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By The Wild Blogger

ウェブメディアの収益源となる広告をすべて非表示にしてしまう、というのがブラウザ拡張機能の「Adblock Plus」です。広告が非表示になってしまうと収益が減ってしまうということで、これまでウェブメディアと広告非表示サービスは幾度も戦いを繰り広げてきており、広告非表示サービスの利用者にサイト内コンテンツを表示しないサイトや、広告ブロックサービスの代名詞的な存在であるAdblock Plusを訴える企業もいました。そんな中、ドイツのニュースサイトや大手メディアがこれまで何度も「Adblock Plusは違法だ!」と訴えてきたのですが、メディア側はついに6度目の敗訴を喫しています。なぜAdblock Plusは合法なのか、その理由をドイツの裁判官が説明しています。

German judges explain why Adblock Plus is legal | Ars Technica

http://arstechnica.com/tech-policy/2016/12/german-judges-explain-why-adblock-plus-is-legal/

2016年11月、Adblock Plusの開発元であるEyeoはドイツの裁判所でメディアからの「Adblock Plusは違法だ」という訴えを退けました。訴えを起こしたのは発行部数がヨーロッパで最も多いニュース週刊誌のデア・シュピーゲルであるにも関わらず、裁判官は「Adblock Plusは合法」という判決を下しています。

英語に翻訳された判決文によると、訴えを起こしたのはデア・シュピーゲルの運営するニュースサイトのSPIEGEL ONLINE。デア・シュピーゲルはオンライン上のユーザーには「サイト上で無料で提供されるニュースコンテンツを読み、いくつかの広告を見る」という行為をセットで提供していると主張したそうです。そして、ユーザーはサイトのコンテンツにアクセスするかしないかの自由を持っているのに対し、Adblock Plusは一体となっていた「ニュースを読む」と「広告を見る」という行為を許可なく分解し、それが機会損失につながったとして訴えを起こしています。加えて、Adblock Plusの開発元であるEyeoの行いは不公正な競争を生み出すものであり、コンテンツの提供を止めることにつながる可能性もある、と主張しています。デア・シュピーゲルは全ての広告ブロックサービスに対して罰金の支払いを要求しており、さらにはAdblock Plusのウラジミール・パラント氏とティル・フェイダ氏に対して最大2年の拘禁を求めていました。



By TechCrunch

これに対して裁判所側は「原告側(デア・シュピーゲル)は、被告側(Eyeo)のビジネスモデルが原告の存在を脅かすものと主張している」「原告側がビジネスモデルを変えることは経済的に実現不可能なように思える」としています。この「経済的に実現不可能なように思える」というのは、サイトのユーザーが広告を含まないコンテンツを提供したとして、それに追加でお金を支払いたがるとは思えないとメディア側の状況をよく理解した見解にみえます。しかし、3人の裁判官で構成される審査員団は、Eyeo側有利の判決を下しました。

まず、裁判官は「デア・シュピーゲルが広告ブロックに対して何かできることがあった」と記しています。これは例えば、広告ブロックサービスを利用するユーザーにはサイト内のコンテンツを非表示にするなどの対策を指します。なお、デア・シュピーゲル側はこういったオプションは「長期的な解決策にはならない」と主張していますが、海外ニュースサイトのArs Technicaは、デア・シュピーゲルが「Eyeoが『意図的にデア・シュピーゲルの損失につながるように仕向け』、デア・シュピーゲルのマーケティングの邪魔をした」と、Eyeoがデア・シュピーゲルのビジネスに干渉してきたと主張するべきだったと述べています。

実際、Adblock Plusはデア・シュピーゲルの収益に影響を及ぼしているかは不明であり、広告ブロックサービスは全てのサイトに平等に効果を発揮するので、裁判官が「Eyeoがデア・シュピーゲルをターゲットにしている」と判断するには至りませんでした。そして、裁判官は「被告が原告の機会損失につながることをしたとはいえない。インターネット上のユーザーが(Adblock Plusのような広告ブロックサービスを使って)望まない広告を非表示にしたり、悪意のあるソフトウェアから身を守ったり、データ通信量をコントロールしたりすることに興味を持つことは正常なことだ」としています。



By Ray Weitzenberg

なお、2015年8月の時点でドイツでは955万のブラウザにAdblock Plusがインストールされており、これはドイツでインターネットにアクセスするために使用されるコンピューターの約5%にもなるとのこと。さらに、Adblock Plusが機能していても広告が表示されるホワイトリストに登録されているウェブサイトの数は3500件で、そのうち10%がEyeoにお金を支払うことでホワイトリストに入っているそうです。