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第2次世界大戦中にナチス・ドイツがユダヤ人を大量虐殺した「ホロコースト」は、ヨーロッパ世界に大きな傷跡を残した史実として知られています。しかし、Googleでホロコーストを検索してみると、「ホロコーストは事実ではない」という主義・主張のサイトが、日常生活とは比較にならないほど目にしてしまう現状があるそうです。

Google is not ‘just’ a platform. It frames, shapes and distorts how we see the world | Opinion | The Guardian

https://www.theguardian.com/commentisfree/2016/dec/11/google-frames-shapes-and-distorts-how-we-see-world

Google検索ではある程度まで文字を入力すると、検索候補を予測して表示する機能があります。この機能によって、Googleで「did the hol」まで入力すると、「holocaust(ホロコースト)」に関する検索候補が提示されます。ヨーロッパ諸国では非常にセンシティブな話題であるホロコーストについて検索する人が多いため、Googleの予測候補にホロコーストが挙がってくるのは、自然なことだと言えます。

しかし、ホロコーストについて調べようと、「did the hol」まで検索して現れる記事のトップは、「Top 10 reasons why the holocaust didn't happen.(ホロコーストなど起こっていないと言える10の理由)」という、ホロコーストという事実はなかったとするネオナチなどの一部の団体の主張に沿う記事が出てくるとのこと。なお、検索上位第3位にも「The Holocaust Hoax; IT NEVER HAPPEND (ホロコーストの作り話;それは決して起こっていない)」という、ホロコーストの事実を否定する記事が現れます。第5位にも「ホロコーストが起こっていないことを示す50の理由」、第7位はYouTubeの「ホロコーストは本当に起こったのか?」というムービー、第9位にも「ユダヤ人によるホロコーストの嘘」など、ホロコーストを否定する記事が上位に表示されるそうです。



Googleは、常々「最も信頼できるソース(情報源)は、インターネット上で事実かどうかを質問することだ」と言うものの、ホロコーストの検索結果によれば、上位に事実を否定する記事が上がってくることから、集合知により正しいものが残り、間違った内容のものは駆逐されるというわけではないとThe Guardianは指摘しています。

Googleは検索結果でどのような記事を上位に表示するかの決定権があり、独自のアルゴリズムを日々改良していることが知られています。そして、そのアルゴリズムが変更される度に、不当に検索上位に表示されるような細工を施すSEO技術も追随するため、いわゆるいたちごっこのような状態が続いています。ホロコーストを否定する、差別主義的なイデオロギーによって生み出されるヘイトサイトは、Googleのアルゴリズムを逆手に取っているのに成功しているとも言えそうです。しかし、Googleは「ホロコーストなんて実際にはなかった」という内容のヘイトサイトを検索結果に表示することで広告収益を上げているという事実を勘案すると、Googleはこの事態を放置することは許されないとThe Guardianは述べています。

データ科学者のキャシー・オニール氏は、Googleの立場を「共謀者」と述べています。Googleは今や単なる検索サービス提供企業と呼ぶには似つかわしくないほど支配的な地位を有しており、多くの人が調べものをするときに「とりあえずGoogle検索」というような行動をとっている現状に照らせば、Googleは単なるプラットフォームではなく社会の意思形成に深く関与する「インフラ」のようなものであり、Googleには事実にそぐわない検索結果を正すべき義務があり、これを野放しにしている以上、差別主義者の片棒を担ぐ共犯である、というわけです。



とはいえ、Googleにアルゴリズムだけでなく人間の判断に基づいて検索結果から記事の排除をしたり、表示順位を変えたりするように要求することは、常にバイアス(偏見)が生じ得る危険を伴うため一筋縄ではいかないのも事実です。何が正しく、何が間違っているのかを検索結果の段階で峻別することは、「検閲」に近い性質があり、表現の自由を侵害するものとして許されるべきでないと言えます。Google検索のサービスが強大さを増し、インターネットインフラの地位を占めるようになったことで、Googleは非常に難しい問題に直面するに至ったようです。