マカオ映画祭に参加した冨手麻妙

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 園子温監督がロマンポルノに挑んだ映画『アンチポルノ』が現地時間9日、開催中の第1回マカオ国際映画祭の幅広いジャンル映画を紹介するヒドゥン・ドラゴン部門で上映された。しかし中華人民共和国の特別行政区の一つであるマカオは性表現に対する規制が厳しく、同作品のスチール写真と詳細な内容は公式HPには非掲載。カタログには目次に映画タイトルこそあれど、他の情報は一切記載されていないという異例の対応となっている。

 同作は、映画史の一ジャンルを築いた日活ロマンポルノの生誕45周年を記念して製作された「日活ロマン・ポルノ・リブート・プロジェクト」の1本。小説家兼アーティスト・京子の、虚構と現実の間で揺れ動く日常を過激かつエロティックに描いたもので、日本ではR18+(18歳以上観賞可能)での公開となる。通常、一般興行では規制がかかるような作品でも、国際映画祭では制限がなかったり、映画祭側が独自の規定を設けて自主規制し、作品の芸術性を損なうことなく上映されることが多い。宗教の戒律の厳しい地域では問題箇所をカットするなど例外はある。

 今回は行政主導で開催しているとあって、政府の判断に則ったもの。そもそも当初は『アンチポルノ』の上映そのものに難色を示した人もいたようだが、日本を代表する映画監督の1人である園監督の新作で、“アジア初上映”という冠も付いていることもあって上映が決定。ただし、先のように作品情報は伏せられ、上映は夜中の23時30分からで、観賞条件も「色情」を理由に18歳未満観賞不可の制限が付いた。他にアルゼンチン映画『テラー5(英題)/ Terror 5』も「色情」を理由に同様の対応となっている。

 それでも会場には約50人ほどが集結し、上映後には拍手も湧き起こった。新作のヴァンパイア映画を撮影中の園監督に代わって、現地入りした主演女優の冨手麻妙は「女性の方が意外に多かったのが嬉しかった」と声を弾ませた。そんな冨手は映画初主演。京子を演じる事が決まり、周囲からはロマンポルノへの出演やヌードになることに対して反対する声や誹謗もあったという。冨手は「劇中で主人公が言っているような事を体感し、『表現の自由ってなんだ!?』と考えながら撮影に入った作品でした。私自身は覚悟を持って挑んだ事なので、女性が主体になって生きている姿を芝居で伝えていけたらいいなと思っていたので、女性の方にこそ観て欲しいと思っていたし、まして海外の方と一緒に観賞できたことが、ただ、ただ嬉しい」という。

 撮影自体は、若手女優に容赦ない愛のムチを振るうことで知られる園監督の洗礼を受けたそうで、「クランクイン前に2週間かけてリハーサルをきっちりやり、しかも毎回、舞台のように78分の物語を通して演じたので、全部、頭に入った状態でカメラの前に立ったんです。それがいざ本番となったら『リハーサル通りやるんじゃねぇよ!』と怒られて、ひぇ〜! と(苦笑)。毎日、アザだらけだし、体当たりってこういう事を言うんだなと実感しました」と振り返る。

 だが園監督も冨手の奮闘を認めているのだろう。今回、初の国際映画祭に1人で参加することになった冨手に対して「“初めての映画祭だから行かせてやりたい”と、親のように送り出して頂きました。マカオに着いてからも、めっちゃLINEでメッセージが入っていて『ちゃんと着いたか?』って(笑)」。その初めての国際映画祭で、主演作がカタログに記録されていないという映画祭の伝説として残るような経験をしたが、冨手は「それでも第1回の映画祭に参加する機会はめったにないし、光栄です。何年か後に、ビッグになってマカオに帰って来たい」と力強く宣言した。(取材・文:中山治美)

第1回マカオ国際映画祭は12月13日まで開催
映画『アンチポルノ』は2017年1月28日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開