アップルが今年10月後半に発売する予定だったワイヤレスヘッドホン「AirPods」はいまだ発売に至っていないが、ウォール・ストリート・ジャーナルなどの米メディアの報道によると、その理由は技術的な問題があるからなのだという。

音声同期技術の問題か?

 このAirPodsは、Bluetooth無線で「iPhone」や「Apple Watch」「iPad」「Mac」などの同社製機器と接続し、高音質で音楽などが楽しめるというもの。

 アップルは今年9月にスマートフォンの新モデル「iPhone 7」シリーズを発表した際、併せてこのAirPodsも発表し、「これまで体験したことのないような簡便さは、まるで魔法のようだ」と説明。この製品の販売を10月後半にも開始するとしていた。

 しかし10月後半になって同社は製品の準備が整っていないことを明かし、出荷にはまだしばらく時間がかかると説明。その後今になっても同社から発売時期に関する情報はなく、その理由についても明らかにしていないという状況だ。

 今回の報道によると、AirPodsは一般的なワイヤレスヘッドホンのように片方のヘッドホンで信号を受け取り、それをもう片方のヘッドホンに送るのではなく、左右両方のヘッドホンが独立して信号を受け取る方式をとっている。

 しかしこれに関し、アップルは左右の音声を同期する技術を確実なものにする必要があると事情に詳しい関係者は話しているという。

 このほかアップルは、ユーザーが片方のヘッドホンを紛失してしまった場合や、バッテリーが消耗した場合の解決策も見いださなくてはならない。

 さらにAirPodsには、マイクのノイズキャンセリング機能や、屋外使用時における音質維持といった課題もあると無線技術の専門家らは話しているという。

アップル、クリスマス商機逃す

 いずれにしても、アップルはいまだこの製品の準備ができてないもよう。AirPodsはクリスマスの贈り物として最適と見られていたが、アップルは大きな商機を逃したようだと業界関係者は話しているという。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アップルが新製品の発売を延期したのは、2010年の「iPhone 4」ホワイトモデル以来のこと。今回の発売遅延はアップルにとっては大きな痛手であり、非常にめずらしい“つまずき”だと同紙は伝えている。

ヘッドフォンは新たなユーザーインタフェース

 AirPodsの価格は159ドル(日本では税別1万6800円)と、他社の一般的なワイヤレスヘッドフォンと比較して割高だ。だが、AirPodsは音楽を聴くための機器としてだけでなく、新たなユーザーインタフェースとしても注目されている。

 例えば、AirPodsには独自の「W1」チップを搭載しており、これと光学センサー、モーション加速度センサーが連携する。これにより、ユーザーが装着しているか認識し、音楽の再生、停止を自動で行う。

 また、どちらかのAirPodをダブルタップすれば、アップルの音声アシスタントサービス「Siri」が起動し、「○○さんに電話して」「○○を再生して」「音量を上げて」「○○への行き方は?」といった命令も可能。

 そして、こうしたイヤホン型の情報入出力装置は、ウエアラブル機器の1つとして注目されているという。

 例えば米国の市場調査会社、IDCが定義するウエアラブル機器には、Apple Watchに代表されるような「腕時計タイプ」やフィットネストラッカーなどの「リストバンドタイプ」のほか、イヤホンなどの「イヤウエアタイプ」、めがね型などの「アイウエアタイプ」などもある。

 このうち、ウエアラブル機器市場で現在主流となっているのは腕に装着するタイプ。だがイヤウエア、アイウエアやといった他の形態のウエアラブルも今後出荷台数が伸びると予測されている。

 これに伴いイヤウエアなどの用途は拡大し、やがては人間の能力を補う機器として普及していく可能性があると、IDCは予測している。 

筆者:小久保 重信