mmを圧倒する広さ。

Bピラーの大型アシストグリップは子供用兼用と気が利いている。

ラゲッジは後席を前出しすることで、機内持ち込みサイズのキャリーケースを4個積めるのだからかなり実用的。さらに後席をダイブイン格納することで26インチの自転車が2台積み込めるのだから文句なし。

リヤボディー形状の都合でフロアに対してやや高くセットされた多機能デッキボードは反転すると防汚シートが畳まれていて、それを展開するとラゲッジフロア全体が防汚仕様になる仕組み。自転車、アウトドア&スポーツ用品の積載はもちろん、ペットを乗せるにも好都合のかつてないアイデア、配慮と言える。

街乗りならNAでも十分! 高速とフル乗車もするならターボを選択

そんなダイハツ・トール、トヨタ・ルーミー/タンクのNAモデルを走らせれば、同エンジンを積むブーン・パッソより160kg以上重いボディーを苦もなく発進させる。すでに説明したように、CVTのギヤ比の専用化、アクセル開度などのチューニングの恩恵だ。

パワーステアリングは軽く扱いやすく、エンジンは例によって3気筒感(振動、ノイズ)がほとんどなく、軽やかでスムースに回る。余裕ある動力性能とは言い難いが、街乗りメインで、活発な加速、走りを望まなければ必要十分。エンジンがうるさくなるのは2500回転からだが、80km/h巡行時のエンジン回転数はジャスト2500回転だからほとんど問題にはならないはずだ。

165/65R14サイズのタイヤを履いた乗り心地もまた軽やかなもので、感動するほどの快適感はないものの、この車高のコンパクトカーとしてはリーズナブルなタッチに終始。ブレーキの利き、ペダルフィールにも不満はない。

ただし、気になった点がいくつかある。まずはメーターの位置。身長172cmのボクがシートハイトコントロールを一番下にセットした状態でも目線をかなり下げないと視認できない位置にある。ナビ画面の中心が、2連メーターリングの12時の位置にある、というイメージだ。

そしてシート座面が短く感じられること。これはちょっとアップライトすぎる着座位置、シートサイズに加え、座面先端が硬く感じられ、太股裏のセンサー(!?)がシートを短く感じさせるところに理由があると思われる。シートをもう少し低くセットできれば、メーターの見え方とともに解決できるかもしれない。

一方、ターボモデルは196万5600円に達する、唯一15インチタイヤを履く最上級のカスタムGターボSAII、カスタムG-Tに試乗した。

動力性能はもちろんNAモデルをがぜん上まわり、パワフル。それもターボを感じさせない1.5リッター級NAユニットを思わせる自然なパワー、トルクフィールが好ましく、出足から静かで滑らかに速度を上げていく。3気筒感皆無に近い走りだしの上質感という意味でもこちらが圧倒する。

全体的な静粛性も高い。80km/h走行時のエンジン回転数はNAの2500回転に対して1600回転とごく低く、加速重視のスポーツモード(NAではSモード)にセットしても2800回転にとどまる(NAのSモードでは3600回転にハネ上がる)。高速走行、フル乗車の機会が多いなら、迷わずこちらを薦める。

ただしターボモデルは2台試乗したどちらも2000回転付近でコーッというこもり音が発生するのが気になった。その症状は新開発のターボエンジンのみ。早期の改善に期待したい。

パワーステアリングの操舵感はタイヤサイズの違いもあってNAモデルよりやや重目になるものの、扱いやすい範疇。全高、重心高に気づかったステアリングの穏やかな応答性もまたNAモデルに近い。

15インチタイヤを履く乗り心地はマイルドなもので、段差の乗り超えもしなやかにこなしてくれるのだが、標準の14インチタイヤでは発生しない、マンホールなどの突起を踏んだときにポコポコするノイズが、気になる人は気になるかもしれない。

総合的なお薦めグレードは、やはり自動ブレーキ(約50km/h以下で作動。歩行者は検知せず)、対歩行者も検知する衝突警報機能、後方誤発進抑制機能、先行車発進お知らせ機能など、今や最低限の5つの先進安全装備をパッケージ化したスマートアシスト兇備わったグレードだ。

基本的な実用性の高さ、使い勝手のよさはグレードを問わないから、標準系、カスタムかは好み、NA、ターボかは予算、使い方で選べばよい。すでに述べたように、NAでも街乗りではまったく不満のない、速度に乗ればスルスル静かな動力性能を備えているからだ。

(文:青山尚暉/写真:小林 健)

画像ギャラリー