誰かがウェブサイトを立ち上げて完全な作り話を投稿すると、そのヘッドラインが海外にまで出回ってしまう、そんなことがいまだかつてないほど簡単に起こる時代になりました。そのため、フィクションと真実を見分けることも、真偽が判別できない人たちとニュースをシェアするのも難しくなりました。幸いにして、ニュースの真偽を見分けるのはそれほど難しくないので、その方法をご紹介しましょう。

「風刺」と称して虚偽情報をでっちあげるサイトに注意する


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上記は、おおっぴらに話をでっちあげているサイトのヘッドラインを集めたものです。

虚偽のニュースが2016年の米大統領選の結果を決定したとまでは言わなくても、何らかの影響を与えたことは確かです。今年はまったくの作り話で読者の注意を引くことを意図するサイトの数が増加しました。こうしたサイトは、読者に誤解を与えるのがせいぜいで、悪くすると洪水のようにでっちあげ話を流し続けて正しい情報を駆逐してしまいます。「風刺」を自称したり、「娯楽目的」を主張することが多いのですが、その割に免責条項の明記はすっかり省略しているようです。こんなサイトのライターは記事の信憑性を装う気さえありません。

Paul Hornerという男性はこのようなサイトをいくつも作り、それっぽく見えるようにnbc.com.coやabcnews.com.coで終わるURLを所有しています。こうしたURLの最後についている余分な「.co」にお気づきでしょうか。この種のサイトが提供するのはでっちあげ記事ばかりなのですが、もともとの情報量が少ない人や世の中のことを考えるときの助けになる情報を求めている人は実話だと思ってしまいます。

Horner氏のサイトの1つは、オバマ大統領が大統領3期目に出馬すると主張しています。しかし、これはアメリカ合衆国憲法修正第22条に違反するのであり得えないことです。さらに、オバマ大統領が2016年の大統領選の結果調査と12月19日の「再投票」を命じる大統領命令に署名したとも言っています。これも違法なのであり得ません。こんな話は明らかにでたらめですが、ひょっとしたら本当かもしれないと思わせて人心を乱します。いずれにしろ偽情報は世間に広く出回ってしまい、論争の材料にされ、確証バイアス(自分の仮説や信念を指示する情報ばかりを集めてしまう傾向)の裏付けとなるものを求める人たちがたちまち食いつきます。結果として、こうしたサイトは莫大な広告収入を得ています。

Horner氏自身は「ワシントンポスト」のインタビューで、「記事の事実確認は読者の責任だ」と述べています。

ニューヨークタイムズも虚偽のニュースばかり載せるサイトを所有するBeqa Latsabidze氏に似たようなインタビューをしました。同氏は作り話を載せるのは、「金儲けだけが目的だ」と発言しました。

Horner氏もLatsabidze氏も自身のサイトは「風刺」であると主張していますが、嘘に騙される人がいなくなれば、こうしたサイトは儲からなくなるであろうことは明らかです。さらに悪いことには、Facebookは投稿記事の真偽に関わらず、読者の「いいね!」を載せる既得権を持っています。米Gizmodoの報告によれば、Facebookには虚偽のニュースを排除するツールがあるそうですが、記事の選別が偏向していると批判されることを恐れたため、そのツールは使われていません。そのため、友人やFacebookのトレンドニュースのモジュールからまったくの虚偽情報が入ってくる可能性があり、Facebookに載っているとまるで正確な情報であるかのように見えてしまうのは困ったことです。

虚偽のニュースばかり提供するサイトは至るところにありますが、そういうサイトは簡単に回避することができます。

怪しいと思うリンクをクリックする前にB.S. Detectorのような拡張子がついていたら、それが判断材料です。サイトのURLを見ても、主要なニュースサイトのほとんどは、別バージョンのURLを所有していても、「.com」や「.net」というドメインにリダイレクトされます。URLが「.co」のような見慣れたドメインで終わらないサイトの場合は、そのニュースサイトの名前をネット検索して実在するサイトかどうかまず確認しましょう。信頼度の高いドメインで見つからない記事は信用すべきではありません。最後に、サイトのフッターに注目してください。多くのサイトは「このサイトに書かれていることは風刺です」で始まる免責事項か、内容の正確性を保証しないことを示す文言を載せています。


正統派ニュースサイトの記事もファクトチェッカーで真偽を確認する


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このツイートは抗議団体が数台のバスで押しかけたと言っていますが、事実ではありません。それにも関わらずこのツイートを載せているサイトがいくつもありました。

情報源が怪しいニュースを見分けるのは比較的簡単ですが、正統派ニュースサイトにも作り話が載ってしまうこともあります。適切な調査や確認を怠ってニュースになりそうなことに飛びついてしまうせいなのですが、その結果、作り話がたちまち拡散してしまうことになります。後で訂正記事を載せたところで、たいていは最初の記事ほど世間の注目を集められません。これが、真実を報道するニュースサイトでさえ、虚偽情報を発信してしまうリスクのしくみです。

「ニューヨークタイムズ」は作り話が拡散した事例を検証しています。この事例では、Twitter利用者のEric Tucker氏が大統領選後の抗議団体事務所の近くで数台のバスを撮影し、抗議は「組織的なものではなかった」と言っていますが、そのツイートに「#fakeprotests」というハッシュタグが付いていました。このツイートは複数の小規模なニュースサイトで取り上げられましたが、その主張はでたらめでした。

さらに調査を進めると、そのバスはTableau Softwareという会社がカンファレンスのために手配したものだとわかりました。バスは抗議団体の人々を乗せておらず、いずれにしろ政治には一切関係ありませんでした。しかし、この作り話はソーシャルメディアで何千回もシェアされ、その頃には既に損害が発生していました。大手のニュースサイトでは取り上げられませんでしたが、「Right Wing News」や「The Gateway Pundit」といった極端な政治的志向をアピールする小規模ニュースサイトの間で拡散し、さらにJoe the Plumber氏(民主党大統領候補者バラク・オバマ上院議員に遊説先のオハイオ州でオバマの課税計画に質問を投げかけたことで脚光を浴びた男性。)のような著名人の間でもシェアされるようになりました。この件の発端となったツイートは誤りで、不十分な情報に基づいていたのに、事実の裏付けが一切無い作り話ができてしまったのです。

似たようなケースですが、たった1人のTwitterユーザーが発信した2、3のツイートに端を発して、「CNNが放送事故によりポルノを30分間放送してしまった」というニュースが飛び交い嵐を呼びました。米Gizmodoの報告によれば、ことの信憑性はほぼゼロのようです。まさか、問題のポルノを見たのは、このたった1人のTwitterユーザーだけだったとは誰が思うでしょうか。CNNはボストン一帯の放送が中断された証拠は一切無いと主張しました。このニュースは根拠が極めて弱く、どう見ても作り話かとんでもない勘違いであったはずなのに、「International Business Times」、「Independent」、「Mashable」といった有名紙のサイトをはじめ多数のサイトに取り上げられました。その多くは記事のヘッドラインを「CNNは本当に30分間ポルノを放映したのか?」のように疑問形にしました。ヘッドラインに疑問符がついているときは、その答えはたいてい「NO」です。これも事実確認をせずに記事を掲載する姑息な手口です。

このタイプの作り話と闘うのはもっと骨が折れます。なぜならむしろ真実の方が解明しにくく、虚偽情報と同じぐらい盛大に拡散することは決して無いからです。そんなときは、「Snopes」,、「Politifact」、「FactCheck.org」のようなファクトチェックのサイトが便利です。抗議団体バス乗りつけニュースの場合は、Snopesが誤報であることを説明する記事を出しています。こうしたサイトの難点は、作り話が出回るのに追いつくだけの速度が必ずしも無いことです。件のバス話が虚偽であることをSnopesが投稿したのは11月11日でしたが、それは最初のツイートが発信された2日後であり、オンラインにバスの記事が出回った日の1日後でした。

更に留意すべきなのは、ファクトチェックのサイトも完璧なものは存在しないということです。明らかな作り話や虚偽情報を暴くには役立ちますが、網羅的に機能するようにはなっていません。疑わしい記事を見かけたら、ファクトチェックのサイトでチェックした方が良いですが、先入観にとらわれず多角的に分析しながら記事を読むようにしましょう。


「告発ありきの報道」に対しては裏付けとなる証拠を探す


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CBSの記事のこのバージョンは何の証拠も無いままに告発に同調しています(後になって、話の正確性を反映したバージョンに変更されました)。

オンラインニュースに(意図的であれ偶然であれ)登場する人たちの中でも、政治家や有名企業幹部は告発という泥でニュースの水を濁らせることがよくあります。多くのニュースサイトは「中立性」を保とうとするあまり、公人が出した声明だと、どう見ても嘘だとわかっていても、完全に嘘だと主張することに消極的です。ニューヨーク大学でジャーナリズムの教授をしているJay Rosen氏は、これを「告発ありきの報道」と呼んでいます。

告発ありきの報道が構成される仕組みは次の通りです。

AさんがBさんを告発します。
Bさんがその告発を否定します。
ニュースサイトは、その告発が行われ、さらにそれが否定されたことは報道しますが、告発を支持する情報も誤りであることを示す情報も提供しません。
告発自体が、その正確性が証明されないまま、ニュース性のあるものとして独り歩きします。

Rosen氏は、これは証拠ありきの報道に反するとしています。証拠ありきの報道には、告発の信憑性を証明する情報が必ず伴います。告発を裏付ける証拠が無いときは、ニュースは告発を否定すべきですし、告発が不当である証拠があるときはそれも報道されるべきです。告発自体より証拠の方が優先されるべきです。

ここで1つ例をあげましょう。次期大統領ドナルド・トランプ氏は、数百万票が不法に投票されたので、彼は票を失ったと主張しました。Rosen氏が指摘するように、告発ありきの報道だと、次期大統領の発言だという理由で、この告発を正当なものとして発表してしまうでしょう。もちろん、告発の不当性が証明されればそれまでですが。証拠ありきの報道では、話を真実として扱う前に証拠が必要です。この事例では、「ワシントンポスト」が、次期大統領が言及した規模で大量の不正投票が行われたという確たる証拠は見つかっていないと説明しています。投票の再集計がいくつかの州で行われていますが、再集計が終わりデータが発表されるまで、信頼できる証拠は無く、告発があるのみです。

少なくともほとんどのニュースサイトがこの情報を報道しましたし、多くの正統派の報道機関は次期大統領の主張をヘッドラインにして呼び物にしました。そのせいで、この告発が実際以上に信頼性があるような印象を与えました。これはトランプ氏の主張を大げさに表して読者をひきつける手法ですが、ニュースサイトを読むと最初から誤解を招くような演出がされています。

読者の事実確認を要するような話が氾濫すると、次のような問題が発生します。誰かが何か主張するたびに(あるいは読者がヘッドラインを読むたびに)、読者は話の真正性を確認するという手間を負うことになります。煽情的な話でクリック数を競うと、気軽な読者や多忙な読者が誤った情報を吹き込まれる可能性があります。さらに悪いことには、根拠の無い告発ありきの話は、検証すべき根拠を伴うまっとうな話よりはるかに読者を引き付けてしまいます。

残念ながら、この手の誤報はありがちなもので、大手のニュースサイトですら、この件では有罪です。告発ありきの報道の犠牲にならないためには、話がどのように構成されたか、どのような種類の証拠が提供されているかに注意しましょう。その話が、ただただ告発や関わった人たちの弁護ばかり繰り返しているなら、もっと正しいバージョンがどこかにあるはずです。ここでも、ファクトチェッカーと深く踏み込んだ報道が役立つことは言うまでもありません。

誤った情報がひどく拡散すると、この世に正しいジャーナリズムなど存在しないと言いたくなります。でも実際には、ちゃんと存在していて、単に埋没しているだけです。複雑で微妙な話題を細部まで深く掘り下げた長い話が登場するたびに、間違った主張が繰り返されたり、何百ものでっちあげ話が発生します。同時に、読者はソーシャルメディアやニュースを見るとき使うツールで、自分が一番好きな話を選んで読むことができます。結果として、作り話が過剰に入ってきて、何が本当かわからなくなってしまうことになります。私たちには虚偽のニュースを見分けるだけの賢さはあっても、1つ1つを検証する時間がありません。そのため、最後は作り話が隙間から滑り込んできて、精査されていない主張が与える印象だけが心に残ってしまいます。

残念ながら、この種の問題には唯一無二の解決策はありません。しかし、まず私たちが他人の注目を集められそうだからというだけで作り話をシェアすることをやめることが先決です。虚偽のニュースや誤解を招くような話は怒りにより増幅します。ニュースは正しい形で人の感情を高揚させますが、そのニュースが虚偽の場合は、感情が根拠の無い告発に強大なパワーを与え、読者は情報不足で極端になりがちです。いずれにしても私たちが読むニュースの質の向上にはつながりません。


Eric Ravenscraft(原文/訳:春野ユリ)
Illustration by Jim Cooke.